手裏剣戦隊ニンニンジャー vs ニンジャスレイヤー 〜超絶! ドラゴンスリケン忍法帖!〜 (前編)【忍殺×ニンニンジャー二次創作】
(作者註)
この記事は、本作におけるニンニンジャーサイドを描いた作品です。
ニンジャスレイヤーサイドをこのツイート群で読めます。
両方まとめて読める完全版はこちらです。
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「へぇ?忍者を殺す者?彼が?」
十六夜九衛門は、水鏡に映ったニンジャを見ながら問うた。その男は赤黒い忍者装束を身に纏っており、「忍」「殺」と漢字が掘られた金属製のマスクで口元を覆っている。
特筆すべきは、水鏡越しですら迸る異様な殺気……人の身を捨てた九衛門すら、背筋が寒くなるほどの。
「はい、九衛門さん」
水鏡を睨む九衛門に、ひとりの女が答えた。
狐の面を被った女忍者である。薔薇色の、浴衣にも似た装束に身を包んだその女は、ローズフォクシーと名乗った。"ネオサイタマ"とかいう、九衛門の知らぬ地から来た──異界の忍者である。
「それは、ニンジャスレイヤー」
ローズフォクシーは右腕を──肘から先が失われたその傷口をさすりながら、恨めしそうにその名を呼んだ。
「忍者でありながら数多の忍者を殺してきた、我々の宿敵。……私の右腕も、この者が」
「へぇ。忍者を殺す、忍者」
九衛門は笑った。「はい」と相槌し、ローズフォクシーは言葉を続けた。
「……そして九衛門さん。あなたの敵も、忍者のはず」
ジャポン。九衛門が振り返ったのに合わせ、彼が手にした瓢箪から水音が響いた。
「何故、それを?」
「調べました。恩義に、報いるべく」
「……なるほど」
ジャポン、ジャポン。九衛門は手にした瓢箪を軽く振る。
「ということは、僕の目的も?」
「はい。力になれます」
九衛門は小首を傾げて笑うと、ローズフォクシーにその手の小槌を向けた。
「良いだろう、ローズフォクシー。お前の命の恩人、十六夜九衛門が命ずる」
「ハッ」
ローズフォクシーは厳かに頭を垂れる。九衛門は朗々と宣言した。
「奴らを……ニンニンジャーを、始末しろ」
◆◆◆
手裏剣戦隊ニンニンジャー vs ニンジャスレイヤー
〜 超絶! ドラゴンスリケン忍法帖! 〜
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「ジッパ!」「ジッパ!」
「おっと……! おりゃっ!」
繰り出される押し寄せるヒトカラゲたちの槍をバク転回避し、アカニンジャー・伊賀崎 天晴(いがさき たかはる)は、手にした刀──忍者一番刀で妖怪たちを横薙ぎに切り裂いた。
天晴たちがニンニンジャーに変身してから、ほんの数分。はじめ2、30体ほどもいたヒトカラゲは瞬く間にその数を減らし、もはや片手で数えられるほどまで減っている。怒涛の勢いで暴れる仲間たちを見て、アカニンジャーがマスクの下で笑ったその時──乱戦の最中から飛び出す影ひとつ。
「喰らえーッ!」「おぉっとォ!」
繰り出された一撃を、アカニンジャーは忍者一番刀で受け止めた。返す刀で袈裟斬りに振るった刀はひらりと回避されてしまう。ふわりと跳んだそいつは数メートル離れた所に着地し、手にした槍を地面に突き立てた。
「このノッペラボウの不意打ちを受け止めるとは、やりおるな」
そいつは、マネキンのような男──というか、マネキンだった。全裸のマネキンが、大きな槍を持って、仁王立ちしている。
「タカ兄!」「お兄ちゃん!」「タカちゃん!」「タカちゃん!」
アカニンジャーの側に、ヒトカラゲを全滅させた仲間たちが集まってきた。刀を構えた5人の忍者を前に、ノッペラボウが槍を引き抜く。
「あの数のヒトカラゲを一掃するとは、貴様らもやりおるな」
頭上でくるくると槍を回す全裸のマネキン……ノッペラボウを見て、キニンジャー・凪とシロニンジャー・風花がほぼ同時に呟いた。
「うわ、なにこいつ……」「キモ……」
「失敬な奴らめ! やってやるァーッ!」
ニンニンジャーとノッペラボウは、ほぼ同時に地を蹴った。ニンニンジャー達の息のあった連携攻撃を、ノッペラボウは手にした槍で堅実に捌いていく。
一進一退の攻防が続く──その時だった。
「イヤーッ!」
戦場を引き裂くような、壮絶な叫び声が辺りに響いた。同時に、高速で飛び来た手裏剣が、ニンニンジャーの5人に突き刺さる!
