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ショートショート【何気ない夫婦の夜】

今日も1日仕事を終えた夫が妻の待つ家に帰ってきた。

「ただいま。」

「おかえりなさい、あなた。今日はどうだった?」

「どうだったってなんだ?なんだ今日の弁当は!味付けが全くなってないじゃないか!半分も残したよ。お前が処理しとけよ。」

「ごめんなさい、あなた。」

「いつも言ってるよな、家事はお前の仕事だって。最近たるんでるんじゃないか。掃除も綺麗にできてないしさ。」

「掃除はちゃんとしているつもりなの。ちゃんとした掃除道具も買ったりしてるし。」

「そのお金はどこから出てる?俺が稼いできたお金だよな。無駄遣いをしないでくれ。こんなことが続くとお金を全部俺が管理しなきゃいけなくなるぞ。お前ができることは家事くらいしかないんだからそれを頑張らないと。」

「ごめんなさい、これからちゃんとするわ。そういえばあなた、今日の午後はどこにいたの?会社に電話したら今日は半休をとっててもう退社してるって言われたんだけど。私そんなこと知らなかったから。」

「え?お前会社に電話したのか?」

「したけど、それよりも何をしてたの?」

「だから!いつも言ってるよな!仕事の領域には踏み込まないでくれって!なんで会社なんかに電話したんだよ!?」

「それはあなたが何をしてるか気になって。」

「それだけのことで電話したのか!無駄な電話を会社にかけるんじゃないよ!俺はたしかに今日半休とってて午後から退社してたよ。それをたまたまお前に言わなかっただけだろ。どこで何してようが俺の勝手だろ!」

「でも半休とってたなら午後から一緒に過ごせたじゃない。」

「はぁ?!なんで午後からお前なんかと。なに?もしかして俺のこと疑ってるの?浮気してると思ってる?お前がそんなんだから浮気されるんじゃないの?浮気かどうかはわかんないけどな!もういいよ、はやくご飯用意して。」

「……わかった、ご飯用意するね。」



「おまたせ、今日はハンバーグだよ。」

「お前にしてはまだマシな方だな。」

「ありがとう。」

「じゃあ食べるか。……ん?美味しいぞ!なんだこのハンバーグは!すごく美味いじゃないか!お前でもこんなハンバーグ作ることできたんだな。俺が散々言ってきたおかげだな。なにか特別なことしたのか?」

「そうね、今日のために特別な調味料使ったの。今持ってくるね」

「そうかそうか、お前も俺がいたからこんな料理上手くなれたんだぞ。俺がいなかったらお前なんか料理も掃除もできやしないんだから。その特別な調味料とやらも俺が稼いできたお金なんだからな。ていうか、このハンバーグまだないのか?美味しいからまだまだ食べた……うっ!」

「どうしたの?あなた。」

「胸が苦しい!はぁはぁはぁ…息が…できない…救急車を…救急車を…呼んで…くれ…なんだ…その…黒い…調味料を…見せてきて…そんなこと…よりも…はやく……はやく……きゅう…きゅう………しゃを………………………」

「ようやく掃除が終わったわ。」


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