見出し画像

TATAMiS PROJECT ー動機編・前編ー

先日は、4月29日「畳の日」ということで、畳に従事する人たちはそれぞれ思うことがあったのではないかと思います。
私も、今年ほど「畳」のことを考えていることはないので、畳という稀有なプロダクトに愛着を感じていました。

和室の減少

和室を見ると、何か凛とした雰囲気に懐かしさと清々しさを感じるのは、私が日本人だからでしょうか。
「新築の家には一部屋の和室を」というのがいつの間にか合言葉になりました。今現在、新築を建てると、土地代別で3500万円(40坪)くらいするのではないでしょうか。そうすると坪数を有効に使わなければなりません。和室という選択肢は、新築を建てる方の「願望」にはランキングされなくなりました。
かなり前の建築雑誌で、建築家の椎名英三さんが「畳=和室としたことが、畳が減少した原因」とありまして、納得いたしました。

また、生活・文化が変わったこともあるでしょう。私が子どもの頃にはまだ「お葬式」というのは、各家庭で行われていました。「お見合い」や「結納」なんかもそうです。冠婚葬祭や年行事などが「家」で行われていたからこそ、和室つまりは畳の必要性があったのです。そうですよね、そんな時は畳を新しくしようと思いますよね。
しかし、そういうことをしなくなった現代において、畳は取り残されていきました。本来、畳業界として、いち早く考え、議論し、行動しなければならなかったことと思います。いや、ユックリとですが、畳業界も変化はしていました。そのひとつが「縁無し畳」です。

縁無し畳の登場

縁無し畳は、文字通り畳の「縁」が無い畳です。
この畳が一躍有名になったのは、安藤忠雄さんなどの有名建築家が使ったためではないでしょうか。千と千尋の神隠しでも出ていましたよね。
カッコイイ言い方をすればモダンという言葉になるし、光の加減で一松柄に見えるのも面白いです。
私は、この縁無し畳が、畳業界の「パラダイムシフト」だったように感じます。
■和室からの解放
■バリエーションの豊富さ
■半畳という大きさ          
というのが理由です。

まず、住宅環境からですが、リビングに一段掘り下げ、畳コーナーを作ることにより和室を作らなけばならないという観念から解き放たれました。これは一畳店として、ありがたいことです。不要ではありませんから。活用法は沢山ありますし、現代でも畳という価値観が存在出来ることは喜ばしいことです。メリットはそうですが、住宅における畳の枚数は減っていってます。

そして次に、元来畳というのは「い草」で作られていましたが、樹脂や和紙といった畳表が出来たので、いろんな色で作られるようになりました。これも施主さまの好みといったオーダーメイド感が強調され、畳の存在が際立ちます。統計はありませんが、新築の8割くらいは縁無し畳ではないのでしょうか。

そして、半畳というタイプになったことで、一枚の畳より単価的に上がりました。これも畳店にとっては追い風になりました。1⇒1.5になるのですから、こちらも喜ばしいことです。少ない数でも、高単価になるのならば畳店も継続できます。しかし私は、何か漠然とした不安を感じるようになっていきました。

畳の未来を考えてみる

私は、本年度から熊本県畳工業組合という組織の理事を拝命しまして、任命していただいた手前、最初はなんとなく、この問題を考えていました。
熊本県は皆さんご存じのようにい草の産地であります。日本の畳表の95%以上を熊本県が生産しています。それはスゴイ!と思われるかもしれませんが、30年前に5000軒あったい草農家は今では300軒程に激減しているのです。原因はさまざまあると思いますが、一番の原因は、畳という価値観にあると思います。
畳表は農産物です、い草農家からトマト農家やキャベツ農家になっても特に問題はありません。安定した生活が出来るのであれば。
また、先に言った化学畳表の普及も大きな原因の一つだと感じます。い草農家の方々の想いというのはいかばりか…と反省をいたしました。
ここで、先ほど言った「漠然とした不安」というのを言語化してみますと、
畳の縁がなくなり、畳の枚数も少なくなり、い草農家さんがいなくなり、畳という1300年以上続いた稀有なプロダクトは、一体どうなるんだ…」ということでした。

新しい価値を作りたい!

そこで、どうすれば良いのか、何をすれば良いのか。
日本のモノづくりにおいて、私が一つ懸念していることが「中国」です。
例えば、外食産業においても冷凍食品が中国産に依存しているとしまして、急に価格が急騰すれば大変なことになると思います。
同じようなことは、住宅備品や什器メーカーでも既に起こっていることです。そしてその反動は私たち製造業、そして消費者の皆さまに転嫁されます。ですので、まずは日本国内の生産(製造)者と協力し、モノづくりをしたい!というのが目標になりました。
幸い私はFaceBookでのコミュニティを通して、日本国内の畳店の方と若干のお知り合いが出来ていました。また、個人がしても意味がないことだと感じていました。コロナ禍もありまして、時間は十分ありましたので、考え、行動するには良いタイミングでした。

後編につづく

ただいまクラウドファンディング挑戦中です!
よろしくお願いします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?