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ベーシックインカムについて

 お金が無くては、私たちは住む場所・食べるもの・飲み水が確保できなくなる、つまり生きていけなくなることを意味し、お金は私たちの生活を保証するものです。
 ベーシックインカムとは、政府が無条件に国民に現金を支給することで、現金を配ることで格差・貧困を是正して、国民の生活を保証することになります。
 信用創造(いま主流のお金の創り方)では、お金を創る人たちが配分先を一方的に決め、必ずしも必要としている人にお金が行きわたらないという欠点がありますが、ベーシックインカムでこれを解消することができます。つまり、経済的に結果の平等を実現することと同じ意味になります。
 一方、人が生きていくうえで必要な資源を社会に提供するには、いまのところ誰かが労働を提供する必要があります。

【貧困・格差対策以外のメリット】

 格差の拡大、貧困化に対して、ベーシックインカムは有効な対応ですが、他にも様々な副次的効果が期待できます。

―社会保障制度の不備の是正

 現在、社会的弱者を救済するためとして、労災保険・失業保険・健康保険・生活保護・年金などが制度としてありますが、これもまた人間が作ったもので完全ではありません。
 現在の社会福祉制度は、支援が必要な人を行政が選択しますが、その過程でコストが発生します。申請窓口の担当者、申請を審査する人が必要となるということです。
 当然、行政の選択から漏れる人が発生し、必ずしも必要な人全てに支援が行き届いているとは言えず、予算の制約もあるので、貧富の差の拡大、少子化という問題には、総合的には対応できません。
 個人・法人にはこれらの問題を解決する能力も責任もありませんが、国家権力がベーシックインカムという形で解決することは可能です。

―行政の効率化とリソースの再配分

 政府通貨を発行したとしても、政府の歳出を安易に増やすことに関しては、その影響を慎重に考慮するべきで、ベーシックインカムが導入されることになれば、福祉行政全体の制度設計の見直しをせざるを得なくなります。
 その結果、申請窓口の担当者、申請を審査する人の多くが余剰となり、この余った人的リソースを他の行政分野へ再配分することができます。
 このようにベーシックインカムにより、行政全体の効率化が促されることになります。

 ちなみに、政府部門全体でこの余剰人員を吸収できない場合は、解雇の対象となり、公務員という身分特権が解体され、民主的かつ効率的な行政運営導入のきっかけになります。
 この場合でも、退職金を支給し、ベーシックインカムで所得が保証されていれば、大きな問題にはなりません。 
 さらに、人事院の資料によると、平成28年度予算の国家公務員と地方公務員の合計288万1千人おり、一般政府(中央と地方)とそれ以外の公的部門(特殊法人・独立行政法人、等)の人件費は少なくともベーシックインカム支給に見合った額は一律削減可能になります。

 ベーシックインカム以外にも、国防・外交・食料・エネルギー・為替・治安維持・防災・国民医療・障害者支援・教育・インフラ整備など、政府が継続してやらなければいけないことは多岐にわたります。
 行政の効率化と税金の再配分を前提にしたベーシックインカム導入により、財政含めて行政の効率化が促されることが期待できます。行政に関する情報公開が適切に実施され、国民が権力者を監視・牽制できれば、という前提条件が付きますが

―財政

 日本の場合、政府債務を増やしてベーシックインカムを支給するということは、将来の世代に負担を押し付けることになるので、富裕層への課税を強化して債務を解消することがベーシックインカム導入の条件となります。
 また、安易に政府通貨を発行し、政府支出を増やすと物価上昇の懸念、民間による経済的付加価値の創造が阻害される懸念もあります。
 不要不急の政府の歳出は徹底的に削減したうえで、ベーシックインカム含む国家経営にとって主要な財源は、富の再配分・利益調整の機能を強化して、可能な限り税収で賄い、経済的な不平等・格差を是正していく、これが望ましいと思います。 

―税制

 ベーシックインカム導入とともに、政府通貨が発行されれば、政府の債務問題が徐々に解決され、貧富の差を広げることを助長する現行の消費税の減税・廃止が可能になり、富の再配分・社会的な利害調整という税金本来の役割を取り戻すことが可能になります。
 個人所得税に関して言えば、ベーシックインカムは国民全員に均等に支払われるため、支給額を課税所得に含めないかわりに基礎控除、扶養者控除を廃止し、税額計算自体を簡素化することができます。
 さらに、今まで雇用主責任であった被雇用者の税金計算・納税業務をなくし、被雇用者自ら申告納税するよう制度変更すれば、雇用者負担を減らすことも可能になります。
 さらに、無条件に全国民に収入が保証されるので、株式の譲渡所得などに分離課税で累進税率より低い税率を適用する根拠も薄れ、総合課税へ移行する、もしくは分離課税で税率を高くすることも可能になってきます。結果として、税収が増えることが期待できます。
 以上により、税金計算・納税の効率化とともに、国民が納税者としての意識を高めることになるでしょう。
 また、現行の経済体制(資本主義)の容認できるところ(交換・貯蓄の利便性、技術進歩の促進、など)を残しつつ、負の面である富の集中・格差を緩和し、社会の持続性を維持するために、消費税は減税か廃止、法人税、富裕層に対する個人所得税・相続税の課税を強化することが必要になるでしょう。
 
―景気に与える影響

 ベーシックインカムが支給されれば多くの人の可処分所得が増え、消費が増えて、企業の設備投資も増え、実体経済が上向くことになります。
 小手先の量的緩和(ベースマネー(日銀預金残高)を増やすこと)で金融市場だけに資金が流れていくような現状より、景気対策としても実効性が高いでしょう。

