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みえの自然の魅力


「氷河と砂漠以外のすべての自然がある!」

この言葉は、世界中の「古道」と言われる道を旅している植野めぐみさん(アトリエ・ちきゅうの道)の言葉です。最初に、この言葉を聞いた時「そんなことってあるのかな〜?」と懐疑的だったのですが、三重の自然を知れば知るほど、なるほどそうかも知れないという思いに至っています。

三重県は、本州の中央付近の太平洋側、紀伊半島の東側に位置します。東西南北に広がり、広大な自然保護区と共に約 1,000 km にもおよぶ海岸線を有しています。まさに、「山あり、川あり、海あり」の大自然と言って良い自然が豊かな県です。

山は紀伊山地の東側、深い深い山々が連なっています。日本を横断する中央構造線が東西に走っており、それを境にして2つの岩石帯から構成されています。山には、温帯雨林帯の森林が広がっており、人工林では、尾鷲ヒノキや吉野杉など、日本でも美林と呼ばれる良質の木々が成長しています。

ここに太平洋からの湿った雲がやってきて多くの雨を降らせます。特に、三重県南部は日本でも1〜2番の年間降水量を誇る多雨地帯です。この雨が山を削り、渓谷を刻みます。日本三代渓谷の大杉谷が大台町にあります。多くの降水は、急峻な河川を作り、多くの伏流水となって流れ、豊かな流量の河川系を作ります。豊かな水資源があり、広大な伊勢平野は肥沃な大地となります。

深く刻まれた渓谷は海につながり、リアス式海岸を形成しています。リアス式の海岸は魚付林などからの肥沃な養分を貯めて豊富な藻場・漁場・前浜を形成し、日本でも有数の豊かな漁場を形成しています。複雑な入り組んだ地形は台風の時でも風や波が弱く、風待ちの港と呼ばれるほどの養殖が可能な貴重な漁場を形成しています。ここに、南からの親潮に乗った外洋の魚たちが海遊してきて、200種を超えると言われるほど魚種の多い海が広がっています。

さて、いかがでしょうか?「氷河と砂漠以外のすべての自然がある!」という言葉が示すように、三重にはありとあらゆる豊かな自然があります。皆さんにもぜひ訪れていただいて、三重県の大自然を体験していただきたいです。


山がどこまでも連なる紀伊山地(写真credit:植野めぐみ) 

みえの山の魅力

三重県の山の魅力は、なんといっても様々なタイプの山があることです。市街地のそばに標高500〜800m程度の比較的アクセスしやすい山あります。
私たちは、紀北町海山にある便石(びんし)山(標高611m)、尾鷲の天狗倉(てんぐら)山(標高522ⅿ)、大台町の北総門山(きたそうもんざん)(標高706m)などによく訪れます。便石山の頂上付近には「象の背」と呼ばれる大きな岩があり、そこに登ると空を飛ぶ鳥になったような気分で熊野古道の馬越峠、銚子川、海(熊野灘)が一望できます。天狗倉山は、登り下りの険しい部分もありますが熊野古道の馬越峠から頂上への道が整備されていて山頂の大きな岩(天狗岩)の上と尾鷲湾の絶景や北側の大台ケ原の山々も見渡せます。北総門山はなだらかな野鳥の森から天然林の中を歩き、山頂付近の姫沙羅(ヒメシャラ)の森を抜けて山頂展望台に行けます展望台からは天気の良い日は伊勢湾も眺められます。

一方、紀伊山地には、近畿地方で最高峰の八経ヶ岳(1915m) 、日本二百名山の釈迦ヶ岳(1800m) 、三重県最高峰・日本百名山である大台ヶ原山(1695m)など標高1,000m~2,000m級の山々が紀伊山地、特に大台ケ原にあります。これらの山はより本格的な装備で経験ある山岳ガイドの皆さんと共に登山を行う必要がありますが、プロフェッショナルな活動を展開できる可能性を秘めています。
このほか、三重県には、北部に低山地を含む養老山地、高度1000m程度の山々過多なる鈴鹿山脈とそこから連なる少し低い布引山地、中部に中央構造線に接する少し険しい高見山地があります。

地質もとても威力的です。紀伊半島は、営々と太平洋から沈み込む海洋地殻が剥ぎ取られてできる付加体の岩石、その岩石を削って沿岸域に堆積する前弧海盆堆積体、そこに1500万年ほど前に地下から噴き出して固まった火成岩体などから構成され、複雑な地質と地形を形成しています。大台ケ原や尾鷲から熊野に連なる山々は、いにしえの大地の営みで巨大な火山が活動して、その後にできたカルデラ群と考えられています。三重県の中央部には。関東から紀伊半島、四国を経て九州へと連なる日本列島を縦断する大断層である中央構造線があります。中央構造線の北都と南部には1億年ほど前の2種類の異な変成岩体で構成されており、これが伊勢志摩の特徴的な入り組んだ地形や熊野灘沿岸のダイナミックな地形を形成しています。
深く連なる山々や深淵な温帯雨林の森林は太古の昔から自然信仰を育み、紀伊山地の霊場と参詣道は熊野古道と呼ばれ、世界遺産に登録されています。


