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<まえがき>コロナ発生後、いち早く自粛したイベント関連事業。緊急事態宣言下で、コンサートもライブも舞台も、全てが中止をやむなくされました。今もその余波は続き、それに代わり、youtubeやTicTocなどを利用した様々なオンラインエンタテイメントが提供されています。今回はその変化の只中いる、タレントさんにお話をお聞きしました。

芸能関連の仕事はゼロに。バイトかけもちしながら、zoomでオンラインドラマを自ら企画編集。

―どんなお仕事をされていますか。
芸能事務所に所属し、役者・脚本・MCなど色々やっています。
ドラマや舞台に出演する他、舞台の脚本・演出、イベントのMC、ラジオ番組のパーソナリティなど、芸能関連のことなら幅広く取り組んでいます。そういう風に言うと「すごーい」と驚かれますが、羨ましがられるほどではありません。事務所にも所属していますが、優先的に仕事を回してもらえるわけでもありません。自分で取ってくることもあります。決まった給与はありません。完全歩合制です。それだけじゃ食べていけないので、3つくらいバイトをかけもちしています。以前は養成所のあった大阪を拠点に活動していましたが、数年前にコンクールで脚本が評価されたこともあり、「もっと色んなことにチャレンジしてみたい」という思いで、上京してきました。今は東京と大阪、両方で活動しています。

―コロナ以前と比べて、どんな変化がありましたか。
2か月間かけて準備した舞台公演が、突然中止に…。
4月の舞台に向けて、稽古がスタートしたのは2月中旬ぐらい。当時はクルーズ船内の感染が騒がれていましたが、あまり気にしていませんでした。その後、3月上旬ぐらいに、徐々に都内で感染者が出るようになりましたが、それでも「稽古場で誰か感染してたら、みんなやばいよね」なんて冗談を言う余裕がありました。それが3月中旬、稽古場にしていた区の施設が突然閉鎖に…代わりに見つけたのが劇場です。本当なら公演スケジュールが埋まっており空いてるはずがないのですが、「どこの劇団も公演を中止し、キャンセルが出ている」ということでした。皮肉なことですが、藁にもすがる思いで稽古を続けました。その後、色々とありましたが、3月下旬、少し感染が一段落した気配があったことから「これはいけるかも」という雰囲気に。みんなでマスクを集めたり、消毒液を手配したり、開催に向けて頑張りました。主宰者から突然「中止」を言い渡されたのは、通し稽古をやった翌日です。世間体を考えたら止むを得ないことですが、やっぱりそれに向かって一生懸命積み上げてきたので悔しかったです。中には泣いている人もいました。

zoomを使ったオンラインドラマの脚本・演出にチャレンジ。
4月に入り、芸能関連の仕事が一切なくなってからはアルバイトに精を出しました。むしろ、いつもより忙しかったくらいです。4月末、マネージャーから連絡が来て「オンラインドラマを作ってみないか」と声をかけられました。私が以前、演者としてではなく、劇団の脚本・演出も手掛けていたこと、それとオリジナル脚本でコンクールを受賞していたことを見越しての依頼でした。事務所としても、自粛期間で時間のあるタレントたちに何か発信させたかったのだと思います。とりあえず、楽しそうなので引き受けましたが、考えてみたら私は映像をやったことがありません。「どうやって撮影とか編集とかすればいいんだろ…っていうか、zoomって何だろう…」不安も多かったですが、とにかく脚本を書いて、撮影して、編集して、悩む間もなく、全ての工程を10日間で追えました。作り込みは甘いかもしれないけど、それも含めた「ファストクリエイティブ」です。発表はYOUTUBEで行いましたが、意外と好評で、そこから第2回、第3回と続いています。最初は手探りでしたが、今はだいぶ慣れてきました。「こういうショット(角度の映像)があったらいいな」など、これまでになかった視点もできるようになって、すごく勉強になっています。

―これから業界(世界)は、どう変わっていくと思いますか。
復活してほしい、けど“元通り”というのは難しいですよね。
振り返って思えば、劇場とかライブ会場って「密」ですよね。むしろ、そういうのを売りにしているところがあったと思います。仮にこの後、コロナが終息したとしても同じような状況に戻れるんでしょうか。「いや、やっぱりリアルが一番でしょ」とこだわる人もいますが、私は正直、難しいと思います。それほど「密」に強い思い入れもありません。世の中が変わっていくのはしょうがないし、できる範囲でやれることをやればいいって、割にクールに受け止めています。むしろ、それよりも、自分の世界を表現できる場があるかどうかということの方が重要です。どこの世界でも言えることだと思いますが、自分の作りたいものを自分で作るというのは、とても贅沢なことです。私は幸運なことに、そういう場を与えてもらっています。以前は舞台、今はオンラインドラマ。表現手段はそんなに気にせず、自分なりのモノ作りができるかどうか、今後もそこにこだわってやっていけたらなと思います。

「お金を稼ぐ」ことにも、こだわってみたいです。
舞台をやってもほとんどお金になりません。稽古を積み重ねて、いい芝居をして、たくさんの人に来てもらえれば売上は上がりますが、それでも費やした時間・労力に見合うかというと「うーん…」って感じです。それでもやってしまうのは、そこに恐ろしいほど充実感・高揚感があるからです。お金が欲しくて舞台をやってる人なんて多分、いないと思います。私も以前は、自分の好きなことをできているのだから、お金にならなくてもいい。そういう風に考えていました。でも、年齢的なことも考えたら、そうも言ってられません。自分が作ったもので、どうしたらお金を得ることができるか。実は4月の公演では、そういうことを学ぶために、チケットの料金設定から販促、コスト管理などすべて自主的に管理していました。最後に成果を出す場を奪われたのは悔しかったですが、学ぶところも多かったです。今後はモノ作りだけでなく、その経験を活かして、稼ぐという点でも色々とチャレンジしていきたいです。エンタメじゃなくて、新規事業のビジネスとかでもいいから(笑)。(Mさん/タレント)

マスクの向こう側では取材対象者を募集しています。
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masukunomukougawa-2020@yahoo.co.jp
コロナ前後で大きく世界は変わると思います。1年後、5年後、10年後、あの時、何があったのか」をしっかり振り返ることができるように書き残していきたいと考えています。フォローしてもらえるとすごく嬉しいです。twitterもやっています。

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