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アスフレ観戦記『良い変化のあった1月度』

12月度が終了した時点における、アースフレンズ東京Z(アスフレ)の成績は、5勝23敗。降格争い戦線からは完全に弾かれ、最下位の1人旅となっていました。残り32試合、このまま起伏なく、バッドエンドを迎えるのか。はたまた、奇跡を起こして、ハッピーエンドに到達するか。あとがない1月度を振り返ってみましょう。

第16節:ハードワーカーの帰還

第16節の対戦相手は、アルティーリ千葉。強豪との戦いを前に、もう何度目か分からないロスター変更がありました。

契約解除 : JD・ウェザースプーン
新規契約 : イシュマエル・レーン(イシュ)

イシュは、アスフレに以前所属していた選手。古参ファンには馴染みがあるものの、新規ファンの中には「あなたは誰?」って方もいるでしょう。どういう人物か、簡単にではありますが紹介します。

身長は203cm。ビッグマンとしては小さめです。現代バスケに必要な3pショットは、成功確率が大学通算31%。アテンプトも少ないですし、お世辞にも上手いとは言えません。高さもスキルも平凡ではありますが、何よりも強い特徴は、当たり負けしない強靭な体とハードワークを厭わないメンタリティです。

19-20シーズン、それらが名古屋ダイヤモンドドルフィンズの目に留まり、日本でプロキャリアをスタートさせました。

アスフレとイシュが接点を持ったのは、同シーズンの1月。当時のアスフレは、東頭体制1年目。東頭ヘッドコーチ(HC)が持ち込んだ数多の施策がことごとく刺さらず、残留争いの真っ只中にいながらも、お手上げ状態。頼みと綱として、名古屋でプレイタイムをあまり貰えていなかったイシュを獲得しました。

当時のB2には、イシュのフィジカルに敵う相手が、ほとんどいなかったです。無双という表現がぴったりな活躍で、アスフレに大きな競争力を付与してくれました。結局、新型コロナの流行によって、リーグは中断・中止。多くの試合を共にすることはできませんでしたが、その素晴らしい活躍であったり、寡黙に仕事を全うする姿勢であったり、イシュは短期間で完全にファンの心を掴んでいました。

翌シーズン(20-21)、謎に東頭体制が続いたこともあって、イシュはアスフレと再契約。新型コロナでお母様を亡くし、インスタで大きな悲しみを吐露することもありましたが、試合中はいつもと変わらぬハードワーク。何というか、そのプロ意識には、ただただ頭が下がりました。

ただ、努力が必ず報われるとは限らないように、現実は非常に残酷でした。試合中のアクシデントによって、左膝の前十字靭帯が断裂。誰よりもチームのために体を張り、誰よりもチームに貢献していたにも関わらず、シーズンアウトの大怪我で契約解除。不本意な別れとなってしまいました。

その後は、アメリカで手術を受け、過酷なリハビリの日々。 それでも、持ち前のハードワークで順調に回復し、 翌シーズン (21-22)はメキシコと台湾のリーグでプレー。 どちらでもMVP級の活躍を見せ、怪我の影響が微塵もないことを証明したのですが、何故か今シーズンの所属先は決まらなかったようです。 アスフレはそこに目を付け、またもや残留争いにおける頼みの綱として迎え入れました。

では、話を千葉戦に戻しましょう。今節で変わったことは、ディフェンスのバリエーションです。怪我で欠場したレジナルド・ベクトン(レジー)とは異なり、イシュには相手を追いかけられる走力がありますので、マンツーマンディフェンスを選択できます。ほぼ全員が3pショットを決められる千葉に対しては、そちらの方が効果的でした。

但し、それで失点が改善するかは、また別の話。1on1の弱さやローテーションの拙さ、そもそも抱えていたディフェンスの弱さに加え、イシュを
アウトサイドまで引き出された場合、全くリバウンドが取れない新たな問題も発生。結局は、マンツーマンを避け、2-3ゾーンを多用していました。

しかし、それなりにアスフレの試合を見てきた人なら共感してくれるでしょうが、アスフレのゾーンディフェンスは、全くと言っていいほど効果がありません。レジーやジョシュア・クロフォードのスピード不足であったり、アディソン・スプライルの高さ不足であったり、ゾーンは自分たちの弱点を隠すための手段でしかないからです。

