装震拳士グラライザー_設定集_2_

ウェイクアップ・クロノス Part14 #刻命クロノ

刻命部隊クロノソルジャー
第1話「ウェイクアップ・クロノス」

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前回のあらすじ
 ここは常夜の呪いがかけられた日本。クロノレッドこと鳥居夏彦が命を賭して守った少年は、暁 一希(イッキ)という。
 怪人ヤミヨ幹部の一斉攻撃により、全滅に危機に陥ったクロノソルジャー。しかしその時、イッキが鳥井夏彦から託された力でクロノレッドへと変身。仲間たちを助け、戦場に再度五人の戦士が並び立った。

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「イッキに負けんなよお前ら! 行くぜ!」

「上等だ」「うん、行こう!」「レッツゴー!」

 そして彼らは声を揃え、ありったけの声で叫ぶのだった。

「「ウェイクアップ・クロノス!」」

 ──天国まで、届くように。

 陽光のような輝きが、僕らの周囲で渦を巻く。それは常夜を切り裂き、ヤミヨたちの目を灼いて、巨大テーカクの動きすらも止めてみせるほどの強烈なる光の柱となって顕現する。

 その中から、僕らは確かな足取りで歩み出た。色違いのスーツに身を包み、揃いのブーツで大地を踏みしめ、僕らは胸を張って立ち並ぶ。

「よーし。景気付けにアレやっとくか」

 ハルさん=クロノグリーンが不敵に言った。彼は仲間たちに目配せすると、大きく息を吸い込んでから声を張り上げた。

「クロノグリーン!」

 そして、それに続くように。

「クロノブルー!」メガネさんが。

「クロノイエロー!」ノゾミさんが。

「クロノピンク!」カオルさんが、自らのコードネームを高らかに宣言する。

 残るは僕だけ。イエローとピンクがちらりとこちらを見た。僕は小さく頷いて……夏彦さんから受け継いだその名を、叫ぶ!

「……クロノレッド!」

 そして僕の言葉を継ぐように、グリーンがヤミヨに言い放つ。

「さぁ、その命に刻み込め! ──刻命戦隊!!」

「「「クロノソルジャー!」」」

 光の柱が、爆ぜて散る。

 余剰エネルギーが爆発を起こし、夜の街を真昼の如く照らしてみせた。

 その光を浴びながら、夏彦さんから託されたものと、自分自身の決意を胸に抱き──僕はヤミヨの幹部たちを指さして、啖呵を切る。

「僕らは……暁を取り戻す!」

「ハッ、上等だ」

 それに獰猛な笑みで応えたのは、女幹部ビジョウだった。

「今度も泣かしてやる! やっちまいな!」

「ヌェイッ!」

「行こう、ベゼル」

「ええ、行くわよ、ダイヤル」

 怪人たちが地を蹴った。そしてほぼ同時に、僕らも地を蹴る。先人はクロノグリーン、次鋒はクロノブルー。手に手に武器を顕現させ、両陣営はちょうど中間地点で激突した!

「仕切り直しだ、青チビ!」

「…………!」

 ロケット頭突きを繰り出したダイヤルを、クロノグリーンが受け止める。その横でベゼルが錐揉み回転と共に繰り出した武器たちを、クロノブルーの双剣が捌いた。

「お前はこっちだ、ベゼル!」

「あらあら、ふふっ……」

 イエロー、ピンク、そして僕はそれを少し遅れて追いかける。向かう先には双子と巨漢の姿。イエローが大剣を担ぎ、僕らに声を投げた。

「イッキくん、グリーンのサポートお願い! ピンクはブルーを!」

「はい!」「はーい!」

 僕らの返事を聞き届けると、イエローは大きく踏み込んだ。その眼前には石柱槌を振り下ろすユーカクの姿。

 両者の力が、真っ向からぶつかり合う!

「ユーカク、力比べだよ!」

「上等ゥッ!」

 ──先ほどの病院前と比べると、両陣営の戦力差は幾分か縮まっていた。

 リューズは斃れ、ビジョウはクロノモービルとの“相撲”で両腕を失って戦闘には不参加。更に、巨大テーカクの相手はクロノモービル・ロボがこなしてくれているおかげで、僕らは幹部級と戦う二人の援護に向かえるのだ。

 僕はダイヤルと戦うグリーンに駆け寄りながら、バイザーに浮かんだ武器名を読み上げた。

「クロノメタル・ナックル!」

 呼応して、虚空に革ジャンが生成される。それはそのまま僕の右腕にぐにゃりと巻きついて、肩から指先までを覆うようなアーマー・ガントレットへと形を変える。

「ハルさん!」

「きたか。よし、適当に合わせろ!」

「え、あ、はいっ!」

 ダイヤルが繰り出す刃物の数々を、ハルさんは掌で往なすように捌いていく。それに合わせようと間合いを詰めた僕であったが──

 眼前に、[Asstist]の文字が浮かぶ。

「えっ」

 そのまま、僕は……というか僕のスーツは、ダイヤルの武器やらなんやら全てひっくるめて、右腕のガントレットで豪快に殴り飛ばした。

「わっ!?」「どあっ!?」

 僕が繰り出した拳は、グリーンの拳と同時に着弾。武器の束で作ったシールドをぶち抜き、ダイヤルの本体にヒットする!

