見出し画像

佐藤雅晴展のエピローグとしての、りんご奇譚

●りんご奇譚のはじまり

水戸芸術館『佐藤雅晴 尾行ー存在の不在/不在の存在』展の図録で、2016年の原美術館での展覧会時のメールインタビューが紹介されていた。

祖母が亡くなる数日前、急に寝たと思ったら起きて、「今、りんごが冷蔵庫の中に何個もびっしりあると思ったんだけど、そんなわけないね。」と言っていたのを思い出した。

その言葉を聞いた時には、マグリットのひとつの巨大なりんごが部屋を埋め尽くしている絵(下記の写真内、上のポストカードの作品。)が思い浮かんだのだが、マグリットはこの青りんごが自画像の顔を隠す絵も描いており、「私たちが見ているものは、一方で他の事を隠してしまいます。」と言っている。

ビートルズのアップル・レコードやジョブズのアップル・コンピューター、ニュートン、原罪が思い浮かんだので調べてみると、マグリットが死ぬ1年前(1966年)に描いた、「さよなら」と書かれたりんごの絵をポール・マッカートニーが購入したことでビートルズが1968年に立ち上げた新会社名がアップル・コア(のちのアップル・レコード)になったという。経済誌ForbesのWeb版の記事には、この経緯について詳しく記述されており、ジョブズが1977年にアップルのロゴを作ったのにもビートルズからの影響もあるのでは、と書いてある。(アップルのロゴは元々ニュートンがりんごの落下を見て重力を発見するシーンの絵である。今のロゴでりんごがかじられているのは原罪を意味する、という説もあるようだ。)

そして、タルトが弘前れんが倉庫美術館の「りんご前線」展(2021年10月-2022年3月)を見てからりんごづいている話ともつながりそうである。


●この世からの"さよなら"

りんごは"意識の世界"から解放された場所においては、「ない」と同時に確かに「ある」のだ。この世(意識の世界)を去って不在になった、ということにされた存在は、"不在の存在"として「いま、ここ(無意識の世界)」に確かに在り続ける。

≪勝鬘経講讃図/遺骨は蓮弁のように軽やかだった≫

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?