【習作】いつもの飯と、いつもの人たち(小説)

「こんにちわー」

「いらっしゃいませ……お？　ヒナタちゃんだ。今日は早いね？」

「はい。塾の先生が風邪引いちゃって」

「おお、そりゃ大変だな……」

「このご時世に風邪たぁ、ちょっと怖いねぇ」

「あ、徳さん。こんにちは」

「はいこんにちは。ヒナタちゃん今日も別嬪さんだねぇ」

「え、そ、そうですか……？」

「徳さんそれ一歩間違うとセクハラだからな」

「間違わないからだいじょーぶだよぉ」

「はいはい……あ、ヒナタちゃん、カウンターでいいか？」

「あ、いえ。今日はテイクアウトで──」

「こんっちゃー！　いつものー！」

「きゃっ！？」

「っどあっ！？　おいこらチビすけ！　ドアは静かに開けろィ！」

「にゃはは！　すまんすまん！　あまりに腹が減っててな！」

「いや博士、それなんの理由の説明にもなってないッスからね……」

「ったく……とりあえずふたりとも空いてる席に座ってくれ。いつものでいいんだな？」

「おうよー！　ご飯大盛りな！　……って、あれ、いつものお姉さんだ！　今日は早いね？」

「こんにちは。ちょっと、予定が空いちゃってね」

「そっかー！　いつも私らの帰り際くらいに来るから、なんか先にいるのが新鮮だな！」

「あはは、確かにそうかも。いつもこの時間なの？」

「そうだな！」

「私ら、ちょうどひと仕事終わるのがこの時間なんスよ。お姉さんはいつも塾帰りでしたっけ？」

「うん、そうなんだよ──」

「ん、あれ？　ヒナタちゃんたち、もしかしてお互いに名前知らない？」

「え？　あ、はい。実は……」

「確かに、なんか"いつものお姉さん"って呼んでるな！」

「"いつものJK"って感じッスね」

「あはは。私も、"いつもの二人組"って呼んでるや

「ほー。まぁ店の常連同士ってのはそんなもんなのかなぁ」

「んー、どうなんですかね？　……っていうか、徳さん以外の常連さん、名前知らないかも」

「えー？　この店、他に常連さんなんているのかい？」

「おい徳さん、ラーメンの唐辛子倍にすんぞ」

「おお、顔が怖い」

「私は他にも何人か知ってるぞ！　おっちゃんばっかだけどな！」

「お客さんの年齢層高いッスよねー。だからこそお姉さんは目立つっていうか。ジョシコーセーが中華料理屋に毎日通うって大丈夫なんスか？」

「あ、えーと……その……」

「はいはい、いいから喧しいの二人は席に着けー」

「ちょっ……私も喧しいの認定ッスか！？」

「片方がふたり分だからとばっちりだな。……さてと改めてヒナタちゃん、今日はテイクアウトだって？」

「あ、はい。できます？」

「汁物と麺類以外ならイケるぜ」

「よかった。じゃあ──」

「すんませーん、4人なんすけどー」

「お、いらっしゃい、ちょいと待ってねー」

「あ、いいですよ！　先にお客さん通しちゃってください！」

「そうか？　悪いな……んじゃえーっと。あー、そこの女子ふたり、カウンターに移動してくんねーか？」

「ほいさ！」

「了解ッスー！」

「すまんな。んで、4名様どうぞー！」

「あざーっす！　お姉さんたちもありがとうございます！」

「なんのなんの。狭い店だから仕方ないさ！」

「悪かったな狭くて」

「はっはっは。さてと、混んできたし僕はそろそろ行こうかな」

「あーい。徳さん1240円ね」

「カウンターに置いとくよ。あ、お釣りでヒナタちゃんに小籠包つけてあげて」

「えっ！？　そんな、悪いですよ！」

「なんのなんの。テイクアウトってことは、今日は居るんだろ、お母さん」

「は、はい……！」

「ここの小籠包は美味いんだ。是非食わせてやってくれ」

「あ、ありがとうございます！」

「へー、たまにはいいとこあるじゃん徳さん」

「へっへっへ。ヒナタちゃんは孫みたいなもんだからな！　んじゃまた来るよ！」

「へーい毎度ー」

「徳さんまたなー！」

「おやすみなさーい」

「すんませーん！　注文いっすかー？」

「あ、わりー、ちょい待ってな！　で、ヒナタちゃん注文は？」

「あ、はい！　えっとじゃあ、回鍋肉と……春巻きと、空芯菜で」

「おっけぃ。二人で食べる？　三人？」

「弟もいるので、三人です」

「了解だ。カウンター座って待ってな。ほい次、テーブルのニイちゃんたち。順に言ってってくれー」

「えっと、俺坦々麺！」

「俺もー！」

「棒棒鶏定食、ご飯大盛り！」

「僕はこの小籠包セットを」

「あ、あと生4つ！」

「へーい。順に作るから少々お待ちくださーい！」

「おい夏彦、修羅の門の17巻がないぞ？」

「あん？　誰か貸し出し中だっけな……」

「あ、修羅の門、私が借りてます」

「なにぃっ！？　お姉さん修羅の門読むのか！？」

「黒髪清楚キャラなのにギャップヤバいッスね！？」

「そうかなぁ？　ああいうの好きだよー」

「え、お姉さんたち修羅の門好きなんスか？」

「え、あ、はい。そうなんですよー」

「ここだとついつい読んじゃうんだよなー！」

「へー。俺らもよく読んでて！　な！」

「そ、そうそう！　よかったらこっちきて語り合い──」

「はーい激辛坦々麺お待ちどーさーん」

「うわめちゃくちゃ辛い匂いする！？」

「人の店でナンパするほどエネルギー有り余ってるみたいだから辛味足しといたわ。残したらぶっ飛ばすからな」

「は、はい……すみません……」

「顔、怖っ……」

「君らの自業自得でしょ」

「そうだそうだ。巻き添え食らうこっちの身にもなれよ」

「はは、そっちの友達は常識人だな。ほい、生4つ」

「こんにちはー。ふたりなんですけど」

「いらっしゃいませー！　カウンターどうぞー！」

「おい夏彦、こっちのはまだかー！？」

「もうできるからちょい待ちな。ヒナタちゃんも」

「はい、ありがとうございます！ ……あ、そういえば店長さんの名前も今初めて聞いたかも」

「ん？　あー、確かにそうかもな。夏彦ってんだ。ついでにあっちのかしまし娘は、小さい方がモヨコでモサいほうがミカな」

「モヨコちゃんに、ミカさんか。私はヒナタ。よろしくね」

「おうよ！　よろしくな！」

「さってと……今日も満員御礼。中華料理屋"大鳥居"、気張っていきましょっかねーっと」

(おわり)

これはなんですか？

　小説における人物の書き分け。刻命戦隊クロノソルジャーを書くにあたってかなり悩んだ部分だったので、めっちゃわかるーーーと思いながらバールさんの文章を読んでましたザウルス。

　というわけで、練習&効果測定がてら会話劇をひとつ書いたザウルス。既存作品の人物だと目的と異なっちゃうので伏せたまま進行したけれど、最後の最後で種明かし的なことをやってみました。そうです、刻命戦隊クロノソルジャーの夏彦さんたちです。

　もっと人数わちゃわちゃさせてそれぞれのセリフ増やしたほうがチャレンジ感あったかなぁなんて思いつつ、お話の収集がつかなそうなのでとりあえずこれでぶっ放す所存。そんなこともある！