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粒状の総料理長

「なんとねぇ、キミ。総料理長は粒状なんだよ」

「は、はあ?」

唐突なシェフの言葉に、
随分と間の抜けた声が漏れてしまう。

「今どき珍しいよねぇ」

「そうですねぇ」

訳もわからず、ついつい返事がテキトーになってしまう。

「キミぃ、疑っているね?そのマヌケヅラを見ればわかってしまうよ」

黙ったままの私を見かねて続けた。

「実験で確かめてみようじゃないか」

「実験……ですか?」

「二重スリット実験。どんなに無知蒙昧なキミでも流石に存じているだろう?」

「ええ。まあ」

二重スリット実験。
発射した量子は、観測すると粒になり、観測しないと波になる。そんなマカフシギな実験である。

「では早速」

シェフは総料理長を壁に向かって何度か発射する。

「ああ、ちょっと、そんなコトしていいんですか?」

「なあに、これでスッキリハッキリ私の言ったことがわかるよ」

総料理長はマッスグ壁にぶつかった。

「ほうらね?もし総料理長が波だったら干渉縞ができるだろう?」

「僕らが見てたからでは?」

「それもそうだ。ではあっちを向いててくれ。それ!」

僕は結果を見てビックラ仰天した。

どうやら総料理長は粒状らしい。

ずっと波だと思っていたのに。

イマドキなんと珍しいことだ。

(499字)


奇妙な作品になりましたが、
意外と気に入ってます。

いつもお読みいただきありがとうございます!

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