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上を向いて(100km)歩こう ~完結編 (中編)~
俺は大学生気狂い・カツヲ。 グンマに住む親友のMの家を目指してサイタマを歩いていたとき、約30km地点で左足の裏に怪しげな痛みを感じていた。 左足の痛みに夢中になっていた俺は、 背後から近づいてきた右足のマメに気付かなかった。俺はその右足のマメの破裂に苦水を飲まされ、気がついたら・・・ 両足裏が破裂してしまっていた。
見た目は大人、足裏はおじぃ。栄光なしの名気狂い。
ゴールはいつも一つ!!!
日跨ぎ間近の 北の空に向い
足の裏の皮膚の痛み 嘆くとき
帰れぬわたくし 深い虚無がよぎる
されど今日まだ独りきり 旅に出る
ああ グンマのどこかに
私を待ってる人がいる
ヒィヒィ泣きがち 気休めをさがして
Mの助けを呼ぶなんて無理よ 出来ねぇよ
前編はこちら。
2022年11月2日 23:18
サイタマの道中で両足裏をぶっ壊したカツヲは、なんもねぇ道路の縁石で項垂れていた。
いや、項垂れていないふりをしながらTwitterを眺めていた。
Mに、道半ば‘あしたのジョー’の如く項垂れていることの報告の入れようと思ったが、そもそもMには出発のLINEすらしておらず、そこに突然
「両足のマメが潰れたナリwww もう無理ぽwww 助けてクレメンスwwwwww」
なんてキショメッセージを送るのは無理。
そもそもMに心配をかけてしまうと、とてつもなく優しいMは助けに来てくれてしまう。
消せないアドレス、Mのページを指でなぞってるだけ。
と己の中に眠るプリプリも呟く。
諦めが悪く、無理をすることが得意なブラック企業勤め予備軍のカツヲは、なんとか力をふりしぼった。
なんせ2回目はおろか、1回目のチャレンジの時の距離すら超えてないんだもの。
「やれやれ。往年のヘレン・ケラーのように慈愛に満ちたMをこの辺境の地に出向かせるのは、さしずめアドルフ・ヒトラーの所業と言ったところか。」
そう呟いて、妖しく燃える月が輝くディストピアから抜け出すように、やや火照った乳白色の耳にイヤ・ホンをねじ込めば、『Janacek: Sinfonietta』が聴こえて来ているフリをしながら小山田壮平楽曲を聴く。
やれやれ。歩くか。
11月3日 0:00
日付が変わってしまった。
いや、まだ変わってないんだい!
11月2日はまだ終わってないんだい!
男なのに短大!!!
男なのにハウスマヌカン!!!
ヤンキーじゃないのに高校落ちた!!!!
歯が多い!!!!
ゴイゴイスー!!!!!!!!!!
・・・・・
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11月2日 24:15
ガチで足を引きずりながら歩いていると、‘ニトリ桶川店’を通過。
1度目のチャレンジでのリタイアポイント(計42km)だが、出発場所が異なるため未だ40km。
まだ半分も歩いてない。
25:10
なんかもう、1時間越え動画のシークバーみたいなスピードで進んでいたカタツムリカツヲは、ここら辺でやっと普通に歩けるようになり、足の裏の痛みとは仲違いをした。
足が爆発してからの約2時間でたった2km程度しか進んでいないというカタツムリっぷり。
25:40
トイレ休憩にローソンに寄り、脚自体にはほとんど筋肉的な痛みはなかったが、予防のためにサロンパスを貼りまくる。
そして、エネルギー補給。
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26:05
イヤホンからはALの曲が流れていて、もうとてつもなく染みる。
ありえない距離を歩くカツヲにありえないほど染みるALのアルバム。
ふとイヤホンを外してみるととてつもなく静かで、異世界に来たような感じ。
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26:30
小山田壮平楽曲もクライマックスに。
![](https://assets.st-note.com/img/1681717597488-Jy3vLxGTov.jpg?width=1200)
そんなこんなで黄昏ながら歩いているとMからLINEが。
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どうやらレポートをやってたらしいMと電話をして、足がぶっ壊れかけた話をする。
せめて出発のLINEはしてくれないと、生きてるか死んでるかわからん。
とやんわり怒られながら、唯一残していた行動食でエネルギー補給。
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やっぱり独りじゃないだけで足の軽さは全く違う。
電話越しでGoogleマップを照らし合わせながら、今歩いている場所を共有する。
それからは気を紛らわせるように、大学の授業の話、大学の友人がタップルでマッチした人と今日初対面で家に来る話、などをする。
てかよぉ、今頃アイツらファイアーしてるだろ!!こっちは足がファイアーしてるのに!!!!
