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アスフレ観戦記『22年10月度』

アースフレンズ東京Z(アスフレ)の22-23シーズンが始まってから、早1ヶ月が過ぎました。今回は、ここまでの戦いを振り返りってみます。

第1節:強烈なバックコートDuo

開幕戦の相手は、山形ワイヴァンズ。継続性を持ったチームビルディングを実施し、ライコビッチ体制3年目。成熟期を迎えたチームです。

一方のアスフレは、山形とは正反対のチームビルディング。毎年のように解体を選択し、今シーズンもロスターはがらっと変わっています。この日のスタメンは、何と全員が新規契約選手でした。

試合は、全体的に山形ペースで進みました。ボールと人を軽やかに動かすオフェンスで、効率良く得点を奪われ、アスフレは最大11点差のビハインド。もはやお馴染みとなっているブローアウトが、頭をよぎった人もいる筈です。

ただ、今シーズンのロスターは、例年と一味違っていました。離されるたびに着火剤となる選手が現れ、山形の背中に食らいついていったのです。

彼らの逆転に向けた熱さは、次第に多くの観客に伝播していきました。第4Qのオフィシャルタイムアウト、Zgirlsの『Jump Around』パフォーマンス。この頃には、ここ数年冷え切っていった大田区総合体育館は、逆転に向けた熱量で完全に満たさていました。

『勝ちたい』『勝たせたい』、ただそれだけ。誰もが同じ思いを胸に、いよいよクラッチタイムが幕を開けました。

ここからの主役は、数少ない継続契約の栗原翼と、新規契約の城宝匡史。この新たなバックコートDuoによるオフェンスが、とにかく凄まじかったです。

栗原は、身体能力を生かしたペイントアタック。城宝は、正確無比な3Pショット。異なるエリアで勝ち気に勝負を仕掛ける二人が、相手を完全に翻弄。確実にスコアを重ね、残り1分6秒、城宝の3Pショットで遂に追いつきました。

その後は、試合を通して体を張り続けたレジナルド(レジー)が、オフェンスリバウンドからエンドワンで逆転。終了間際で掴んだ虎の子のリードをチーム全体で守りきり、開幕ゲームは見事な逆転勝利でした。


第2節:タレント不足

先の大逆転劇を現地で観戦したファンは、会場の盛り上がりも含め、今シーズンのポジティブな変化を心に刻まれた筈です。少なくとも私は、『残留回避は厳しい』から『残留回避できるかも』と評価を覆しました。

が、物事はそう甘くなかったです。開幕節Game2を落とし、1勝1敗で迎えた第2節・越谷アルファーズとの戦い。2試合連続、第1Qで奪われた大量リードを返せず、ブローアウトという言葉が生ぬるく感じるほどの大惨敗。アスフレの立ち位置を、徹底的に指導されてしまいました。

何が悪かったのか。最も印象に残ったのが、オフェンスのタレント不足です。この2試合、栗原と城宝のバックコートDuoは、相手の激しいDFに抑えられて沈黙。開幕ゲームのように、チームを前に動かすことができませんでした。

彼らがいるのはプロの世界ですから、スカウティングされることもありますし、相手の力量が単純に上回っていることもあります。活躍できない試合があることは、さほど問題になりません。他の選手が代わりに活躍すれば良いのです。

しかし、まさにその代わりが、このロスターにはいませんでした。

当初のロスターには、オフェンスで何でもできるルブライアン・ナッシュがいました。衛藤GMは、日本人ハンドラーが抑えられた場合、ナッシュの個人技に頼ることを想定していた筈です。

しかし、メディカルチェックで引っ掛かり、シーズンイン直前に契約解除。代わりに短期契約で確保したロバート・サンプソンは、3Pショットを決められるビッグマン。ロールプレーヤーとしては非常に有能ですが、ナッシュの代わりにはなれません。

