畳を使った取り組み「長椅子」

【公共性の高いモノの難しさ】

夏に私たちの街では「山鹿燈籠」という祭が開催されます。
街々で作った「燈籠」を地域の神社である大宮神社に奉納を行う神事です。

大宮神社が大規模な修復工事を終える本年、拝殿の中で使っているコショウが古くなったのもあり、また、私たちの取組にも合致し、修復工事完成に併せて参拝者が座る椅子を新しく出来ないかと提議されたのが今年の春でした。

神社の神主さんにヒアリングするといろいろな諸問題が浮上してきました。

  • ベンチタイプにしてほしい(親子参拝のため)

  • スタッキングがきるようにしてほしい(場所の有効活用)

  • 重量は適度な重さにしてほしい(二人で持てる重さ)

  • 低価格でしてほしい(高額は厳しい)

…などなど。ということで、これを熊本県畳工業組合山鹿支部で持ち帰り、ミーティングを行いました。折しも、木材の値段は落ち着いてはいたものの、他のコストが上がり始めた時期でありまして、早期行動(見積など)が重要なことは肌で感じておりました。
また、今回は個人の人が対象というよりは、いろんな方々が使用する公共の場ということで、様々なことにいつも以上に気を配らなければいけないということを念頭に置きました。

【家具工場との打ち合わせ】

早速、大川の家具工場と打ち合わせを行いました。畳を嵌め込むことを考えると、畳を収める「枠」が必要になります。また、スタッキングを行う場合は枠の外側に脚を付けることがスタンダードだということでした。
仮に、他のスタッキング方法を取るならば、金物を使うか秋田木工のように曲木にするかの方法になりますが、今以上に資金がかかるのはNGということと、やはり神社ということで木を使いたいというのが先行しました。
ということで、大体のデザインが決定しました。
次に、木材の選定でしたが、無垢材や横ハギ材を使用した場合、以前試作した時に割れが発生しました。
今回は、公共の場ということまた、スタッキングする衝撃、低価格を加味し、合板を使用することにしました。材質は白木を選定し「樺」です。
杉などと比べ硬いのもあり、また積層なので乾燥にも強いということでした。
※前の投稿で画像が上がってました、6月には試作が完成してました

【製作費のこと】

おそらく、ここが一番大変かつ重要なところだと思います。私たち畳職人や職人は、何かを作ることには特化してますが、売ることが難しいと常々感じています。そして今は経済的にも安定していない時期です。値付けや販売が果たして十分できるのかという問題もありました。
また、ある程度資金が集まらないと工場の方にも頼めず、クラウドファンディングもありますが、神社は地域の方々の場所ということもあります。
ですので今回は地元企業さまからの奉賛(※謹んで賛助すること)ということに落ち着きました。

長椅子の後方に貼るステンレスのプレートに奉賛していただいた企業さまの社名を入れることで奉賛金を頂き、製作費として活用しました。
今回、良かったと思ったのは「三方良し」( ※売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるということ)が実践できたことです。

  • 使ってうれしい(地域・市民)

  • 提供してうれしい(地元企業)

  • 作ってうれしい(畳組合)

そして、11月1日無事に奉納を終えました。
社会貢献とまではいきませんが、地域の方々が愛着や誇りを持っていただくこと、神社は日々の生活の拠り所になり感謝を伝える特別な場所ですので、そんな場所に新しい取り組みを行えたのは私たちにも意義があると感じています。

神社の方と話していて、畳表というのは神事においてとても有用であり、使用している畳縁(高麗縁)も意味があるので有難いということでした。
低価格優先な国外生産なモノを安易に買うよりも、いろんな方たちとチームになり、知恵を絞って製作したことが意義があったと感じております。こういう活動が他の地域でもないかな、と期待しています。

あ!今、ミナ ペルホネン社の生地と熊本県小国杉を使用した畳スツールのクラウドファンディングも行っております!
宜しければ下記よりプロジェクト参加お願いします!!

https://www.glocal-cf.com/project/tatamis

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