「……っ!?」

 ダイヤルの姿が宙を舞う中、バランスを崩したグリーンは慌てて体勢を立て直す。そしてグリーンと僕はダイヤルに向かって手を伸ばすと、ほぼ同時に叫んだ。

「っとと……クロノバスター!」

「クロノメタル・バスター!」

 グリーンの手先に即座に銃が生成され、僕の手先のガントレットがぐにゃりと歪み、銃の形に変化する。瞠目したダイヤルに向かい、二つの銃口は容赦なく光線を連射する!

「ぐ……ッ!」

 ダイヤルの身体で光線が爆ぜる。青髪の少年はそのまま、クロノブルーとクロノピンクの間を抜けて吹っ飛んでいく。そしてそのまま、彼らが戦う赤髪の少女・ベゼルに激突した!

「キャッ!?」

「うおっ……!? おい、危ないだろ!」

「す、すみません……」

「わりーわりー」

 もみ合いながら転がっていく魔性の双子を視界に入れつつ、ブルーが抗議の声をあげる。僕らは謝りつつ、二人の傍に駆け寄った。

「っ……ごめんよ、ベゼル」

「ええ、ええ、良いのよダイヤル。大丈夫?」

 ベゼルとダイヤルは互いに手を取り立ち上がる。僕らは四人並んで、それぞれの手首を叩く。

 ガコンと響く、歯車の音。そして、僕らの武器にエネルギーが集まっていくのを感じる。銃口と切っ先を双子に向けて、ハルさんが声を上げた。

「とどめだ!」

「「クロノブレイク!」」

 僕らの武器から、4色の輝きが迸る!

「!?」「しまっ──」

 双子が瞠目し、声をあげる。経路上の瓦礫を消滅させながら、螺旋軌道の光の奔流は二人に押し寄せる。と、その時。

 そこに、ユーカクの石柱槌が割り込んだ。

「ヌゥァィッ!!!」

 ユーカクの咆哮と共に、石臼を挽くような音があたりに響き渡る!

「おいおいマジかよ!?」

「ごめん、取り逃した!」

 ハルさんが声をあげる中、遅れて駆けつけたのはクロノイエローだ。

「ンンン……ンウンンッ……!!!」

 僕ら5人の見る前で、ユーカクはその白磁の如き肉体に血管を浮かべながら、全身全霊で槌を押して──

「ンンンンンアアアアアイッ!!!!!!」

 次の瞬間、爆音があたりを揺らした。

「うわっ!?」

 反射的にガードするように腕を構える僕らの視界の先、立ち込める土煙の向こうで、その巨漢はなおも立って……いや、笑っていた。

「がはは……やりおるではないか……!」

「クロノブレイクを……ぶち抜いたってのか……!?」

 ハルさんが戦慄の声をあげる。そう。ユーカクは、僕らの渾身の一撃を相殺したのだ。……愛用の槌と右腕を、代償に。

「ゆ、ユーカク……?」

「おお……流石に、効いたわ……」

 ダイヤルのか細い声に応えながら、ユーカクはズシリと膝をついた。その右の肩口からボタボタと血(ちなみに青色だ)が零れ落ちる。それを僕らが目にした次の瞬間だった。

「はぁ……ここまでだな」

 そんな気だるげな声は、僕らの背後から聞こえた。

「「!?」」

 僕らは慌てて跳び退く。振り返ったそこにいたのは、両腕を失った鬼──女幹部ビジョウだった。

 僕の背中を冷や汗が伝う。いつの間に、僕らの後ろにいたんだろう。

 警戒する僕らを一瞥すらせず、ビジョウはまるで散歩でもするような足取りでテーカクのほうへと歩いていく。

「おいテーカク、元に戻れ。ユーカクを運んでやんな」

「ハッ!」

 クロノモービル・ロボと取っ組み合いをしていた巨大テーカクは、そう答えると同時に全身から黒い靄を出しながらシュルシュルと萎んでいく。そうして瞬く間に、ビジョウの傍に等身大のテーカクが現れた。

「おお、おお、ユーカク! 息災か!?」

「息災なわけあるか……肩を貸せ……」

「……ま、そういうわけだから。また来るよ、クロノソルジャー」

 気楽な声でそう言って、ビジョウたちの姿が闇の靄に包まれる。

「あっ……ま、待て!」

 僕らが伸ばした手は、それに届くわけもなく。

 怪人たちの姿は掻き消えて、今日の戦いは終わりを迎えた。

(つづく)


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