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【65 ゴミ】#100のシリーズ

遺品整理屋が案内したのは元廃校。
「不要と言われるモノを不要となった場所に収めておく。ちょうどいいでしょ?」
そう言ってニヤリと笑う。
体育館にはまだ未整理の物が、そして教室にはカテゴリ分けされた物たちが整然と並ぶ。
「旦那が探しているものがあるといいんですが」
誰も住むことのなくなった家を解体する前に、家の中にあったもの全てを回収する。もしくは、遺族からの依頼を受けて、不要なモノを回収する。
回収されたモノは遺品整理屋のモノとなる。
それらはまずは体育館にきれいに並べられる。
リサイクルショップが売れそうなものを持って行く。
名前の入らない服や家電。
古本屋がめぼしい本を持って行く。
残ったモノを見て遺品整理屋は鉄屑屋に連絡をする。
銅や錫などが使われている家電が引き取られて行く。
売り物・・・として価値がないモノが残る。それらを遺品整理屋はカテゴリ分けしていく。
そして、体育館の床を埋めていたゴミと呼ばれていたものの殆どが各教室に移動する。
教室にあるものは誰かにとって意味をなすもの・・・・・・・・・・・・・だった。
「その誰かという人は、なかなか現れないものなんですがね」
遺品整理屋はシニカルな笑いを浮かべる。

とある男の持ち物だったモノたちが体育館に並んでいる。
その男には、ある事件の容疑がかかっていた。だけど決定的な証拠を掴めないまま月日は流れ、男は病気で死んだ。
目の前のモノたちが、ひとり暮らしの男の持ち物として妥当な量なのかどうかわからない。
そして、ここにある何が、男の犯した罪の証拠になるのかもわからない。
「冷蔵庫の中身も解けた氷以外は全てきちんと元に戻してますぜ」
箪笥の中身もそのままだという。
押入れの中身も、そのまま並べてある。
「旦那が探しやすいように、そのまま・・・・並べておりますよ」
私たちは一斉にそれらを調べ始めた。
男の家にあったモノは生ゴミ以外は全てあるのだというそれらを、丹念に調べていく。
「あった…」
錆びたナイフが出てきた。
「捨てずに持っていたんだ」
遺品整理屋がチラリとこちらを見た。
「そりゃそうです」
遺品整理屋が口を開く。
「自分が持っているのが一番ですよ。捨てた途端に誰が拾うかわかりゃしませんからねぇ」
家宅捜査までも進めることができなかった自分たちへの皮肉だろうか。
「ゴミとして普通に捨ててしまっても良かっただろう?」
悔し紛れに言うと、遺品整理屋はフッと笑った。
「ちなみにそれは床下にありました」
家宅捜査をしても見つけることができたかどうか怪しい。
部下に名前を呼ばれる。
部下は古いノートを持っていた。
日記帳だった。
そしてそこには事件の詳細が書かれてあった。
遺品整理屋はやれやれという顔をした。
「こりゃあ当分ショップの連中に連絡できませんね」
そう言うと遺品整理屋は体育館の別のエリアに広げているモノたちの方へ歩いて行った。