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山林を購入して移住する



移住先の山林を探す

日本の国土の7割近くは山林であるにもかかわらず、宅地と異なり、その売買情報はかなり限られているのが実情だ。
敷地内にあからさまに『売土地』などの掲示があればともかく、売りに出ているのかどうかすらわからない場合がほとんどであるし、たいていは持ち主が積極的に売ろうとしていない。

「とにかく山林を切り拓いて住む」のが目的で、移住先の地域に固執しないのであれば、以下のようなサイトを頼る手もある。
利用したことはないが、要望を伝えればマッチングしてくれるかもしれない。


一方、移住先のエリアが特定されているのであれば、やはり、その地域の役場に相談するのが近道だ。
移住の受け入れに力を入れている自治体であれば、かなり親身になって相談に乗ってくれるに違いない。

同時に Google maps の航空写真モードで希望のエリアを偵察して、よさげな土地を見繕うのもアリだ。


土地の持ち主を見つけて交渉する

日本全国津々浦々、土地はもれなく誰かの所有物だ。必ず持ち主がいる。
山林に移住するためには、その持ち主を探し出し、売ってもらうなり貸してもらうなりする必要がある。

持ち主は、登記情報として公開されている。
管轄の法務局窓口で登記簿謄本を請求するのが一般的(一通600円…だったかな)。
謄本には土地の番地、面積、地目、所有者の氏名と住所が記載されているが、電話番号はないので調べるか、ダイレクトに訪問することになる。
しかし、想像するに所有者のほとんどは高齢者と思われ、交渉は簡単ではなさそうだ。

小樽法務局


これまた利用したことはないが、役所まで赴かなくとも、ネットで登記情報を提供する民間の有料サービスもある。

自分の場合は、地元の役場に情報を提供してもらえた。
たまたま希望の土地の所有者が地元民だったため、役場の担当者に顔つなぎしていただき、直接交渉の上、すんなり売却していただいた。
役場が仲介してくれたことで、先方の不信感を払拭することができたようだ。

やはり、まずは役場に相談するのが手っ取り早い。


買えない土地と注意すべき土地

持ち主が判明したとしても、それが国だったり自治体だったりすると購入は難しい。
買えないことはないが、原則、区画に接している土地の所有者全員の同意が必要で、実際、これは絶望的に困難だ。

自分も国有地を購入すべく法務局と交渉し、前向きな感触を得ていたのだが、隣接する土地の所有者のダメ出しで頓挫してしまった。

また、その土地の『地目(ぢもく)』も重要である。
地目が農地であった場合、農地法21条により売買または賃借が制限されている。
どうしても農地を買いたいなら、地元の農業委員会にお伺いを立てる必要があり、たぶん、簡単には許可してもらえないだろう。
いっそ農家になるという選択肢もあるが、これはこれでかなりハードルは高い。

知人が所有する洞爺湖を臨む土地の購入を検討するも地目が農地だったという件


ほかにも、『保安林』、『市街化調整区域』など、建築物に条件がついたりそもそも構造物を建てられない土地も存在するので、役場の建設課で細かく確認するのが無難だ。


居住に適した土地とは

まず、土地の一部でも『公道』に接していること。
私道の場合、地権者と揉めると非常にややこしいことになる。
災害時の復旧作業についても、私道の場合はすべて自己負担だ。

次にインフラが確保できること。
電気は、居住が前提であれば、よほど辺ぴな場所でないかぎり電力会社が電線を敷設してくれるはず。最悪、ソーラー発電など自給自足という選択肢もある。

一方、水資源のあるなしは死活問題である。
水資源に恵まれたわが国では、どこでもあるていど地面を掘れば水が出るのだが、それがそのまま生活水として利用できるかどうかは別だ。
カナケ水(赤水)で洗濯を繰り返すと衣類が変色してしまう。
近くに沢が流れていたとしても、農業用水のための水利権が発生している場合があるから、これも役場などで事前調査が必須となる。

理想はもちろん、自治体の水道がきていることで、仮に現状きていなくても、自治体が取り決めた給水地区に引っかかっていれば、土地の起点までは自治体が敷設してくれる。いずれにせよ、要確認ということだ。

青い屋根は浄水施設。こういうものが近くにある場合、この一帯は給水地区かもしれない


見逃しがちなのが土地の植生と傾斜で、あまりに巨木が生い茂った状態では開拓が非常に困難であるし、急峻な山林での伐採作業は素人の手に負えるものではない。
さらに、傾斜地での建造物の建設は、整地や基礎工事のコストが一気に跳ね上がる。
できれば、購入決定前に土地に分け入って、できるだけ現況を確認したいところだ。


そうはいっても文明は手放せない

好き好んで人里離れた山林に住もうというのだから、世俗から隔絶されるのは覚悟の上といいたいところだが、実際のところ、現代人は文明の豊かさから決別することはできない(…と思う)。

わが国の携帯電話の人口カバー率は限りなく100%に近いとされているものの、実際は山間部で不通になる場所は多い。
ネットが通じなくても生きてはいけるが、健全な精神を保つのは難しいだろうし、大怪我や病気などの緊急事態に備えるためにも、せめて4Gのアンテナ1本でもいいからつながってほしいところだ。

docomoから支給されたレピータのおかげで屋内はアンテナバリ4だ


また、地上波TVも意外とつながらないことを忘れてはいけない。
ならばBSだけで凌ごうと思っても、立木や山に電波が遮られることもある。衛星といえども万能ではないのだ。

…という具合に、なにかと障壁の多い山林への移住ではあるが、勇気をもって踏み出してみれば、そこには素晴らしく豊かな生活があるのも事実である。

あとは、どうやって生業を維持するか。
このテーマについては、いずれまた考察しようと思う。



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