感想:湯神くんには友達がいない(1):独立独歩の自立した個人でありKYでもある湯神くんの言動にドン引きかつ爽快感を覚える不思議な作品

本作の主人公の湯神くんは、野球部のエースで成績優秀な高校生ですが、クラスでは浮いています。
合理主義的な性格を持ち、正論で相手を論破して、自分が正しいと思った行動を貫く姿勢が、周囲から敬遠されているからです。
「合理的に正しい行動をするのは素晴らしいじゃないか」と思われるかもしれませんが、本作での湯神くんのあまりにも空気を読まない言動を見れば、敬遠されるのが何となく分かるかと思います

湯神くんは他人の承認を必要としないほど自己が確立しているため、友人付き合いは無駄だと本心で思っています。

そんな折に、彼の高校に女学生のちひろちゃんが転校してきて、湯神くんと知り合います。
気が弱く、友達を作るのが苦手で、トラブルに巻き込まれやすいちひろちゃんは、湯神くんに振り回されたり、助けられたりしている内に「友人」になります。
湯神くんにはちひろちゃんと友人になった自覚は全くがありませんが、事実上は友人関係に他なりません

湯神くんの言動は友人ができたからといって何も変わりませんが、読者にも分かりづらいほどに微妙な影響を受けていく様子が面白いです。
一方のちひろちゃんは、湯神くんに振り回されて生活環境が変わりまくり、その右往左往する様子が面白いです

湯神くんのKYな言動には引きつつも、その言動は正しいと頷ける点も多く、空気を読まないと悪者にされる窮屈な人間関係を破壊してくれる爽快感もあります。
私は本作を読み進める内に、湯神くんのことが「友人」のように好きになりました

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