Mと電話していると疲れを忘れてハイペースで進んでいたため、途中で道路の縁石に座って休憩をとる。
全く車が通らない道で空を見上げるとたくさんの星が。
なぁM。星が綺麗だぜ。ちっぽけだな俺ら。
ユニバーシティの表口からMん家までの長い道
待ち遠しい目的地と孤独にいつでも包まれる道
でも足裏が痛いからって甘えて
これで行けんのかなって気持ち抱えて
痛がってんなら耐えてこう1歩ずつ前へと
俺たちはまだちっぽけでこの手のひらの中にはこの手のひらの中には何も無いけど
雨に打たれ 風に吹かれ でも諦めないから
でも諦めたくないから きっといつかゴールを掴むんだ
ねぇそうだろ? ねぇそうだろ?
27:40
明日(?)の夕方からの部活に備えて眠るMとの電話を終え、Mが部活に行くまでに家に着かなければ、という覚悟を決める。
残り44km。
やっと半分を超えていて、気付かないふりをしていた疲労も少しづつ顔を出している。
残り44km。。
やはりMとの電話を終えると一気に足取りが重くなり、じんわりと眠気も襲ってくる。
残り44km。。。
なんか、‘絶望’というよりはむしろ‘虚無’で、もう全ての役目を終えた顔をしている賢者タイムのカツヲは、深夜のサイタマを徘徊する。
残り44km。。。。
ここからまた独りの戦いだ。
欠けた生命線 光る常夜灯 汗ばんだ足裏。
残り44km。。。。。
目の前が真っ暗になっちゃってるんだよな、、、
目の前が真っ暗になっちゃってるんだよな!!!
![](https://assets.st-note.com/img/1682255831950-Q7ovAb4id8.png?width=1200)
28:15
疲れた身体を引きずって川沿いの遊歩道を歩く。
時折、早朝散歩、もしくは深夜徘徊をするサイタマ人とすれ違いながら進む。
その遊歩道で見つけたベンチになんとなく寝っ転がってみる。
![](https://assets.st-note.com/img/1681862894809-uyzsD9C7ix.jpg?width=1200)
木々の隙間から見える星を眺めながら、
もう少し暖かかったら眠ってしまうなぁ
だなんて思いながら目を閉じてみる。
BrakingDownのことを余計に思い出したりしながら、Predawnのサイタマで目を閉じてみる。
I may be sleeping or just awakening
A moonbeams tells me its 4 am
29:10
‘川沿いの遊歩道のベンチで寝転がる’という完璧なホームレスムーブをしたカツヲはそのまま30分ほど眠り、寒さのあまり目を覚ました。
そして、空腹を満たすためにセブンイレブンによってエネルギー補給。
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29:55
57km地点。
少しづつ明るくなり始め、ただひたすらに耐え忍んで進むしかない現実にリタイアがチラつく。
もう万策尽きた。
![](https://assets.st-note.com/img/1681881830375-TP2SkRs5gr.png?width=1200)
チクショー!!!!!
