「彼の名は殺人鬼"カオナシ"です」
カフェで、スーツを着た女が泣きながら電話している。
テーブルの上に手帳を開いてなにやら書き込んでいるので、仕事の電話か。相当詰められている。可哀想に…などと思っていたら、不意に彼女の向かいに男が座った。
「どうして泣いているんだい?」
電話中なことなどお構いなく、男は女に問いかける。女は怪訝な顔で人を呼ぼうとしたようだが…
「落ち着いて。僕は君の助けになりたいんだ」
男は女の唇に指を当て、続けて小声でいくつかの言葉を紡ぐ。そのうちに女は大人しくなった。
「さあ、行こう」「はい」
二人は手を取り合い、店を出て行った。
「よし、予定通りだな」
呟き、僕は冷めたコーヒーをすする。
カラン
そして店に誰かが入ってきて、僕の隣で勉強中の男の向かいに座った。
「ねぇ、なに読んでるの?」
僕はそちらを確認する。
怪訝な顔をしている隣の男の向かい側。
その女性は、今しがたナンパ野郎に連れていかれた女性とそっくりだった。
【続く】
最初の2行だけノンフィクションです。
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