刻深刻

刻深刻

tatacuuc
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「お前の事を明日殺しに行くぞ」

僕は人を殺す代わりに、方向座って斜め左の斜め上の40度ぐらい、距離腕を少し曲げた程度空中に穴をあけた。
咆哮を捨てるのだ。毎日毎秒そこにいる限り色付きの呼吸をそこに捨てる。
穴は無いが。

僕は空中に穴をあけられないのだ。
お母様は殺人を犯していない。しかし空中に穴をあける技術は持っていない。
不思議なのだ。
空中に穴をあけず私の勝手を振り回さず人間はどうやって生きてきたのだ。
人間とはどうやったのだ。
その日はクマ的な地球外生命体じみた色彩の抱き枕を抱いて寝た。

洗濯物を焼く。
雨が続いて乾かなかった。洗濯前の物切る。
灰と端切れを洗濯機に入れてぐるぐる回した。だってスイッチを入れるとぐるぐる回ったのだ。
30分経って中を見ると穴があいていた。
僕は失敗したシチューやペットボトルや僕の頭の僕の街を入れた。穴に。
洗濯機が汚れた。
嘘でした。
穴はあいていません。
体内から心臓を突き破り出てくる架空の、人に悪さする腕はどこに置いておこう。
ギターを立て掛けるやつに立てておけばいいのかな。
腕スタンドを楽器屋で480円で買って、最初の穴から1.5m離れた場所に置いた。
僕は間違っているだろうか。

僕はたまに僕の事を大事にしてくれる人を自殺に追い込みたくなる。
嘘じゃない。皆の事が大好きだ。殺してやる。僕が責任を持って殺してやる。
好きな人が減ると寂しい。
落ち着いてはいるが悲し寂しい旋律のやはり寂しく美しいエンドレスの渦に埋まりたいが、
表情は見たくないのだ。知らせないでください。教えないでください。
僕をどうする気だ。離してください。

安物売りの店で買った安物っぽくない普通のコップに色を塗ったのだ。
穴の事は忘れていた。
僕だけのものが必要だったのだ。周りには僕だけのものしかないのに、僕だけのものが必要だった。
夢中で描いた僕だけの世界は洗剤で落ちた。
僕はもう一度やろうと思った。

イスラエル民謡を聴きながら車で海に入ろうと思った日は熱くも寒くもなくずっと深夜2時だった。
先程聴いて下さっている筈の色彩宇宙人のクマを連れて僕は紺碧だった。
それはひらめきの奴隷である事に疑問を持たない僕への罪で、僕への抱擁だった。
僕は涅槃だった。
自分で車を運転している時点で許しも云々もないが、ただの涅槃だ。
誰もが持っている思い込みだ。日替わりの哲学だ。
とにかくその日、僕こそが涅槃だったので、入水により終わりにした。
必要ならばかみさま、もう要らないので肉体をお返しします。と、とりあえず心の中で呟いてみたが、
かみさまはそんなものは要らなかったらしい。
腕が心臓を突き破ろうとしていた。

誰かの頬を両手で包む時のように、心臓の外に穴をあけた。
僕は穴をあけられない。
思い込みだが、人を殺す心臓の腕が、出た瞬間穴に消えるんじゃないかと思った。
消えない。
僕は穴をあけられないからだ。
全ての怒りや、悲しみからくる怒りや、自分の首筋に手をかける腕。
それらが無かったことになればいいと思った。が、ある。
僕は穴をあけられない。

欠け欠けの美しい思い出がホワイトゴリラに詰まっている。
ピアノの上から僕を見ている。何回か洗濯され、今はおしゃれな帽子を被っていらっしゃる。
殺し殺されを抑止する一つの仕掛けだ。
ひとつだけでも暖かい信仰を与えればいくら虐げてもまた来るかもしれないホワイトゴリラを待つようになる。
大間違いの上を徒歩で行く。
誰も気付かない。誰も傷付かない。と、思い込んだ。

耳鳴りや幻覚の無尽蔵のスタミナはどこから来るのだろう。
あなた達はきっと働き過ぎた。
その日常には不愉快な休符にはスパイスな有り難きは埋めたい友人だ。
お母様は山椒を入れ過ぎるのだ。
山椒の針で感性は鈍り、感性は少し前へ動く。
小さく前へ倣えって覚えてる?
僕は覚えてる。

安煙草の煙をわざわざ喉で留めて、smotherごっこをする。
smother it, smother it.
聞こえますか?僕の苦しんでいる音ですよ。
復讐は野に放たれないけど煙は穴に消えるのだ。
板についた僕のあけた穴に消えるのだ。
本当なのだ。
なぜなら煙は消えるからだ。