―労働環境の変化

 雇用主(=公的部門、民間部門双方)の観点で言えば、ベーシックインカムが導入されれば、最低限の収入が保障されるので、雇用者責任が軽減され、より柔軟な事業戦略、雇用戦略が可能になります。
 賃金を決定する際には、最低限の収入がベーシックインカムで保障されているので、雇用主が従業員の最低生活費を考慮する必要がなくなり、最低賃金の概念・規制も消滅する可能性があります。
 経営者は従業員の継続雇用に対するプレッシャーが減り、従業員も最低限の収入が保障されることで、転職・起業など新しいことにチャレンジする意欲が高くなるでしょう。
 こうして、人材の流動化が促されれば、正規・非正規の雇用形態は意味がなくなります。

 人材確保という観点では、最低限の収入が保障されているので、人の嫌がるような業務に関してはより人材確保が難しくなり、単純に賃金が下がることにはなりません。また、いわゆるブラック企業が淘汰されることも期待できます。
 人材の流動化が促進されれば、スキルのある人材に求人が集中するので、これもまた単純に賃金が下がることにはなりません。
 どんな事業でも、継続して成果を出し続ける為に最重要なことは、良い人材を確保して、安定的に組織運営をすることです。雇用の流動性があれば、「ベーシックインカムで生活給が保障されているので、賃金を下げます。嫌ならどうぞお辞めください。」というわけにはいかなくなると思います。
 働く人の立場からいえば、収入に関係なく有意義と思う仕事を選ぶ、今までより少なく働いて他の活動に時間を割くなど、多様な働き方を実現するきっかけになります。

―セーフティネット

 民間企業の場合、環境の変化により、経営が困難になることもあります。
 この場合、最終責任は出資者と債権者が取るのが資本主義のルールですが、国民であれば、ベーシックインカムにより最低限の収入が保障されるため、社会の根幹を揺るがすような大問題には至りません。
 AIなど技術の進歩で、雇用が減った場合でも、ベーシックインカムがあれば、安心して暮らせていけることになります。そもそも、世の中のお金の量が無限に増え続けて、生産も消費も拡大し続けるということは、人口が減ってきている日本ではありえないことです。
 また、次世代を産み育てることに関する経済的ストレスが緩和されます。
 ベーシックインカムが一人当たり月5万円支給されると想定すると、子供1人の母子家庭の場合、月当たり10万円の収入増となります。

【社会保障>生活保証>現物支給&現金支給=ベーシックインカム】

 ベーシックインカムは、経済的に余裕のない人たちにとっては、生活保証給になります。
 生活保証といった場合、生きていくうえで必要なもの(現物orお金)を無料で、もしくは極めて安価で誰かが提供する、ベーシックインカムの場合は政府がお金を提供する、ということです。
 また、生活保証は社会保障(福祉)の一部であり、ほかにも傷病時のサポート(健康保険)やハンディキャップのある方への支援、などが社会保障に含まれます。


 さて、生活というと昔から衣食住という言い方が日本にはあります。
 特に住は、全ての人にとって生存に不可欠ななわばりで、人間がプライベートで、または家族と一緒に過ごす大事な空間ですが、現在多くの人が家を購入する際にローンを組んでいます。
 失業して、収入が断たれ、ローンが払えないと家を差し押さえられて、路頭に迷うということも起こります。

 もし、公営の良質で安価な住宅が多く供給されれば、通勤・通学に時間のかかる場所に、ムリしてローンを組んで家を購入する必要が無くなります。
 また、ベーシックインカム支給を契機に景気が良くなり、不動産価格が上昇したり、家賃が上昇したりして、困る人も出てくる可能性があり、特に都市部での公営住宅の拡充は、生活保証という観点から重要になります。

 生活保証給はすべて現金を支給するというものでもなく、現物支給できるものもあります。ただ、衣食住すべて現物支給するとなれば、支給する側の作業も膨大になり、今ある市場を壊すことになるので現実的ではありません。
 現物支給するものと、現金支給し、何を消費するかは受け取った個人の裁量に任すものとがあります。

現物支給:住居、電気、ガス、水道、など
現金支給:ベーシックインカム

 このように、ベーシックインカムは、社会保障の一部の生活保証の、さらに一部の現金支給、という位置づけになります。

【ベーシックインカムのリスク】

政府通貨のところで権力者を牽制するために直接民主制の導入、つまり民意を国政に充分に反映させることが必要であると述べましたが、ベーシックインカムも同じで、民意が反映されないままに実施されると、社会保障の総額が大幅に削減され、多くの国民が不利益を被る可能性もあります。

【ベーシックインカムの試算】

ベーシックインカム支出試算(人口1.25億人)
・月5万円(年間60万円)支給すると、年間75兆円
・社会保障のベーシックインカムへの置き換え(案)
高齢/遺族/家族/失業/住宅/生活保障その他 合計:76兆円(2017年度、次表参照)

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 これにより、政府歳出を増やすことなく、年間75兆円のベーシックインカム支給が可能となります。
 一方、社会保障の歳入面を見てみると、事業主拠出は財源確保のために、引き続き徴収していけば、一時的な歳出(拠出型年金等の精算)を除けば、ベーシックインカム実現の可能性が見えてきます。

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 この社会保障関係施策のベーシックインカムへの置き換えにより、行政の簡素化が達成されます。
 そして、年金等の社会保障のベーシックインカムへの置き換え時に発生する一時金の支払い(拠出型年金等の精算)や、行政の簡素化に伴う公務員の退職金の不足分、公的住宅の拡充など一時的な支出は、特別会計の剰余金や、政府通貨を発行し通貨発行益を財源にすることができます。

 これはあくまでも筆者の試算で、いろいろな意見があると思います。皆様にもぜひどのようなベーシックインカムがいいのか、考えていただきたいと思います。

 それでは、最後にこちらもよろしくお願いいたします。
 
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新田たつふみ記

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