てな感じで自然に囲まれた‘武蔵公園’のベンチにリュックを枕にして寝転がる。
かなり諦めムードだったカツヲは、考えることを放棄して、まだ少し暗く寒いサイタマで眠りについた。
6:50
あまりの寒さに目を覚ました時もう外はだいぶ明るくなっていて、朝散歩老人の姿も見受けられた。
一眠りしても諦めムードは変わらず、痛い足裏を何とか引っ張りながら歩き始めた。
でもやっぱり道なりに駅はなく、諦めの悪いカツヲは、とりあえず駅が出てくるまでGoogleマップの示すとおりに進むことを決意する。
訳分からんぐらいデカイ蜘蛛が1mに1匹はいる絶望の川沿いを歩き、徐々に訪れる希望の朝に照らされながら、時折すれ違うおばあちゃんと同じスピードで歩く21歳、男性、虚無虚無プリン、apathy、ウォーキングデッド、イエべ秋、骨スト。
さえぎるものののないまっさらな大地はね武蔵の国のはなしさ
それでも苦と無を包む行脚の終末に一体何を求め歩くのだろう
無表情のカツヲーパン 不感症のカツデレラ 言葉を忘れてしまったカッツーマウス
振り返れば見つめ返す足裏と虚脱と手をつないでいこう グンマの朝に
歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて ウォークウォークウォーク
グンマへグンマへグンマへグンマへ行く旅だよ
7:50
出発から約60km。
すっかり朝のサイタマで、相変わらず諦めムードで道なりに駅があることを願いつつ歩く。
催した。
体内時計バッチリのカツヲの体は、朝イチのトイレを求め始めた。
初めのうちは、
まぁまだ耐えられるし、どっかしらにトイレあるでしょ。
という軽い気持ちで歩いていた。
しかしどんどん怪しくなってくる。
めちゃめちゃトイレに行きたい!!!
お腹に据えたビッグ・ベンは確実に降下している。
必死にコンビニを探す。
セブンイレブン千代田町上中森店…約3.5km先
・・・・・
は?意味わかんないんデスケド!!!
あと40分我慢しなきゃ行けないの!?
もう、なんなのぉーーー!
必死に公園を探す。
見沼元圦公園…約1.0km先。
・・・
行ける!!
クチコミでトイレの場所を確認し、足の痛みも忘れて爆速で歩く。
Googleマップの現在地をしきりに更新し、残り距離を確かめながら進む。
それがすなわち、もう限界に達しかけているカツヲが耐えられる距離、である。
8:00
見沼元圦公園に到着する。
縦に長い公園の中心部に位置するビッグ・ベンのオアシスを求めて、
「はやくはやくはやくはやくはやく」
と呟きながら足の痛みを忘れて歩く。
サイタマ人とすれ違う時には、あくまで‘ただ早歩きをしている大学生’然と振る舞いながら、般若の顔で冷や汗をかいたカツヲはトイレを目指す。
着いた!
そのオアシスは輝いて見えた。
さながら、ロンドンのウェストミンスター宮殿にそびえ立つ大きな時計台のように。
腹に据えたビッグ・ベンをやっと解放することが出来る。
安心半分、苦痛半分でトイレに駆け込み、洋式トイレのドアに手をかける。
[使用禁止。]
?????
[使用禁止。]
?????
[以前、トイレが荒らされていた形跡があったため、当面の間使用禁止となります。]
?????
ドコノ、クニノ、コトバ、デスカ?
メーデー!!!メーデー!!!
もう無理だよ!!!
限界です!!!
メーデー!!!メーデー!!!
けつあな崩壊確定!!!
最寄りの公園はもうありません!!!
最寄りのコンビニまで残り約2.5km!!!
けつあな崩壊確定!!!
お願い、死なないでカツヲ!
あんたが今ここで倒れたら、おパンツや人間としての尊厳はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、ビッグ・ベンに勝てるんだから!
次回「カツヲ死す」デュエルスタンバイ!!!!!
夢焼肉へと続く。。。
![](https://assets.st-note.com/img/1682256794471-RdI0td7lDO.png?width=1200)
間違えた、後半へと続く。。。
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