感想:かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ (28):まともな最終回を見れた本作のファンは幸福です

本作は、相思相愛なのに自分から告白できない男女による無益な駆け引きが楽しいギャグマンガとして始まり、次第に登場人物が増えて群像劇になり、終盤になると日本の政財界を支配する財閥と対立するという壮大なものになりました。
つまり、一発芸的なギャグマンガから複数の人物の思惑が複雑に絡み合う重厚なストーリーマンガへ変わっていきました。
本作の方向性の変化は、作者の作劇の才能の開花の軌跡をなぞっていると感じました。

作者さんは本作でマンガ家を引退し、今後は原作者として活動すると宣言されており、この路線の良作を次々に作ってくれると期待できます

ただ、本作は広げ過ぎたふろしきを全て畳み切れていないとも感じました。
他の人にも指摘されていましたが、伏線に未回収のものが幾つかあり、関係性に決着がついていない登場人物が何人もいます。

ですが、本作の主軸である会長と副会長の恋愛物語は見事に大団円を迎えたので満足です。
それに主要人物については、まぁまぁ納得できる良い結末になっていたと思います
作者さんは、本作を何らかの形で更に展開すると言っており、描かれなかった部分がそこで明らかになるのを期待しています

それにしても、これだけ壮大な作品の最終回を作るのはとても難しいことなのに、無難な着地点に到達できているのは凄いことです。
幾つかの有名作品が、唐突な打ち切りのような最終回を迎えてファンの阿鼻叫喚の地獄絵図になったのと比べれば、本作のファンは良い最終回を見れて実に幸福なことであります

この記事が参加している募集

マンガ感想文