P/O SHIRT
定番商品として2004年からプルオーバーのシャツを製作しています。
徐々にディティールの変更をしていき、2010年からほぼスタイルを変えずに製作しています。
シャツに関しての考えをしゃべったものがありますので、もしお時間があれば、そちらも合わせてお聴きください。
一見して、とてもシンプルなシャツです。TATAMIZEで製作している全てのシャツの基本となっているのが、このプルオーバーシャツです。
基本的にうちはプルオーバーのシャツばかり作っています。
シャツをデザインするとき、まず「プルオーバー」のシャツをイメージします。何故?と聞かれても、理由を全てお伝えすることは難しいのですが、「着たときの収まり具合の良さ」まずはこれが、プルオーバーシャツの魅力だと思っています。
例えば、デザイン的に襟が小さかったり、オーバーサイズ気味だったり 着た瞬間にお洒落になれるようなシャツではないです。
とてもシンプルなシャツ。「かわいい」とか「かっこいい」とは違うベクトルのシャツ。いつも真ん中にある基本のシャツです。 あくまでも、「うちの基本」ですが。
襟はレギュラーカラー。台襟も高すぎず低すぎず
台襟や上襟が ネックに沿うようにカーブさせているのは勿論、剣先が多少外側に向かっているところが、特別なことではないけれど 媚を売っていない感じがしていて
そこが好きです。
前身頃は、プルオーバーながら2枚接ぎになっています。
決まった幅の生地から効率よく裁断するために、あえて2枚に剥ぎ合わせています。
わかりにくい話だと思いますが、生地の幅というのは当然決まっていて、その中から効率よく生地を裁断したほうが良いわけです。
例えば、高級なテーラーリングの洋服であれば、体に沿ったパターンのため曲線が多く、その中で柄合わせなども必要となってきたり 生地を贅沢に使うものですが
ワークウエアのような場合、決められた生地幅の中で効率よく沢山裁断できるように、直線的でボックスなライン かつ隙間無く入れ込むために一つのパターンを二つに分けて はめ込んだりします。
例えば、シャツではなくパンツの話ですが、古いチノの後ろ股ぐりが切り返しになっているものがありますが、あれは補強のためではなく、生地幅に対してあの部分がはみ出る または他のパーツのとり都合上カットする必要があるために、あのようになっています。
デザインや補強等の目的ではないけれども、今になってみるとそれが何かデザインのように見えてくる。その面白さがとても好きです。
ですが、ただそのディティールをコピーするだけでは、仕上がりとしてオリジナリティを感じないものになりますし、何よりも深みを感じるものにはなりません。
このシャツは、ワークシャツとしてデザインしたものではありませんが、TATAMIZEがテーマとしている デザインとその理由 そしてそれが形になるまでの工程がしっかりとリンクされること
その部分がわざとらしくなく詰められた部分かと思います。
物作りをより深く理解して、自然な形で必要な理由のある仕様は勿論、縦に一本線が入ることでスッキリした印象にもなりますし、なにより効率のためのディティールがデザインになっているところが大事なところです。
後ろ身頃のヨークとの接ぎ目、袖口はギャザー処理。
カフスは手首に自然と沿うように、ラウンドしています。
また、アームホールは前後でかなり差をつけていて、前身頃のカーブと後ろ身頃の直線的なラインが、着た際に、前はスッキリしつつ 後ろは運動量を確保しています。
ラウンドしたカフスは 着用の際に何となく意識して頂くとわかるかと思いますが、しっかりとボタンを閉めると 手首のラインに自然と沿う形です。
これは、うちがオリジナルで考えたものではなく、それなりにしっかりと作られているシャツであれば当たり前の仕様です。けして珍しい仕様ではありませんし、「そうなっているものが良く」て、「そうなっていないものが駄目なシャツ」と言いたい訳ではなく、シャツのデザインの中で襟の形やフロントやポケットの仕様はわかりやすい部分かと思いますが、このカフスがどういった形のものをデザインとして入れているかも、大事なポイントかと思います。
うちはこの形状のカフスを多く使っています。
例えば、他の部分のラインやディティールが柔らかいイメージのシャツであっても、カフスは甘くならないようにしています。
やはり「シャツ」であって「ブラウス」ではないと思っているのです。
袖も、前身頃同様の理由で2枚接ぎとなっています。
例えばテーラードジャケットの袖も、2枚袖になっていますが、あの場合は前振りを作るためであって、直線的なこのシャツやアメリカのワークジャケットのような物とは同じ2枚袖でも、根本的な考え方が違います。
直線的な袖なのに、わざわざ2枚にする必要があるとすれば、効率よい生地どりのためです。
素材も程よく肌触りの良い、しっかりとしたオックスフォード。10ミリの貝ボタンにも、主張らしい主張はありません。
そういった「普通のシャツ」だけれど、何も無いシャツではありません。
何気なく付き合っていただきたいシャツです。詰め込んだものは何となくの参考程度に、単純に「何となく良い」と言っていただけるシャツを作るのに、色々と大事にしています。
表側にはあまり出ませんが、長く付き合っていただくほどに、着る人それぞれに似合うシャツになるため、そのために色々と詰め込んでいます。
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