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ウェイクアップ・クロノス Part5  #刻命クロノ

刻命部隊クロノソルジャー
第1話「ウェイクアップ・クロノス」

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前回のあらすじ
 ここは常夜の呪いがかけられた日本。クロノレッドこと鳥居夏彦が命を賭して守った少年は、名を暁 一希(イッキ)という。
 目を覚ましたイッキの目の前に現れたのは、刻命戦隊クロノソルジャーという若者たちだった。夏彦の死を巡りヒリつく一同であったが、突如として彼らのいる病院が爆撃されて──?

- 5 -

'--同時刻
 --東京都渋谷区 総合病院 駐車場'

 満月の下、病院が燃えていた。

 僕らの眼前、病院の駐車場では、人型の“影”の軍勢が隊列を組んでいる。それらは病院を粉微塵にせよとばかりに、手にした銃から光線を放っていた。

 ガラスが爆ぜ散り、壁が破れ、そこここから火の手が上がる。明々と燃える炎が、宵闇の中逃げ惑う人々を照らしていた。

「ンギャハハハ! いいねいいね!」

 "影"たちの先頭で哄笑をあげるのは、水晶頭の怪人。間違いない。あれは。

「……リューズ……!」

 その名を絞り出す僕の視線の先、リューズは手にしたステッキを指揮棒の如く振り上げ──

 その時、僕のそばを、風が通り抜けた。

「ちょ、ハル!?」

 遅れて届いたのはノゾミさんの声。そう、飛び出したのは、ハルさんだった。

「てめぇリューズ! 死ね!」

「おっと。危ないなぁ」

 ハルさんの飛び蹴りを、リューズはひらりと避けてみせる。ハルさんは着地と同時に追撃。ボクシングのようなワンツーパンチからの回し蹴り、さらに拳の乱打。

 炎に照らされる、嵐のような攻撃。しかしリューズは夜の闇の全てを見通すかの如く全てを避け、往なし、捌く。

「おやおやおや? なんだか気合が入ってるねぇクロノグリーン」

「るせぇ!」

 怒鳴り返し、ハルさんは手首の腕時計(僕の腕にあるものと同じだ)にタッチし、叫ぶ。

「クロノバスター!」

 その声に応えるように、ハルさんの手元に光が集まる。瞬く間に実体化したそれは──

「……銃!?」

 僕が声をあげた直後、轟音が響いた。ハルさんが手にした白銀の銃から光線が迸り、宵闇を切り裂きリューズを襲う!

「うわっとと。危ないなぁもう」

 リューズはそれをステッキで弾きつつ、ひらりとバックステップした。そしてそれをカバーするように、“影”の軍勢がハルさんの前に立ちはだかる。

「ちっ……!」

「へへーん。お前ら、やっちゃえー!」

 "影"たちは手にした剣を振り上げ、ハルさんへと襲い掛かる。囲まれて苦戦するその姿を見て、僕の後ろからため息が聞こえた。

「まったく……迂闊に突っ走るからだ。行くぞ、桜井、柚木」

「ほいほーい!」

「イッキくんはそこにいてね!」

 メガネさん(?)の言葉にカオルさんが頷いて、駆け出す。僕の横にいたノゾミさんは、僕の肩をポンと叩いて微笑んだ。そして自分の腕時計にタッチし、凛とした声で宣言する。

「クロノセイバー!」

 その声に応えるように、ノゾミさんが構えた両手に光が集まる。ハルさんの時と同じく瞬く間に実体化したそれは、時計の針のような形の大剣だった。

「け、剣!?」

「私たちが、絶対守るよ」

 ノゾミさんは剣を手に、再度僕に向かって微笑みかけると走り出した。

「クロノダガー!」

「クロノレイピア!」

 聞こえた声に視線を遣ると、先に駆け出したカオルさんたちもまたその手に武器を顕現させていた。メガネさんは2本のナイフ。カオルさんはフェンシングに使うような細身の剣。

 ノゾミさんと同様に時計の針に似た武器を構え、彼らは"影"の軍勢に斬り込んだ。

「……え? なにこれ?」

 ノゾミさんたちは、"影"を一刀のもとに斬り伏せてゆく。僕はユーリを抱きかかえたまま、そんな乱戦をぽかんと見つめていた。

「え?」

 怪人の軍勢、突然実体化した銃や剣、やたらと身体能力の高い4人──僕の頭に沢山の疑問符が浮かぶ。

「ふふふ。驚いているな、少年」

 そんな僕を見て誇らしげに笑うのは、やはりモヨコちゃんだった。どうやら彼女は非戦闘員らしい。「ふっふっふ」とわざとらしく笑う彼女の目は、夜の闇の中でも爛々と輝いていた。

「あれもまた、この天才モヨコ様の発明だ! さっき言ったように、この常夜には魔力が漂っている。それを変換し、身体強化や物質化に活用する! それこそがクロノスバンドの力なのだ!」

「クロノスバンド……身体強化……?」

──それ持って、妹と逃げろ。それがありゃ逃げられる

 頭を過ぎるのは夏彦さんの言葉。

「……もしかして、僕があのビルから逃げ出せたのは」

「察しが良いな! そう、夏彦に託されたそのバンドによって一時的に身体能力を高めたわけだ。今キてるのはその反動だな! 要はキツめの筋肉痛だ」

 モヨコちゃんはニヤリと笑い、戦う4人の男女を指さす。そこでは、ノゾミさんたちが"影"の軍勢をすっかり全滅させていた。

「刻命戦隊クロノソルジャーはあの怪人たち・ヤミヨと、日夜命懸けで戦う若者たちなのだ! そして! 刮目せよ! 戦うための力は、銃と剣だけではないぞ!」

 視線の先では、ハルさんたちが並んでリューズに武器を突きつけていた。

「あとはてめーだけだ、リューズ!」

「あららら。いつもより多めに暗鬼を連れてきたんだけどなぁ。ホント気合入ってるね?」

 "暗鬼"とは先程斬り伏せられていた"影"のことだろう。

「ナメやがって……」

 言葉とは裏腹に余裕そうなリューズの様子に、ハルさんは大きく舌打ちする。そして、並び立つノゾミさんたちを一瞥して声をあげた。

「行くぜ、お前ら!」

 ハルさんは言葉と共に、クロノスバンド側面のダイヤル部分に手を当てる。がちり、となにかが噛み合う音が、少し離れた僕のところまで聞こえてきた。

「は。言われずともやるさ」

「夏彦くんの仇、取ろう」

「いけいけどんどーん!」

 他の3名も同様に構え、がちりがちりと機械音が鳴り響き──4人は同時に、叫ぶ!

「「ウェイクアップ・クロノス!」」

 瞬間、4人の姿が光に包まれた。

(つづく)


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