蟹交戦
ぼくは、蟹がこわい。あの硬くて丈夫なハサミで挟んできそうだからだ。なぜ、挟まれるのが怖いかだって?今までことあるごとに挟まれ続けてきたからです。
その① ノコギリクワガタに人差し指を挟まれた。
小学校1年の夏、虫かごに入れてあったノコギリクワガタを、後ろから人差し指と親指で捕まえようとした。
ノコギリクワガタは、クルリと体を回転させ、ゆっくりとぼくの人差し指をハサミで挟んだ。
痛ー!!
痛たたたたた!たー!! えい!
と、陰陽師のお払いみたいに、ノコギリクワガタを振り切ったら、壁にぶつかって足をもたげながらピクピクしていた。
そして、白い液体みたいのが出ていたことを今でも覚えている。
その② スーパーの自動ドアに挟まれた。
20歳頃かな、買い物カゴを取って、スーパーに入ろうとした瞬間
ガシャ!!
と自動ドアに体ごと挟まれた。
買い物カゴは2メートル先まで転げ落ちた。いったい何が起きているのだろうか?予測不可能な角度からの攻撃に、3秒間その場に突っ立ったままだった。
買い物途中のおばちゃんが、ジーッとこっちを見ている。
でも、そんなの関係ねぇ。こっちは、びっくりして身動きを取ろうにも取れないのである。
ボクシングに例えるならば、見えない角度からのカウンターパンチとでもいいましょうか。井上尚弥でもあの角度は、よけきれない。
ある考えが脳裏をよぎった。
蟹は小魚などを食べるときに、いったんハサミで挟んで気絶させておいて、動かなくなった状態でパクっと食べるのであろう。
実際、自動ドアに挟まれたぼくは、ドラゴンクエストの『アストロン』の呪文にかかったようにまったく動けなかった。
小魚、小エビ、イトミミズ、アカムシ.....
今なら蟹に挟まれたモノ達の気持ちが痛いほど分かる。
その③ 友達が電車のドアに挟まれてシュークリームを落とし、拾おうとしてドアに頭を挟まれた。
20代中ごろかな。大阪環状線の駅の中にある売店で、かわいい女の子がシュークリームを売っていた。
ウブなぼくと友達は、女の子と会話がしたいが為にシュークリームを注文。しかし、次の電車が来るアナウンスが流れてきた。
「ヤバい!早くしないと」
電車が止まったタイミングで、まず先にぼくが乗り込み
「早く!早く!」
と友達を手招きした。
友達はドアが閉まるタイミングで無理やり入ってきた。
突然
プシュー
とドアが閉まりだして
ドアに挟って両手に持っていたシュークリームを床に落としてしまった。
友達はぐちゃぐちゃになったシュークリームを、四つん這いになって拾おうとした瞬間、ドアに頭を挟まれた。
ドアはもう一度開き、ゆっくりと閉まって何事もなかったように電車は走り出した。
すると、車内からはクスクスと笑い声が聞こえてくるではないか!
何がおかしいんだ!田舎者をバカにして楽しいのか?見せもんじゃねーぞ!
まるで被害者のように身を縮ませた2人は、お互いの表情を確認しあった。
「あはは」
ぼくは、つい笑ってしまった。友達は板前修行中だったので、丸坊主の五厘頭だったのである。
でもよかったよ。友達が長髪だったら、シュークリームを持った状態で髪の毛はドアに挟まれたたまま電車は走り出したに違いない。九死に一生を得るとはまさにこのことだろう。
挟まれ続ける人生はもう、たくさん!
「かわいそう。前世は蟹を食べすぎたんですね」
みんなの心ない声が聞こえてくる。
女性の板挟みは、うれしいけど、クワガタや自動ドアに挟まれるのは、もうこりごりです。
【終わり】
(1416文字)
お疲れ様でしたー♪
真顔で文字を書いて笑わせるなんて、かなり高度な技だ。
普段使われていない脳の一部を動かしている為か、脳みそがZUKI!ZUKI!する。
そして、参加されている方々の奇抜な発想の数々。実に面白い。
記事を読むと、ぼくのGIZA GIZAハートは常にDOKI!DOKI!していた。
やっぱり真顔でふざけるのって難しい。
貴重な体験をさせていただきまして、ありがとうございました🤗
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