リボンモデル

スポーツクラブ収益化のヒントはリクルート流「リボンモデル」にあり!

Key Questions
スポーツクラブが収益を上げるためのヒントとは?

前回の論考では「スポーツクラブが強くなるためには、絶対的に『お金』が必要」と結論付けました。ではスポーツクラブはどのようにしてお金を稼げばよいのでしょうか。

↓前回記事↓

論考の前提として、一度スポーツクラブの収益構造を言語定義します。

スポーツクラブの収益源は主に以下の6つです。その全ての事業モデルが、言葉を選ばずに言えば、選手を「売り物」として、ファンやスポンサー、その他関連企業、他クラブなどから対価を受ける、というものです。

<スポーツクラブの6大収益源>
1. 入場料収入
2. ファン収入(ファンクラブ年会費、会員制メディア購読料など)
3. 物販収入(グッズ、飲食など)
4. スポンサー収入
5. 放映権収入
6. 移籍金収入

選手というキラーコンテンツを軸に、選手や競技を観戦したいファンが集まり、彼らにリーチしたいスポンサーなどが、スポーツクラブを中心とする経済圏で消費活動に営みます。つまり、スポーツクラブの事業を定義すると、「ステークホルダーのニーズを、選手というコンテンツを触媒として繋ぎ合わせ、または、選手自体と繋ぎ合わせ、その過程で収益を上げるエコシステム型ビジネス」とも換言できます。

このように、スポーツクラブが他のエンターテインメント事業と大きく異なるのは、多くのステークホルダーが関与してエコシステムを形成し、クラブがその触媒となる点です。しかし、現状、スポーツクラブが上記のようなハブ機能を担っているケースは、まだまだ少ないように見受けられます。例えば、ファンとスポンサーを結びつけるとはいっても、スポンサー試供品を試合当日に配布したり、サービスへの利用促進のためのキャンペーンを打ったりする程度。元来の事業モデルとして、多岐にわたるステークホルダーを巻き込む誘引力のポテンシャルがありながら、現状、十分な実現には至っていません。

では、スポーツクラブはエコシステム型ビジネスをさらに推し進める上で、どのような姿を目指せばよいのでしょうか。どのようなTo-Be像を志向すれば、ステークホルダーから持続可能な価値を認められ、さらなる継続的な収益をあげられるのでしょうか。今回は、世界有数のマッチングビジネスに優れる企業をベンチマーク事例として紹介します。

ぜひスポーツクラブに参考にしていただきたい企業こそが、リクルートです。個人的にリクルートには、昨今のDeNAやミクシィ、メルカリのように、スポーツビジネス業界変革の旗頭になって欲しいと考えています。

リクルートといえば、レストラン予約の「ホットペッパー」や美容院予約の「ホットペッパービューティー」、住まい検索の「スーモ」など、生活者にとって身近なWEBサービスを数多く運営する企業です。同社が売上高1.8兆円もの大企業に成長した秘訣こそが他でもない、社会が抱える「不」を消費者と企業・事業者とのマッチングによって解消する、その実現のためにビジネスチャンスがある、という同社ならではのビジネスコンセプトです。

リクルートが言う「不」とは、「不安」「不満」「不便」など、消費者が日常で感じているネガティブな感情のこと。例えば、美容院予約のホットペッパービューティーがなかった時代、消費者(リクルートは「カスタマー」と呼ぶ)は、「美容院は営業時間内に電話しないと予約できない」「初めて行く美容院はどのようなヘアスタイルにしてくれるのか分からない」といった不を抱えていました。一方で美容院側としても(リクルートは「クライアント」と呼ぶ)、「お客さんの施術中に予約電話を受けないといけない」「電話予約を紙台帳で管理しているから予約漏れが起きてしまう」「ウォークインで来店するお客さんが多くて、人員・売上計画に見通しが立たない」といった不を抱えていました。

そこでリクルートが始めたサービスが、消費者が24時間いつでもどこでも美容院の検索・口コミチェック・予約までを一貫してできるホットペッパービューティー。そして、美容院側には、ホットペッパービューティー経由の予約の受け皿として、リアルタイムでの予約管理などが可能な「サロンボード」というITツールを売り込むことで、美容業界における買い手と売り手の不を見事同時に解消し、年間700億円もの売上収益(2019年)を誇る商圏の構築に成功しました。(※カスタマーサイドにはサービスを無料で利用させ、クライアントサイドから利用料を得るという優れたマネタイズモデルの上に成り立っていることも注目に値します)

リボンモデル

上記のようなマッチングビジネスを、リクルートでは「リボンモデル」と呼びます。リボンの左側はカスタマー(消費者)、右側がクライアント(店舗、企業)。中央で、不の解消を起点に両者が結びつくというわけです。リクルートはリボンの結び目をより大きく(=自社サービスを利用するカスタマーとクライアントの拡大)し、より結び目まで辿り着く確率を高める(カスタマーとクライアントのマッチング精度の向上)ために、様々なマーケティング施策やAIの基礎研究をしています。

ぜひリクルートの「不の解消」や「リボンモデル(マッチングモデル)」などは、スポーツクラブにも大いに参考にしていただきたいビジネスコンセプトです。では、リクルートの事例をベンチマークとして、スポーツクラブは、実際にどのような世界観を構築すればよいのでしょうか。それはまた次回に。

Conclusion
Q:スポーツクラブが収益を上げるためのヒントとは?
A:自らの事業モデルを「エコシステム型ビジネス」であると再認識し、リクルート式「不の解消」「リボンモデル」の事業コンセプトを参考にする
参考文献
杉田浩章立
『リクルートのすごい構”創”力ーアイデアを事業に仕上げる9メソッド』
(日本経済新聞出版社、2017)

↓次回記事↓


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