斑のもやう

あをぞらの加減を鼻でふれてみてきりんはけふも斑のもやう/山崎郁子

 キリンの首は長い。いつも高いところにいて、私には見えない景色を見て、私には届かない世界に触れている。

 自分がいる場所は地面から近く、いつも見通しが悪く、気が塞ぐことばかりだ。キリンはいいな。キリンが見ている景色はきっと広々として、明るく、気持ちがいいんだろうな。キリンが見ている景色を見たいと思う。地面からは高いほうがいいし、空にはより近いほうがいい。そう思い込んでいる。

 そんなことをすっかり忘れさせてくれる、キリンの美しい斑の模様。相変わらず私は地面のすぐ近くにいて、状況は少しも変わっていないのだけど、キリンの斑の模様が私には見えない青空を映しているように見えるとき、私は青空を見たような気持ちになる。それはもう高い空を見ているようなものだし、もしかしたら本物の青空より眩しく鮮やかな世界だ。キリンは、地上の低いところが決して悪いことばかりではないことに気づかせてくれる。ここにいて良かったとさえ思わせてくれる。

 いつも青空を見ていたいと思う。けれど、それは現実には難しいことだ。でも私はキリンの美しい斑の模様を見るたびに、この世界で生きていく元気をもらう。

※写真は城桧吏くん。私の"キリン"。公式Instagramより。

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