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【台にアニバーサリー】祝・二周年 #毎週ショートショートnote

「そこの台にアニバーサリーって書いてあるプレート?看板が置いてあるだろう?」
バス停にいたふたり組の男性の肩幅の広い方が電話で何やら指示している。スラリとした泣き黒子のある方がこちらをチラリと見た。私がそれとなく話を聞いているのに気づいたのだろうか?
「使い回し言うな!それは50年続いた東雲座から受け継いだ大事な物だ」
知ってる。と思った。東雲座は何とかっていう俳優が立ち上げて毎年公演してたんだよな。テレビや映画にもかなり出ている俳優だったんだけど、数年前に亡くなって、遺言で劇団は解散したけど、劇団員だった俳優が名前を変えて再結成したはずだ。
「あ」
小さく声が出た。
電話をしているのがその俳優だ。
何でこんなところに?
そう思ってチラリとふたりを見ると泣き黒子の彼と目が合った。
「え?」
どうしてさっきは気付かなかったのだろう。彼は私の随一の推しだ。
バスが来た。
乗り込むしかない私に推しがそっと手を振った。
一生推すと心に決めた。