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バイデン政権がカショギ殺害事件のインテリジェンス・リポートを公表する狙いは何か

バイデン政権が2018年のジャマル・カショギ殺害事件に関するインテリジェンス・リポートの公表を決定したことの狙いは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王子を打倒することにある。テロを支持するカタール政府の工作員であるカショギは、親米で親イスラエルのサルマン王子に反対していた。オバマ政権にとって、カショギは政治的な闘争の重要な戦力だった。オバマ政権の8年間の一貫した政策は、ジハーディストたちに味方することだった。オバマ政権の3期目であるバイデン政権は、サルマン王子に人殺しの汚名を着せることによって、イスラエルがサウジアラビアとの平和を達成することを政治的に実現困難にしようとしているのである。以下に、キャロライン・グリックの緊急の論説に基づいて、カショギ殺害事件に関するインテリジェンス・リポートの公表が何を意味するかを、明らかにしたいと思う。

バイデン政権が、2018年のジャマル・カショギ殺害事件に関するインテリジェンス・リポートを公表する決定を下したことに対して、イスラエルのキャロライン・グリックは「カショギ受難劇」という洒落たタイトルの論説を素早く公開することで応答した。この論説の中でグリックは、その決定が米国の安全保障に対しても、中東の安全保障と安定に対しても、破壊的であることが予測可能であったのと同様に、その決定も予測可能であったと述べた。

それが予測可能であった理由は、バイデン政権がオバマ政権の3期目であるということだとグリックは主張する。オバマ政権の1期目に、オバマはエジプトのホスニ・ムバラク大統領を倒すために中心的な役割を演じた。スンニ派アラブ世界における米国の同盟システムの支えであるムバラク大統領を倒したことは、スンニ派テロ集団のイデオロギー的な支えであるムスリム同胞団に利益をもたらした。

オバマ政権の8年間の一貫した政策は、ジハーディストたちに味方することだった。オバマの反植民地主義の世界観は、反西洋感情を養育した。オバマと彼の新マルクス主義の助言者たちは、ジハーディストたちをイスラム世界の「真正な」声と見なした。オバマと彼の助言者たちがジハーディストたちを支持した理由は、ジハーディストたちが「革命的」であり、反西洋であったからである。保守的なスンニ派の指導者たちやイスラエルが、ハマスやヒズボラ、ムスリム同胞団やフーシ、イランなどのジハーディストたちとの戦いに巻き込まれる度に、オバマ政権はジハーディストたちを支援したのである。このような理由から、オバマ政権は、トルコの独裁者エルドアンやカタールの支配者たちを称賛したのだ。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王子と、UAEのムハンマド・ビン・ザーイド王子は、オバマやロバート・マレーにとって大きな問題だった。若くて精力的なふたりの王子たちは、自国の保守的な社会を自由にすることを追い求めている。この王子たちは、イランに対しても、ムスリム同胞団に対しても、強く反対している。この王子たちは、イスラエルとの平和と協力を受け入れている。この王子たちは、ハマスやヒズボラ に対する反対運動を促進することによって、イスラエルを支持している。UAEは、ムスリム同胞団をテロ組織と宣言し、さらにオバマを支持するアメリカ・イスラム評議会をもテロ組織と宣言した時、オバマとオバマの同志たちは激怒した。

そこでカショギ殺害事件が問題になる。2018年10月2日に、カショギはトルコのサウジアラビア領事館に入った後、生きて出てくることはなかった。カショギはカタールの工作員だった。カショギは、サウジアラビアのインテリジェンス機関の元職員だったが、アルカイダを支持するサウジの王族の中のジハーディストたちに味方していた。カショギはオサマ・ビン・ラディンの友人だった。カショギはビン・ラディンの死を悼んだ。カショギがワシントン・ポストに書いていた論説は、アルカイダ、ISIS、イラン、ハマス、カタール政府のプロパガンダだったのだ。

テロを支持するカタール政府の工作員であるカショギは、親米で親イスラエルのムハンマド・ビン・サルマン王子に反対していた。オバマの一派にとって、カショギは政治的な闘争の重要な戦力だったのだ。カショギの仕事は、サルマン王子の信用を失わせると同時に、カタール政府によるテロ支援を正当化することだった。オバマの一派は、サルマン王子をヒトラーのような人物に仕立て上げるために、カショギをネルソン・マンデラのようなタイプの人物として扱うことを設定した。

ドナルド・トランプは、オバマの一派の圧力に屈することを拒絶した。このことは、政治家としてのトランプの良識と勇気を証明している。2018年の時点で、2020年の選挙で民主党員がトランプに勝利したら、次期民主党政権がサルマン王子を権力の座から追放するためにカショギ事件を復活させるだろう、ということは十分に予測可能だったのだ。

オバマとバイデンの一派にとって、アブラハム合意は最悪の出来事だった。そのようなわけで、バイデン政権が最初に実行した政策は、UAEとサウジアラビアへの武器の販売を凍結することによって、米国側が一方的に取引の席から離れることだったのだ。

「ムハンマド・ビン・サルマン王子がこの一撃に対して生き延びることができるかどうか、私にはわからない。最終的にUAEとサウジアラビアの指導者たちが、自分たちの主権とイスラエルとの国益の共有を擁護するよりも、米国によって支持されたイランとの関係を再編成する方がましだと決定することを恐れることは、道理にかなっている。そしてもし彼らがそうすれば、大惨事が起きることになる。戦争の危険は急速に高まることになる。スンニ派とシーア派の多様なジハーディストたちは、未だかつてなかったほどに、力づけられることになる。こうしてイスラエルは、極めて恐ろしい立場に置かれることになる」とキャロライン・グリックは述べた。

グリックによると、バイデン政権はムハンマド・ビン・サルマン王子に人殺しの汚名を着せることによって、イスラエルがサウジアラビアとの平和を達成することを政治的に実現困難にしようとしているのである。バイデン政権がサルマン王子に対する衝撃的な攻撃を開始する数時間前に、i24ニュースというイスラエルのテレビ局は、イスラエル、サウジアラビア、UAE、バーレーンがNATOのような軍事同盟を創設していると伝えていた。この報道とバイデン政権の攻撃開始が関係していたとしても、驚くには値しない。サルマン王子を犯罪者に仕立て上げた今、バイデン政権は、イスラエルとサウジアラビアの絆の形成へと向かういかなる動向でさえも、イスラエルが不道徳であることの「証明」として利用することができるのだ。

キャロライン・グリックは、サルマン王子がレバノンの指導者バシール・ジェマイエルの新しいバージョンであると指摘する。レバノン人キリスト教徒の指導者であったバシール・ジェマイエルは、キリスト教徒の軍隊を統合し、パレスチナ解放機構のテロ組織やシリア軍をレバノンから追い出し、1982年にイスラエルとの平和条約に署名したが、その結果として暗殺された。プログレッシブ左翼やムスリム同胞団は、イスラエルに接近するサルマン王子のいかなる動向をも攻撃することになる。サルマン王子に敵対する動向は、イスラエルとアラブの紛争を終わらせるための前進を阻止するための動向なのである。


資料 https://carolineglick.com/the-khashoggi-passion-play/

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