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「今朝さぁ、割った卵が双子だったの」 「ここんところ毎朝家の前を救急車が通るのよ」 「家の…
「榊原祐希」名義の社員証を外す。今回の仕事はこれにて終了。懸念されていた社内分裂という噂…
マンションのお隣さん、桜庭さんはベランダにいくつかの鉢植えを置いている。名前はよくわから…
道に天使が落ちていた。 初めは人形かと思った。 微妙にバランスが悪い。頭は小さく手足が長い…
初めて日記を書いたのは、書こうとしてではなく小学1年の時に宿題として書かされた。 ある程…
その夜は皆既月蝕だった。 「たとえ部分日食でも、日蝕の方が月蝕より盛り上がらない?」 「そ…
寝坊した。 年単位で寝坊したことはなかった。 5分10分の寝坊すらしたことなかった。 いつも予備でセットしている目覚ましよりも先に目を覚まして朝の支度をしては、途中でなった目覚ましを止める。それが今朝は目覚ましの鳴る時刻より30分以上遅く目が覚めた。 顔を洗い歯を磨き、着替えを済ませて自転車に乗る。 いつもは駅まで歩くのだが、帰りにどこかに寄る予定がある時などは自転車で駅まで行くが、こんなに焦って自転車を走らせることはない。普段は街の様子を見ながらのんびりと行くが、今日はそん
比喩でもなんでもない。それは奇妙な果実だった。 果実と言われなければ果実とは思わないそれ…
「不在証明なのにアリバイとはこれ如何に!」 「どういうこと?」 「『いない』のに『在り』だ…
高秋くんは高秋孝明という。高秋孝明と書いてタカアキコウメイと読む。 「親父がつけた。なか…
マンションの4階。日当たりも良いが風当たりも良い。 冬の間だけ室内に置いている鉢植え。 室…
日曜日の午前中、お父さんがテレビでゴルフを見ていた。 ぼくもとなりで見ていたけど、ちっと…
栗原は大学で知り合った。 大学で知り合った人はたくさんいたけど、会話を交わした数少ない相…
ぎゅうっと丸くなって恋人は眠る。 さっきまで抱き合っていた恋人は気を失うように脱力して、そして背骨の浮かぶ背中を丸め眠りにつく。 俺の恋人は俺と同じ男だ。 同い年でもうこの関係になって10年近く経つ。そして一緒に暮らすようになって5年近く経つ。 恋人は知り合った頃は通信過程の大学生で、デイトレで生活費を稼いでいた。 自分も大学生だった。コンビニでバイトをしていた。 その後、彼はデイトレーダーとして生活費にあまるお金を指一本で回し、自分は市役所に勤める。 一緒に暮らすきっかけ