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【美味クレソン】9話 はじめに行動ありき
どうも、お久しぶり、私の名前は不幸田幸子(ふこうださちこ)
不幸でもない幸福でもない。アメリカの友人からは
50/50 フィフティ・フィフティの女と呼ばれています。
水口新聞社に入社して1年目の新人なのに、
『究極のクレソンメニュー』の担当に抜擢されたの。
そして、もう1人の担当者がミズグチスイデンたつじさん。
いつも寝てばかりで何を考えているのやら、んもう先が思いやられるわ。
たつじ「はぁ、毎日毎日つまんねーな」
幸子「どうしたの?」
たつじ「どうもこうも、クレソンに対しての愛情が薄れてきてるんだよね。なんつーか、やる気がなくなってきているというか…」
幸子「やる気があったりなかったり自分の感情に流されて疲れているのかしら。たまにはリフレッシュでもしたら?」
たつじ「はあ…」
幸子「だめか、もしかして燃え尽き症候群かも」
海遊「はっはっは、何が燃え尽き症候群じゃ!」
たつじ・幸子「その声は、山原海遊!」
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山原海遊とは?
自称、大芸術家。食もまた芸術と考える稀代の美食家であり、それが嵩じて会員制料亭「美食クレソン倶楽部」を主宰している。ミズグチスイデンたつじとの関係はいかに?
海遊「お前なんぞ燃え尽きて灰になってしまえばいい」
たつじ「くっ!」
幸子「ひどいわ」
海遊「信念を貫き通すことができないお前に究極のクレソンメニューを作る資格なんてない‼︎今のお前は歌を忘れたカナリヤだ!」
たつじ「歌を忘れたカナリヤ?」
海遊「そもそも歌を歌うことで己の存在感を出していたカナリヤが歌を歌えなくなった途端、何の取り柄のない鳥になってしまう例えじゃ。ふふっ、お前はもともと、ただのボンクラ青年だけどな」
幸子「例えが古いわ…」
海遊「もうひとついいことを教えてあげよう。たつじよ、今のお前は牛を忘れた牛小屋だ!」
たつじ「牛を忘れた牛小屋?」
海遊「さよう、鳥小屋、豚小屋とて同じ。牛が小屋の中にいることで牛小屋としての役目が成り立つであろう。しかし、肝心な牛がいない、その牛を忘れてしまっては牛小屋の使命なぞあろうもしない。」
幸子「さっきの例え話の方がまだわかりやすいわ!」
海遊「まあいい、行動が止まることは停滞していると同じ。わしが好きな織田信長公は攻めて攻めて攻め抜く人生だった。桶狭間の戦いでは今川軍に対して兵力が少数にも関わらず、見事に勝利をしよった。その勝利の要因は信長公の作戦もさることながら、必ず勝つという気持ちの部分が大きかったといえる。はっはっはっ、とことん悩むがよい」
公園にて
たつじ「はあ…」
幸子「あらら、これは重症だわ。何をそんなに思い詰めているの?公園にはいろんな木々があって自然がいっぱいありますよ」
たつじ「自然なんてどうでもいいよ。ただ、究極のクレソンメニューの素材を探すことに疲れているのかもしれない」
幸子「究極のクレソンメニュー…」
『ホーホケキョ、ホーホケキョ』
木に停まっていたホトトギスが鳴き出す。
幸子「めずらしいわね、この時期にホトトギスなんて」
たつじ「ホトトギス…そうか!いいことを思いついたぞ!」
走ってどこかへ行くたつじ
幸子「いきなり走って何なの急にもう〜」
30分後、公園に戻ってくるたつじ
たつじ「はぁはぁはぁ、コンビニに行って、ある素材を探してきた」
幸子「コンビニ?」
たつじ「これさ!挟むなら挟んでしまえホトトギス」
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幸子「ローソンのLチキのパン?」
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71541494/picture_pc_8bc97ad0f2be7713cd66ed268afd814c.jpeg?width=1200)
幸子「そして、Lチキ」
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71541567/picture_pc_12db20efb7781880546bae2f37d6fa77.jpeg?width=1200)
たつじ「最後に水口水田のベビークレソン!こいつがなきゃ何も始まらない」
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71541691/picture_pc_0277efb1ddc10e72bb86fa46e2f3ca05.jpeg?width=1200)
たつじ「ベビークレソンを挟んで」
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71542052/picture_pc_bdf3835e2ab9a1aada6bf0970ad48a6a.jpeg?width=1200)
たつじ「パクッとひと口食べてみよう!美味しい…ベビークレソンの素材ひとつでパンとチキンの存在そのものが活かされ、パンの生地と油っこいチキンの間にみずみずしいクレソンが介入することによって全体的に調和が生まれてくる…そうか、オレはクレソン以外にも素材にこだわり過ぎていた為に頭でっかちになっていたんだ」
幸子「そうね、素材は誰の前にもちゃんとあるわ。だけどアイディアは使おうとする人間にしか思い浮かんでこない…」
海遊「そうじゃ!『初めに言葉ありき』ではなく『初めに行いありき』が大事なんじゃ。行いとは行動とも言える。たつじよ足を使え!一歩踏み出すことによって知恵というものが出てくる。高級食材を探しに遠出をしろといっているのではない。まずは己の足元をしっかりと見定め、知識と行動が重なって知恵というものが出てくるのじゃ」
たつじ「足元を見る…」
幸子「自分で解決できる問題は常に目の前にあるという意味かも…」
たつじ「あっ!」
足元を見るたつじ
幸子「どうしたの?」
たつじ「なーんだ、100円玉が落ちているかと思ったら空き缶の蓋か」
幸子「ズコー!」
【美味クレソン】続くかも…
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