「「「────っ!?」」」
凄まじい衝撃がニンニンジャーたちの全身を貫き、彼らは口々に悲鳴をあげながら吹き飛ぶ。「な、なんだ……!?」驚いたのはノッペラボウも同様で、彼は身構え、振り返った。
その視線の先にあったのは──宙に浮いた、水鏡。
──ガシャリ。ガシャリ。ズシャリ。
その奥から、足音。
「なん……だ、今の……!?」
「凄まじい威力だ……!」
キニンジャーが、アオニンジャーが、口々に呻く。その声すらも踏み潰すように、その足音は近づいてくる。
──ガシャリ。ズシャリ。ガシャリ。
「ぐっ……」
忍者一番刀を杖代わりに、アカニンジャーは辛うじて起き上がり、水鏡を睨んだ。揺らめく水の奥に、ひとつの影が浮かび上がる。
──ガシャリ。ガシャリ……
水鏡からズルリと姿を現れしたのは、血のように赤黒い装束を身に纏った忍者だった。口元を覆う金属製のマスクに書かれた「忍」「殺」の文字が、陽の光を受けて怪しく輝く。
その忍者はゆっくりと歩きながら、ニンニンジャーに向かって口を開いた。
「このくだらぬ妖怪をけしかけたのは、オヌシらか」
その手には、首だけとなったヒトカラゲが握られている。
「……ヒトカラゲの……首?」
呟いたアカニンジャーに、赤黒装束の忍者は壮絶な殺意の籠もった視線を向ける。
そして、胸元で掌を合わせ、頭を垂れる。
「どうも、初めまして。ニンジャスレイヤーです」
そして地獄の底から響くような声で、言い放った。
「──忍者、殺すべし」
◆◆◆
ニンジャスレイヤーと名乗った赤黒いニンジャの強さは、桁違いであった。それは過去にニンニンジャーを圧倒した蛾眉雷蔵をすら凌ぐ、超常的な強さである。
その鬼神の如き戦いを水鏡越しに観戦しながら、九衛門は哄笑した。
「すごいなこれは! 想像以上だ!」
背後に佇むローズフォクシーからは「ありがとうございます!」と返事が返ってきた。助け出した時からそうだが、なかなかに礼儀正しい女だ。ローズフォクシーは九衛門に並び立つと、現状の説明をはじめた。
「今、奴は我が幻術にかかっており、ノッペラボウのことをモータルだと思っています」
「モータル?」
聞き覚えのない言葉に、九衛門は首をかしげる。
「はい。普通の……忍者ではない人間のことです。ニンジャスレイヤーはなぜか、モータルを虐げる忍者を優先的に殺します」
「なるほど。それでその幻影か」「はい。これでニンジャスレイヤーは止まりません。この5人を、殺すまで」
水鏡の向こうでは、ニンジャスレイヤーの圧倒的な攻撃力によって、早くもシロニンジャーとモモニンジャーは戦闘不能、アオニンジャーとキニンジャーも限界近くまで追い込まれ、変身が強制解除された。
『なんだこいつ、めちゃくちゃ強い!』
『not easyってレベルじゃないな……!』
口々に言うキとアオをかばうように、アカニンジャーがニンジャスレイヤーの前に立ちはだかる。その腕には……強化ブレスレット、超絶勝負チェンジャー!
『くっそ……行くぞ、おっちゃん!』『おうよ!』
『イヤーッ!』
超絶変身を遂げたアカニンジャーと、ニンジャスレイヤー。両者の拳が激突し、地面にクモの巣状のひび割れが生じる。次いで繰り広げられる極至近距離での応酬により、水鏡の映像が乱れるほどの衝撃波が発生する。
しばし続いた乱打戦を制したのは──ニンジャスレイヤー!
『イイイイヤァァァァーッ!』
『っぐあーっ!』
ゼロ距離での正拳突きが直撃し、超絶アカニンジャーは吹き飛んだ。限界を迎えたことで強制的に変身が解除され、他のメンバー同様地面に転がった。
『ガッ……くっそ……!』
地に伏したニンニンジャーを、ニンジャスレイヤーが見下ろす。その身体には傷ひとつ付いていない。圧倒的だ。
「フフフ……いいぞ……さぁ殺せ、ニンジャスレイヤー!」
九衛門が哄笑する。その後ろでローズフォクシーが複雑な表情を浮かべていることには気付いていないようだった。
『ニンジャ……殺すべし』
ニンジャスレイヤーは呟き、なおも起き上がろうとするアカニンジャー・伊賀崎天晴の元へと歩み寄り、拳を振り上げ──
『……………………』
──その拳を、降ろした。
「なっ……なぜだ!? なぜ殺さない!?」
九衛門の叫びも虚しく、ニンジャスレイヤーは踵を返すと、いずこかへと姿を消した。
【後編へ続く】
この作品は、ニンジャスレイヤーと手裏剣戦隊ニンニンジャーのクロスオーバーファンフィック小説です。ダイハードテイルズや東映をはじめとした各企業とは一切関係がありません。
また、本記事は2019年度ニンジャスレイヤー222への応募作ではありません。
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