ファンコミュニティと推し活人生

先日、月ノ美兎委員長のファンDiscordサーバーを運営する初代管理人の方(仮にTさんとする)が引退した。単に管理人を引退したのではなく、にじさんじ界隈から去った。
彼はディスコ鯖管理人だけではなく、毎年の委員長の記念日に委員長に贈る合作動画の取りまとめをしていたのだが、その立場からも離れたことになる。

Tさんは最後の日、最後の挨拶をディスコのテキストチャットに書いた。そこには「段々と委員長から気持ちが離れてしまっていた」という文言も含まれていた。

その日の晩、ボイスチャットにTさん含む有志が集まって「お別れ」をした。Tさんは、どうしてもモチベーションを維持できず、自分を奮い立たせながら責任ある立場をこなしてきたが、もう限界に来てしまった……といったことを話した。
僕らがたどたどしくもねぎらいの言葉をかける中、Tさんは最後に涙で少し声を詰まらせながら、長居するのもつらいので、と一足先にサーバーから落ちていった。

Tさんが去って、残された数人がしんみりとしながら訥々と会話していると、入れ違いで1人の方(仮にAさんとする)が入ってきた。僕はAさんと話すのは初めて、というか、鯖でも初めて見るアカウントの方だった。
今ちょうどTさんとお別れしたところだ、と誰かがAさんに説明すると、Aさんはすぐにこう切り出した。

あの方、わざわざチャットに「委員長から気持ちが離れた」なんてよく書けますよね。だって、委員長のファンが集まる鯖ですよ。そこで「気持ちが離れた」と宣言するなんて。

当人をしんみりと見送った我々は――少なくとも僕は大いに戸惑った。
しかし、Tさんのことをあまりよく知らない人にとってみれば、Tさんの書き残した文言は、鯖に残るファンにケンカを売ったようにも見えるのかもしれない。……と、Aさんの言葉にも少し納得させられるところがなくはなかった。
(実際のところ、TさんとAさんがどういう関係なのか僕は全く知らないのだが)

Aさんの言葉はわからないでもないけど、でもそれでは涙を流しながら去ったTさんが浮かばれないよな、と思い、僕はTさんを擁護する言葉を返した。

彼は鯖の管理人だけでなく、記念日の合作動画の取りまとめをずっと続けていた。ああいう企画の主催はとても労力がいるもので、最初はモチベーションが高い状態で最後までやり切れるけれど、2回、3回と続けるうちに気持ちも落ち着くし、どこか義務感で乗り切る場面が出てくる。だから無理も生じて疲弊もする。

するとAさんは、次のように返した。

義務感でやらない方がいいですよね。合作もやりたい人が自分らでやるのがいいんじゃないですか。

彼は「推し活に無理は禁物」と言いたかったのだろう。
ただ僕は、ファンのコミュニティを運営する、あるいは、大勢で作り上げる合作や非常に手間のかかる大作を作りあげるのは、ただ楽しいだけでは乗り越えられないものだと思っていて、だから無理は発生しても仕方ないのだ、と主張した。
しかし、そのへんがどうしてもAさんと噛み合わず、結局そのままほかの用件でAさんも僕もボイスチャットを落ちてしまった。

それから一両日が過ぎたが、未だにこの一連の会話が頭を離れずにいる。それで、もやもやと色んな事を考える。

僕の委員長への、推しへの気持ちが薄らぐことはあるのか。
もし薄らいだ時、ファンをやめると決意すべきか。あるいは決意も宣言もせず、ただフェードアウトすればいいのか。
ファンコミュニティを運営するとはどういうことか。
そもそもファンコミュニティは必要なのか。
自分の推し活人生を縮めてでも、推しやコミュニティにエネルギーを捧げるべきか。

正解はない。

間違いなく、誰かが無理をしないと作れなかった作品は世に存在する。あるいは、コミュニティ運営なんて面倒なことだらけだ。たくさんの人が関わる中で、大勢への連絡や様々な調整など日常茶飯事に発生するし、最悪人間関係のトラブルもいつだって発生しかねない。
しかしいったんその立場に立って、めんどくさくなったからと言って途中で投げ出せるものではない。

しかし、そんな苦労を負ってまで自身の「推し活人生」を縮める必要があるのだろうか。所詮は余暇でやっている趣味の活動なのだから、つらい思いをしてまでやるものではないのではないか。
そんな、誰かが無理をして作られるような作品もファンコミュニティも要らないのではないか。


noteに書けば、僕自身のもやもやも多少整理されるかと思ってここまで書いてみたものの、何も解消されることはなかった。
なので他力本願で恐縮だが、この話の結論は読者の皆さんに委ねたい。おそらくみんなそれぞれに解答があるはずだから。


p.s. ボイスチャットでの会話中、Aさんに「たたむさんもnote書きすぎると推し活人生が縮むのではないですか」と言われたのだけど、このnoteはいつも小一時間で勢いで書いてるし、誰に強制されるわけでもなく義務もなく、締め切りがあるわけでもない。なので何の負担にもなっていない。
Twitterでツイートするのと変わらない感覚で書いてるので、そんな風に捉えてもらえると幸いである。

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