感想:河畔の街のセリーヌ (1):19世紀パリ風俗描写が面白い作品。ただ、1日の職場体験という設定は無茶では?

本作は田舎からパリに出てきた少女セリーヌが、ある有名作家の依頼で様々な職業を1日だけ体験して、その様子を報告して19世紀パリの風俗記録を作成するという話です。

冒頭で印象派の絵画の感想を言い合う紳士たちの会話があり、今では数十億円で売買される名画が1部のマニアだけが評価する売れない絵だった時代の空気感が感じられて良かったです

本作はセリーヌの様々な職場体験を通して、読者に当時のパリの文化風俗を分かりやすく伝えてくれます。

セリーヌは無愛想で動じない性格なので他人と簡単に仲良くはなれませんが、観察眼があり、芯を食った発言をするので、職場で知り合った一部の人からは大きな信頼を得て 交友関係を深めていきます

セリーヌの成長物語としても、19世紀パリ風俗を知る資料としても面白い作品です

蛇足になりますが、最後にどうでもいい野暮なことを言いますと、セリーヌの職場体験が1日だけで、毎日職場を変えるのは無茶な設定だと思いました。
1日ごとに仕事を探して紹介するのが大変ですし、1日で辞める従業員を受け入れる方も迷惑でしかありませんし、何よりもたった1日ではその仕事の内実をほとんど知ることはできないでしょう

本作では「神の見えざる手」のおかげで1日で都合よく事件が起きてくれていますが、それがご都合主義に見えてしまうこともあります。
1週間や1ヶ月の職場体験という設定にして、わざわざ1日という無茶な設定にしなくてもよかったのではと思いました

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