急ごしらえロスターのため仕方のないことですが、オフェンスの起点となれる選手が明らかに不足していました。


第3節:3ガード

劇的勝利からの3連敗。このままずるずると連敗を続けてしまうのか。開幕早々の正念場となった第3節・西宮との戦い。

橋爪HCは、この試合から3ガードを導入。スタメンの中からウィングを一枚外し、栗原と城宝のバックコートDuoに加え、ハンドラーの井手をスタメンに抜擢。前節は抑え込まれたバックコートに、さっそく手を打ってきました。

これが大当たり。

井手は、栗原や城宝に比べると派手なタイプではありませんが、逆に堅実なプレーができます。第1Qの入りで、しっかりとオフェンスを組み立てながらも、自身で3Pショットを2本決め、序盤リードに大きく貢献しました。

中盤以降は、栗原と城宝が久しぶりに揃って躍動。暴れに暴れ、勝負ありです。この試合は5人が二桁得点。チームはシーズンハイの95得点。オフェンスの爆発によって、連敗から脱することができました。

4.外国籍選手への依存

第4節の相手は、西地区首位を走る愛媛オレンジバイキングス。西宮との戦いで好感触だった3ガードの試金石としては、絶好の相手です。

結論から申しますと、アスフレの3ガードは、しっかりと抑えられてしまいました。特に城宝は、オフボールの段階から執拗に追い回され、エーススコアラーの仕事ができなかったです。

Game2。抑え込まれた3ガードに代わり、イライジャの活躍が目立ちました。体の強さ、ウィングスパンの長さ、多様なフィニッシュスキル、持ち前の武器を遺憾なく発揮し、シーズンハイの30得点を荒稼ぎ。フィニッシャーとしてスペシャルであることを、自ら証明しました。

しかし、しかしなのです。イライジャの奮闘むなしく、チームの総得点は何と Game1よりも大きく減少。イライジャにボールを集中させた結果、人とボールの動きがインサイドで停滞し、他選手の得点が止まってしまいました。

得点トップ3
1位:イライジャ 30点
2位:栗原 12点
3位:城宝(他2名) 5点

アスフレは、DFか良いチームではありません。第4節終了時点では、下から2番目。得点が取れなければ、勝てるチャンスは皆無です。11点差で破れ、今シーズン2度目の3連敗となりました。


第5節:must win game

第5節は、降格争いに関わる可能性が高い青森。是が非でも勝利したいところ。言わば、『Must Win Game』です。

結果は、はっきりとしたブローアウトの敗戦。前半こそ競れたのですが、後半は一方的に押されてしまいました。

チームスタッツで大きな差となっていた項目は二つ。オフェンスリバウンドと得点効率です。

まずは、オフェンスリバウンドについて。理由は不明ですが、この試合はインサイドの要であるレジーがDNP。青森にインサイドを支配され、オフェンスリバウンドを大量に確保されてしまいました。その差は16。青森は、ポゼッション(※)がアスフレより16回も多かったのです。
(※)ポゼッションの計算は、オフェンスリバウンドを引かない方式を使用

次に、得点効率について。愛媛戦に引き続き、イライジャだけが活躍し、他選手の動きが停滞。相手を崩せず、タフショットが増えました。実際に得点効率(PPP)を計算してみると、その差は歴然です。青森が高いというよりかは、アスフレが低すぎます。

ポゼッションと得点効率は、どちらも青森の方が大きく上回っていたのですから、そりゃあ勝てませんし、ブローアウトになるのも当たり前です。

ポゼッションに関しては、レジー不在が響いたのは間違いないので、今回は仕方ないものとしておきましょう。ただ、得点効率に関しては、この試合に限った話ではありません。シーズン通して、足を引っ張っています。

得点効率(PPP)の比較
・勝利時のPPP:0.98
・敗戦時のPPP:0.83


10月度の総評

10月度の成績は、2勝7敗。出足好調かと思われましたが、結局は東地区の最下位に収まりました。

この成績に対しては、「しっかりやれ」と怒っている方もいるでしょう。チームが掲げた目標『30勝』は一旦置いといたとしても、現実的な目標である降格回避には、暗雲が漂い始めているのですから。

