感想:惰性67パーセント(9):モラトリアムは終わらない

本作は、社会に出る前の何者でもない若者の怠惰で幸福な青春を描いた作品でありました。
このようなモラトリアムをテーマにした作品は近代以降、多く作られてきました。
例えば、このタイプの作品で有名なのは、うる星やつらの映画、終わらない文化祭を無限ループするビューティフルドリーマーがあります。

本作がそれらの作品と大きく異なる点は、有名な18禁作家である氏の画力を活かしながら、あけすけな下ネタを取り入れたところだと思います。
可愛い女子と愉快な友人に囲まれて猥談で盛り上がるモラトリアムは、ある意味で理想的な青春でありましょう。

ですが、登場人物が恋愛関係になればモラトリアムではなくなってしまいます。
男女が入り乱れて、エロい話を交わしながらも、友情より先に進まない関係を本作は最後まで維持しました。
そのため最後まで何のドラマもないので、それが気に入らない人がいるのも分かります。

最終回も、最終回らしい締め方をせずに、次回に普通に続くような終わり方でした。
ですが、それこそが本作のテーマである、「終わりのないモラトリアムが続けばいい」を体現しているのだと思いました。

現実にはモラトリアムの時期はあっという間に終わってしまい、私達は社会の荒波に飲まれていきます。
モラトリアムが永遠に続くこの作品は、終わったモラトリアムを懐かしむ人の癒しになる作品であったと思います

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