月ノ美兎が活動4年目で雲隠れした意味

月ノ美兎委員長が昨日(正確にはもう2日前だけど)配信で話した意味をずっと考えていた。

委員長が、本人の配信タイトルから言葉を借りれば2週間あまり「雲隠れ」してしまって、その理由をリスナーに説明する配信だった。
終わった後、ネットの反応を見る限りだけれど、ほぼ全てのリスナーが委員長の行動を肯定していた。むしろ委員長の株が上がったと評価した人が多かったように思う。無論、僕もその一人だ。
普段委員長をメインで追ってない人には何が何だか全然わからないかもしれない。今回のnoteはそういう人達にもわかるように書く自信がないのでご了承をば。ただ、全肯定ゆえの態度ではないことだけは一言言明しておく。

リスナーがみんな諸手を挙げて彼女の行動を支持したのは、雲隠れの理由が「あまりにも月ノ美兎だったから」ではなかろうか。一言で言えば。
彼女が配信で語った言葉を僕なりに要約する。うまく言葉を拾えていなかったなら申し訳ない。

「(死ぬまでに)やりたいことリスト」が消えてしまったので思いつく限り書いてみたら、1日あればできることばっかりだった。
そんな事でも新しいことに挑戦しなくなってたような気がして、ちょっとヤバいなと思った。
この3年間月ノ美兎の、にじさんじのことを考えない日はなかった。でも「にじさんじの事を考えない日」を作りたいな、と急に思ってしまった。

「やりたいことリストを消化するために休んだ」と言われて文句をつけるリスナーは彼女のファンにはいないだろう。
ファンなら誰でも知っていることだが、彼女は極度のタナトフォビア(死恐怖症)だ。死ぬのが怖いから、万が一死んだ時にも思い残すことがないように、死ぬ前に絶対やることをリスト化して、合間にリストを消化するようにしていた。
逆に言えば、彼女は「やりたいことリスト」を消化することに自身の生きる意味を見出していた。「やりたいことリスト」が彼女のレゾンデートルだと言っても良い。
そしてそれこそが、彼女の無限にも思える行動力の源泉であり、彼女の輝きの源泉であり、ファンが彼女に惹かれる理由でもある。『アンチグラビティ・ガール』で歌われているのもまさにこのあたりだ。

だから僕も彼女が雲隠れした理由を称賛したし、そんな理由ならどんどん休んでくれ、とも思った。
ただ、どうしても何かが引っかかって、今日は1日ずっと考えていた。

その違和感の正体は、おそらくこうだ。
ファンは、そして恐らく委員長自身も、今まで「やりたいことリスト」は「月ノ美兎」として活動する中で消化できると思っていた。
しかし、実は「月ノ美兎」の活動をやりながらでは消化できていなかったし、「月ノ美兎」のままだと消化できないことに委員長は気づいた。
だから委員長は「月ノ美兎」の活動を一時停止して、「月ノ美兎」でない身分で「やりたいことリスト」を消化することにしたのだ。

だからきっと、これは「月ノ美兎が2週間お休みしただけ」という単純な話ではない。
昔は「月ノ美兎」でできていたことが、いつの間にか「月ノ美兎」ではできなくなっていた、ということだからだ。

ここで僕が思い出したのは、彼女が50万人記念で語った言葉だった。(11:20〜)

「バーチャルYouTuber始めたときは高校の友達に「バーチャルYouTuber始めたわw」ってネタにしようと思って応募したところもあった」
「「○○行ってきた」って話を(当時は)配信ではなく友達にしていた。その中の1個だった。体験談の1個にしようと思ってバーチャルYouTuberやったら予想外な感じになった」
「『バーチャルYouTuberのオーディション受けてみた』ですよ。言うなれば」

昨日も「前世療法行ってきた」なんていう怪しい話をしてくれたが、あのオモロな体験談と「月ノ美兎になってみた」は同格だったのだ。少なくとも最初は。
こう書いてしまうと気の抜けた話に感じてしまうが、しかし「前世療法に行く」も「やりたいことリスト」に載っていたアイテムの1つだったわけで。だから恐らく「vtuberになる」ことも「やりたいことリスト」に載るレベルの挑戦だったはずだ。
そして事実、(初期から追ってたファンなら知っているように)彼女のvtuber活動は最初から、世界で誰も体験したことのない挑戦の連続だった。

だから3年の間、彼女は「月ノ美兎」としてずっと走り続けてきた。ずっと挑戦しっぱなしだったんだろう。
そして彼女は「バーチャルYouTuber」の定義すら塗り替えてしまったし、にじさんじは100人以上のライバーを抱える業界最大手の事務所になったし、「月ノ美兎」もまた、3年経ってもまだ業界のトップランナーのままだ。

しかし、「月ノ美兎」は今の彼女にとって挑戦する場ではなくなっていた、ということに彼女は気づいてしまった。恐らく。
もう少し正確を期すなら、「月ノ美兎」でいるうちは挑戦できないことが増えてしまったのだ。恐らく。
配信で出ていた話によると、彼女はやりたいことリストの消化にあたっては「体験レポのネタとして行くのではない」と自分に言い聞かせていたらしい。そりゃ「配信に乗せるため」と意識すると、かなり面白い体験でないと体験しに行こうとは思えないだろうし、撮れ高をどうしても意識してしまうだろう。活動初期に「やりたいことリスト」に載っていた「ふぐちりを食べる」なんて、撮れ高を期待して行くものではないし、「体験レポのため」に食べには行かないだろう。少なくとも現在の「月ノ美兎」なら。

早い話、彼女の個人的な「やりたいことリスト」消化のためには「月ノ美兎」は大きくなりすぎたのではないか。配信映えしない活動をするには「月ノ美兎」はむしろ枷でしかなくなったのではないか。
それに気づいた彼女は、一時的ではあるけれど「月ノ美兎」ではない期間を設けて「やりたいことリスト」を消化しようとした(今もしている)のではないか。

彼女はそれでも「月ノ美兎」でいることにポジティブだし、「月ノ美兎」として活動できることを「恵まれている」とも語っていた。本人も語っていたように引退なんて一切考えていないだろう。にじさんじライバーとしての活動にやりがいを失ったようにはとても思えない。
ただ恐らく、「月ノ美兎」は彼女の「やりたいことリスト」遂行の場、彼女の個人的な挑戦の場ではなくなってしまったのだ。

もしかしたら今後、また「月ノ美兎」が彼女の挑戦の場になる日が来るかもしれない。「月ノ美兎」として活動しながら「やりたいことリスト」を消化し続けられる日が来るかもしれない。

しかし、もしそれが叶わないなら、彼女は今後も「月ノ美兎」以外で挑戦をせざるを得なくなるだろう。活動頻度が多少なりとも落ちる可能性は覚悟しないといけないな、と、今僕は何となく思っている。

(ここで念の為書いておくが、今までの話は「バーチャル」とか「リアル」とか、ガワとか魂とかそういう話は一切関係ない。1人の人生の問題だ。この文脈において「月ノ美兎」は彼女にとっての名義の1つ、ペンネームのようなものでしかない。)

もしそうなったら、「月ノ美兎」のファンとして寂しくないと言えば嘘になる。
とはいえ、仮にそうであっても、僕は彼女が挑戦し続ける道を応援したい。
挑戦し続ける彼女こそが「月ノ美兎」であり、そんな彼女に僕らは惚れ込んだのだから。


[2/22 追記] 注意書き → こちら

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