それでも、個人的には「よくやった」とプラス評価をしています。というのも、シーズンイン時点のチーム状態では、全敗も十分考えられたからです。

昨シーズンまでのB2は、上位チームの大補強が相次いだことにより、上位と下位の差が割とはっきりしていました。ただ、降格のある今シーズンは、下位チームでも積極的に補強が行われ、近年稀に見るほど高いレベルで混戦模様となっています。

もちろん、アスフレも例に漏れず、積極的に補強を行いました。衛藤GMの指導により、昨シーズンよりも大きく戦力アップができてます。それでも、周りを見渡して相対的な位置づけをするならば、戦力はB2で低位と言わざるを得ません。

そのうえ、外国籍選手の入国遅れや急な契約解除によって、まともなチーム練習ができないままのシーズンイン。セットオフェンスで立ち位置が分からない選手がいたり、試合中に選手同士で意見の相違で口喧嘩があったり、チームの成熟度は明らかに低かったです。

そんな状態で『2勝も拾えた』のですから、御の字と言えるのではないでしょうか。

しかし、プラス評価をしているとはいえ、降格圏内のど真ん中です。今後に向けては、シーズン通してザルなディフェンスも、タレント不足のオフェンスも、早急に強化が必要になります。

そこで期待したいのが、短期契約のロバートに代わり、本契約を結んだアディソン・スプライルです。

ハイライト映像と過去のスタッツから見る限り、アウトサイドから何でもできる選手。3ガードの一角に入り、得点に絡むプレーを求められている筈です。未知数な部分はまだまだ多いですが、オフェンスのタレント不足はこれで一気に解消できるかもしれません。

但し、上背のなさは、やはり気になります。初めに契約したナッシュは201cm。次に、短期契約したロバートは203cm。新しく契約したアディソンは193cm。10cm近いサイズダウン。ロスターには日本人ビッグマンがいませんので、アディソンがプレーしている時間帯は、相手に制空権を取られる可能性が高いです。

ゾーン DF であったり、積極的なダブルチームであったり、相手に高さの利を取らせないことが、今後の鍵になるでしょう。まぁ、成功するにしても、失敗するにしても、このチャレンジングなロスターを選択した衛藤GMの判断を支持します。


月間MVP:栗原翼

最後に、10月度の月間MVPを選びましょう。オートマチックにスタッツだけで選ぶことも考えたのですが、ファンの観戦記なので私的感情も加味します。

月間MVPは、栗原翼です。

栗原は在籍4年目。慕っていた先輩や仲の良い同期がごっそり抜け、気づけばチームの最古参。今シーズンのロスターでは、アスフレが底辺に落ちていく過程を、身を持って知っている唯一の選手です。

おそらくですが、栗原はそれを強く自覚しています。 本来のチャラい性格が少しだけ鳴りを潜め、これまでの受け入れ難い成績や忘れられない悔しさ等、過去について語ることが増えましたから。

気負い過ぎているようにも見えるため、少なからず心配はあります。でも、別チームのようになったアスフレだからこそ、過去を大事にしてくれることには、やっぱり感謝しかありません。

・開幕ゲームでヒーロー賞を受賞した時の挨拶
僕は昨シーズンからの継続選手なんですけど、去年からホームで勝利を届けたいとずっと言い続けていたのですが、一度も届けられませんでした。なので、開幕を勝利できたことは、チームにとっても、ファンの皆様にとっても、とても良いことだと思います。

あ、感謝だけで月間MVPに選出した訳ではありませんよ。プレーの方も素晴らしかったです。

スラッシャーとしては、もともとの優れた能力に一段と磨きをかけ、B2では屈指の領域に到達しつつあります。さらに、オフシーズンに弱点であったシュート力(3P、FT)の強化にも成功。まだまだアテンプトが少ないとはいえ、成功確率はチーム内で上位です。

もうね、長所を伸ばし、弱点を減らし、数字に表れる活躍をしているのですから、文句の付けようがありません。オフコートの振る舞いも加味すれば、ぶっちぎりの月間MVPです。公開練習では直接伝えましたが、ここでも書きます。翼、残ってくれてありがとう。

では、栗原とチームの活躍を願って。
Go Win Z ! ! !

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