そのうえ、衛藤体制はゾーンを基本戦術としていましたので、普通のチームならば対策を用意しています。簡単に攻略され、大量失点で敗北しました。

ここまで数多くの外国籍選手を入れ替えてきたアスフレですが、イシュの加入でようやくロスターが完成。タレントは、間違いなくチーム史上最強です。但し、あくまでもチーム史上。他チームと相対比較となれば、決して最強とは言えません。

ここから勝ちを増やすには、個の力を如何にチーム力へ変換できるか。つまり、コーチングスタッフ次第です。イシュの紹介で触れた東頭体制は、結局それができませんでした。日本人選手はお飾りになり、外国籍選手のタレント力でゴリ押すだけのバスケ。それには、魅力も競争力もく、体制の終焉を迎えました。

さて、衛藤体制はどうなるか。

第17節:逃げるな

第17節の対戦相手は、山形ワイヴァンズ。オールスターの中断期間12日間で、イシュ加入後のチーム成熟度をどれだけ高められたのか。後半戦の巻き返しを占う意味でも、重要な試合でした。

序盤は、アスフレのペースで進行。千葉と同様に、3Pショットをガンガン狙ってくる山形には、やはりマンツーマンディフェンスの方が効果的でした。相手のオフェンスをほぼ完璧に抑え込み、最大22点差のリード。勝利をぐぐっと引き寄せました。

しかし、それでも上手く勝てないのが、俺たちのアスフレです。イシュのファールトラブルを機に、高さのミスマッチが発生することを嫌がった衛藤HCは、ディフェンスをゾーンに変更。これが完全な悪手でした。山形のオフェンスに、ゾーンのローテーションが間に合わず、ワイドオープンの3pショットを数多く被弾。ハーフタイムを迎えるころには、1ポゼッション差まで迫られていました。

その後は、諸悪の根源であったゾーンを止め、展開は一進一退。オーバータイムにもつれるほどの熱戦となりましたが、最後は力負けでした。

『ディフェンスからバスケットをつくる』

これがアスフレの目指してきたスタイルです。ただ、その実態は、何の力もないゾーンを繰り返すだけ。レーテイングは、ぶっちぎりの最下位でした。

この時点では、マンツーマンを選択して3試合。まだまだ有意差を断言できるほどではありません。それでも、マンツーマンとゾーンのどちらを選択すべきは、さすがにこの試合で明確になったでしょう。

第18節:One Team

第18節は、アウェイで西宮との戦い。この節から、昨年末の越谷戦で右肩を負傷していたレジーが復帰。久しぶりに、外国籍選手3名が揃いました。

Game1。先手を取ったのは、西宮。というか、アスフレが試合にふわっと入ってしまったことが悪かったです。一気に8-0のランを喰らい、満員のホームを大いに沸かせてしまいました。衛藤HCは、タイムアウトを慌てて取らざるを得なかったです。

「またいつものアスフレか」

悪い結果が頭をよぎる内容だったのですが、本当の勝負はここから始まりました。

タイムアウト後、ディフェンスが劇的に変わりました。前節の山形戦で手応えのあったマンツーマンが、さらにグレードアップした感じです。対人の強さ、ローテーションの滑らかさ、思わず拍手をしたくなるような完成度で、西宮のスコアを停滞させました。

途中、ファールトラブルで、高さのミスマッチを背負う展開もありました。それでも、前節の山形戦と違ったのは、下手なゾーンディフェンスには決して逃げなかったこと。我慢に我慢を重ね、マンツーマンを貫ぬきました。

その我慢によるマンツーマンを最も体現していた選手が、井手優希です。ここまでのシーズン、井手はあまり多くのプレイタイムを貰えず、前節に至ってはDNP。なかなか立ち位置を確立できていなかったのですが、この試合は相手の外国籍エース、デクアン・ジョーンズを抑える大役を任されました。

高さ、パワー、スキル、相手の方が全て上。それでも、常に相手の足元へ入る執念と的確なタイミングで味方のヘルプを呼ぶクレバーさで、完全に抑え切るまでは至らずも、十二分に渡り合っていました。

また、井手はオフェンスでの貢献も凄かったです。特に印象的だったのは、オーバータイムで味方の足が止まるなか、ディフェンスリバウンドからボールプッシュして決めたエンドワン。これが決勝点となり、久しぶりの勝利を手に入れました。

