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「会社が育つ」は、どういう意味か

「会社の成長」という言い方がある。

「会社が成長する」というのは、どういうことを意味しているのだろう。
「会社を成長させるためには...」というノウハウ(という名のHow論に関する個人的な主張)は世に溢れているけれど、そもそも「会社が成長する」というのは、どういうことなんだろう。


「人間の成長」と言う時、「成長」という言葉が持っている意味は、「会社の成長」の「成長」と同じだろうか。なんだか違っていると思う。
というか、"世の中の(無意識な)常識"として、違う意味が当てられている、という言うべきか。


「会社の成長」はGrowthという英単語に置き換えることができるだろう。
では、「人間の成長」の方は?Growth, Development, Maturation...?
「1歳の成長」「20歳の成長」「60歳の成長」というのは、それぞれ違う意味だとも思う。


「会社の成長」ということの意味を考えるために、「人間の成長」ということを映し鏡にしながら、考えてみることはできないだろうか。
そんなことを思いながら、ネットの海を泳いでいると、福田恵美子先生が人間発達学を紹介する文章に出会った。

立ち読み
http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse2822.pdf

この文章で「人間/人」を「会社」に置き換えてみると、いろいろと考えが前進した。
例えば、冒頭の一文。

人間は,生物として地球上に存在し,社会の中で生活し,心理・社会的に
個々人の任務を遂行し,一生涯を全うしていく生物である.

置き換えてみると、
「会社は、地球上に存在し、社会の中で生活し、心理的・社会的に個々の任務を遂行し、一生涯を全うしていく」
となるわけだけれど、
「会社(法人)」という存在が、1つの人格を持った有機的な存在であるという前提に立つのであれば、この試みが悪くないものである感触を得られると思う。


人間が「育つ」ということに関して、

人間が単純な状態から複雑になっていく過程

と表現し、

「成長」「発達」「成熟」「発育」「成育」など,種々の言葉で表現されている

という指摘をしている。

そのうえで、それぞれに英単語を対応させ、

成長 growth
発達 development
成熟 maturation
発育 growth and development
成育 development
「成長とは,体が育つこと」,「発達とは,精神を中心として,構造や機能が育っていくこと」

というふうに整理をしている。

「人間/人」を「会社」に置き換えるという試みに戻ってみると、

「会社の成長」をGrowthという"事業規模や企業価値などの量的な拡大"と捉える観点を相対化できそうである。

そして相対化したことで浮かび上がってくるコンセプトは、ここでの整理を引き継ぐならば、「会社の発達」ということについて、である。
「会社の、精神を中心として、構造や機能が育っていくこと」について、である。

「育つ」ということを「成長」と「発達」の両側面によって捉えるべきであることに改めて気付かされる。


また福田先生は、発達のプロセスについて、

発達とは,「分化(specialization)と統合(integration)が繰り返されて
進展し,相互作用をもって,特定の方向に向かう変化である」といえる. 年齢が進むにつれて,人間になる諸要素が明確(分化)になり,それらが相互に関連しあって統合され,単純な状態から複雑な状態へと経過していく過程である.

と表現していることも興味深い。

「人間/人」を「会社」に置き換えてみると、
会社のなかで機能分化や分業が進みつつ、一方で、それらが相互関連しあって統合され、結果として、単純な状態から複雑な状態へと経過していく、という景色がイメージできる。



もし、「法人発達学」なる学問があれば、そこでは、どのようなことが議論されるのだろう。


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