感想:カオス レギオン02 魔天行進篇:埋もれた傑作。難民問題をファンタジーに仮託して物語化した作品

本書は、カオスレギオンという大昔のゲームの外伝的ノベライズ作品です。
ゲームがそれほど有名ではないことから、本作はゲームと共に埋もれてしまっていますが、この外伝シリーズはゲームから独立して壮大な世界観を築いており、ゲームを知らなくても問題なく楽しめます。

本作は核爆弾のごとき兵器により壊滅した領地の住民を新天地に移住させる話です。

人の魂を兵士にして無数に召喚できる「たった一人の軍団(レギオン)」ことジークと、イメージを具現化できる少女ノヴィアは、聖法庁の命令で難民の護衛を任されます

この作品は敵味方入り乱れる群像劇です。
ジークに恨みを持ち、世界を動揺させる為に問題を悪化させた側が様々な妨害を仕掛け、ジークと若い領主2代目と難民たちは協力してそれに抵抗する。
その攻防の過程で、様々な人物の物語が描かれています。
領主の苦悩。若い領主と女騎士の恋。飲んだくれ司祭の奮闘。
難民への迫害。女騎士達の追放。次々に襲い来る野盗や討伐軍。異民族との交渉。
これらの出来事が、最後には1つに集約し、敵の猛攻につながります。

敵の軍勢が背後に迫り、異民族の軍勢が突如として表れ、仲間の騎士達はおらず、橋は崩され逃げ道はない。
最大の窮地に陥った時、実は今まで不利に働くと思っていた全ての出来事の真実が明らかになる場面は素晴らしいの一言に尽きます

本作は現実の難民問題をファンタジーに仮託することで、誰にでも受け入れやすいように訴えた作品でもあります。
娯楽性があり、社会に訴えるテーマもある。
このような傑作が埋もれているのは実に惜しいことであります