Game2は、Game1と同じくマンツーマンディフェンスを貫いたのですが、残念ながら敗れました。大いに喜ぶ西宮ファンに囲まれていたこともあって、悔しさは大きかったのですが、それ以上に手応えも感じました。目指していたスタイル『ディフェンスからバスケットをつくる』を2試合やり切った彼らには、1本の大きな筋が通ったように見えたからです。

他チームからしたら遅すぎることでしょうし、そんなことで手応えを感じているようでは笑われてしまうでしょうが、アスフレ基準では本当に大きな進歩てす。心の底から「まだまだこれから」と思うことができました。

第19節:ようやく本格化

第19節の対戦相手は、熊本ヴォルターズ。強豪とはいえ、エースのテレンス・ウッドベリーが不在でしたし、こちらはこちらでチーム状況が確実に上向いていましたので、密かに連勝を期待していました。

Game1。西宮戦と同様に、先行される展開でしたが、ディフェンスを締めることで、大きなリードを許すことはなかったです。

ただ、ピック&ロールであったり、ポストプレーであったり、ペイントを強調されてからのキックアウトは、最後まで手を焼きました。勝負どころで、相手のシューター谷口にワイドオープンで3Pショットを何度も決められ、万事休す。最後は、12点差で敗北しました。

Game2。実にアスフレらしくないのですが、コート上には前日の反省がきっちり反映されていました。高確率で決められた3Pショットに対しては、ペイントで起点をつくらせなかったり、ローテーションでズレを消したり、ショットに至る過程で妨害。相手のショット成功確率は、大きく減少しました。

熊本のFG%
・Game1 : 44.6%
・Game2 : 37.7%

攻めては、ハンドラーの木村が躍動。昨年末の越谷戦、ピックに来てくれないJD・ウェザースプーンに不満をもらしていた木村ですが、何度もピックに来てくれるイシュとは相性が良かったようです。ピックからプルアップの3pショット、リムアタック、スコアにつながるプレーを連発し、キャリアハイの20得点を上げました。

堅守で失点を減らし、強いところでシンプルに得点。目指してきたスタイル「ディフェンスからバスケットをつくる」が見事に体現されていました。文句の付けようのない完勝と言えるでしょう。

その他、この試合で勝利よりも驚いたことがありました。それは、相手のピック&ロールに対して、『ブリッツ』でボールを奪取したことです。これまでは、『ドロップ』だけでしたので、ディフェンスの引き出しが明らかに増えていました。少しずつ、少しずつですが、いっぱしのディフェンスチームに近づいています。

月間MVP:イシュマエル・レーン

1月度のMVPは、即決でイシュ。個の力は言うまでもないでしょうが、その他にもディフェンスの選択肢が増えたり、ハンドラーがノビノビとプレーするようになったり、イシュのおかげでチーム全体が上手く回るようになったのが、素晴らしいです。

シーズン序盤に契約解除となったイライジャ・トーマスとの違いは、まさにそこ。イライジャはイシュよりも優れたフィニッシャーでしたが、その活躍がチームに波及することがありませんでした。それが契約解除の理由かは不明ですが、イシュの方が今のチーム状況に適していたのは明らかです。

イシュ、今後もよろしくね。

今後の展望:どうやって5割を超えるか

残留へ向けた勝負の1月度は、『2勝7敗』。前を走る奈良と香川との差は、『3』。勝敗は決して良くなかったものの、最後の2節をそれぞれ1勝1敗で終えられたことで、ギリギリ手が届く範囲には何とか留まれました。

奈良 10勝25敗
香川 10勝25敗
アスフレ 7勝28敗

直近2節の勝因は、以下のレーティングが示す通り、ディフェンスの向上です。イシュ加入によってマンツーマンを選択できるようになったこと、衛藤HCがゾーンに逃げなくなかったこと、これらが良い方向に働きました。

但しネットレーティングは、ほぼイーブン。戦えるようになったとはいえ、勝てるようになったとは言えません。攻守ともにまだまだ改善が必要です。

タレント面は、 早々に大矢が怪我から復帰するでしょうし、噂の韓国籍ビッグマンも入るでしょうから、もう十分でしょう。あとは、チームの成熟度次第です。

2月は香川。3月は奈良。まだまだ残留争いの直接対決が残っていますし、連勝を狙える中位との対戦もあります。希望を捨てず、とにかく自分たちのバスケをやり切りましょう。

では、残留を願って。
Go Win Z ! ! !

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