象の背・便石山(三重県紀北町)


みえの川の魅力


年間3,000mmを超える豊かな雨も三重県の特徴です。紀伊半島の南東部では、海からの湿った空気が水平距離わずか20kmの距離で一挙に標高差1500mの斜面を吹き上がります。そこで急速に冷やされて雲ができ、それが大雨となって降ることになります。大雨は、水量豊かな河川を多数形成し、大地を削ります。こうして侵食によって深い渓谷が形成されます。こうして日本三大渓谷の一つである大杉谷(大台町)が形成されています。私たちも大杉谷には訪れますが、とてもきれいな場所である一方、危険な箇所もあり、十分な装備と専門的なガイドの方とともに訪れることが必要です。山岳救助隊の方からの指導も受けますが、十分な知識と経験のもとで活動することが必要です。

豊かな雨は河川水や伏流水となり、海に向かって流れます。三重県は川のアクティビティも多数楽しむことができます。おすすめは、豊かな水量を誇る一級河川である宮川。そして「奇跡の清流」と呼ばれる銚子川(三重県紀北町です。宮川の上流部や銚子川は言葉では言い表せないほど綺麗です。この綺麗さは実際に訪れた方にしかわかりません。日本中のどこの川でも淡水と海水の混ざり合う境界(ゆらゆら帯、と呼ばれます)が必ず存在しますが、水が濁っている多くの川では見ることができませんが、銚子川ではこれを見ることができます。これらの清流では川遊びはもちろんのこと、スタンドアップパドルボード(SUP)や、カヤックやカヌーを楽しむことができます。
豊かな山々と降雨の中で、温帯雨林が発達し、深淵な森林が広がっています。人工林では、尾鷲ヒノキや吉野杉など、日本でも美林と呼ばれる良質の木々が成長します。森林浴、林道ウォーク、e-Bikeツアー、森の恵みでのクッキング、キャンピングなど、森林の中でのアクティビティも楽しむことができるところも魅力です。




銚子川のゆらゆら帯(淡水と海水の境界)


みえの海の魅力


 みえの魅力はなんといってもです。三重県の西側は山地ですが、東側は約 1,000 km にもおよぶ海岸線で海に面しています。北は伊勢湾、南は熊野灘、まっすぐな海岸や入り組んだリアス式の海岸など様々な海の風景があります。鳥羽湾は答志島・坂手島・菅島・神島やその他多数の小さな島があり、離島の多い島の国です。潮流が複雑でシーカヤックで漕ぐと本当に楽しい海です。運が良ければ沿岸域に生息する野生のスナメリに出会うこともあります。英虞湾は、リアス式の入り組んだ港があり、豊かな魚介と共にさまざまな海の風景を楽しむことができます。
 なんといってもダイナミックなのは熊野灘です。リアス式海岸の入り組んだ入江が無数にあり、波によって削られた岩場には洞窟や小さな瀬などがたくさんあります。またシーカヤックでしかいけないような手付かずの天然の岩場・磯場もあり、魚たちと共に沿岸の海を楽しむことができます。風や波の強い時は、入り組んだ入江の奥深くであればシーカヤックを楽しむこともできますし、少し沖に出ると、外洋のうねりが入ってきて、前の人が見えなくなるほど上下に揺れます。このように、さまざまな海の風景を楽しむことができます。
 陸には熊野古道がありますが、伊勢の海から熊野市までシーカヤックで巡る「熊野海道」もあります。シーカヤックにキャンプ道具など一式を乗せて、1日に10〜20km海をシーカヤックで海を漕ぎ、無数にある無人の浜に上陸して休憩やキャンプをしながら海をめぐるシーカヤックツアーはプチ冒険的なダイナミックなツアーです。プロのシーカヤックガイドの方やヤングサポーターのメンバーとともに、このような旅を体験していただくことも可能です。
 

熊野灘でのカヤックツーリング


伊勢湾でのカヤックツーリング

みえの夜空の魅力


 現代の都市部は本当に便利になりましたが、一方で、夜は非常に明るくなっています。明るすぎて夜空には星が見えなくなっています。これを「光害」と言います。現代人の7割は自然のままの夜空で「天の川」を見たことがないと言われています。太平洋の真ん中にあるハワイ島は世界で最も良好な天体観測地域の1つですが、三重大学教育学部の伊藤信成さんによると、三重県南部はハワイに匹敵する、あるいは、それよりももっと「暗い」環境にあるそうです。つまり、星空を見るにはハワイに行かなくても三重県南部に行けば良いのです!星空満点の海岸や山の中のキャンプ場で夜を過ごすのは至福の時間です。

三重県南部での星空キャンプ

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