羽音の元を毟って火葬しただろう。
次は愛猫の首を噛み千切ろう。
平等が良いと言われたのだ。
口内に血流を感じた瞬間、自分の首筋が割れ、中から鮭の稚魚が大量に出てきたのだ。
もしかしたら人間かも知れない。
もしかしたらそれを見ていた居ない妹は人間かも知れない。

整合性を取る為に温かいスープを差し出したら、ゆっくりと後ずさりされた。
僕の親切は僕の為にある。
賞味期限の切れた豚と自惚れを15時間かけて煮込んだ事を知ったのだ。
厭わない。罰しなさい。
お前の為の僕であるし僕の為のお前なのだ。

経典を手に入れた。
それは燃えるゴミの日に出したが、隣に捨ててあった音の出る絵本を近所の図書館に寄贈した。
児童コーナーが燃えた。
思い出したが経典は彼が作り、絵本は僕が作った。
子供とお母さんの最後が収録された絵本を回収しよう。
手を合わせた僧の為に絵本を梯子させよう。

夥しい数の細かい光が閉じた目を突き破って入ってくるものだから、消毒の為にビールを頭から被った。
何も成し遂げていないが祝福された気分だった。
透明な色紙を窓に張り付けて、ステンドグラスごっこをしたのは生まれる前の僕だ。
奈良まで電車で行ったのだ。
どうせガラスの破片なら色が着いていた方が良いだろう。

物に塗れその物の触感にヒントを貰い、坂道を登り切る気で椅子に座っていたのに、
取り上げられたら産声を上げる事も無く死産。
ループするのだ。
優しさをもぎ取る為の心臓の腕が人を殺すものだからそんなものは捨てようと穴をあけたが、
報われもしないし、換気扇の様に煙を見えなくするだけだし、
これはガラスあたりの破片を踏んで、それを我慢する方がよっぽど体に良いように思えた。
だから窓を割った。心臓の腕を使った。綺麗だった。
かみさまに学習機能は無い。

ゆっくりと回ってくれる電車の中に高速で移動する花があったので、
いいよ、許すよ。と唱えて目を閉じた。
乗客の息遣いが不愉快で、腕が穴に行ったり来たりだった。
穴あいてるじゃないか。
付け焼刃の悟りめく穴はあったのだ。
視認はできない。
正体は知っている。お前に教える気はない。お前は持っているからだ。

雪が雨で溶けそうと思って、やばい見つかると思った。地中のぬいぐるみの話だ。
今世紀最後の戦後最大級の血涙。
ときめく気持ちは抑える必要ない。
机に寝転がってとてもきついジンジャーエールを飲んで、それはとても酒じみて、夏の魔王が網膜のブラウン管器官でホワイトノイズとか、砂嵐の奥に少し見えた。
かすれた昔のそのシンボルのような気がして。
マイク噛む系ですか?

腕を広げてくるくるっと回ったらそれは風速50mのトルネードとなり、街は瓦礫の海と化した。

私の大切な。

無限に有るわけではない今日という尊き日の顔面を踏み、ピーマンと一緒に炒め、
濡れた股を掴み飼ってる亀の死骸と共に可燃ゴミの日に出した。
無邪気に振り回された人生は悦び、性的興奮を胸に死ぬ。
全ての尊厳にスナック感覚で死を。
紙幣や人生や高級絨毯やデザイナーズソファーはお前の運転する軽トラに轢かれて死ぬ。

神の口に私のを咥えさせた。
私は神より強く人より弱い。
あの穴を神の口だとした。
つまり誰よりも脆弱な精神で神に口淫を。
私の為の神か神の為の私か以前問われたが、お前は私の為のお前だ。

鮭の切り身をポケットに入れて住宅街の中の公園に行った。
並木道がとても2010年代で、この上ない清潔感と整頓された落ち葉。
気分良く鮭を齧り水道水を呷る。
少年野球少年の群れがゴムボールとプラスチックバットを持って私の整然に入ってきた。
少年の頭にコーラをかけて帰る。

交錯する記憶の中で、ライターで自分の手を焼き強くなった私と、
足の親指の爪がとれ、弱くなった私を見た。
カギはゴリラだった。
母の気まぐれの愛の塊である白ゴリラと、戦争の悲惨さを延々語る黒ゴリラ。
殺されても文句を言えないのはどちらだ。

コーヒーメーカーに味の素を入れ、ドリップしたものを朝顔にやった。
愛の化身は無表情で嘘を吐く。
私にコーヒーメーカーを与えたのが悪いし、味の素を与えたのが悪いし、愛を与えたのが悪い。
朝顔は優しさを飲み、立派にテロ組織の顔になった。
私は水を与えただけなのに。

五感を飲む穴を。お前の為だけの私だけの穴を。
僕は手ぶらで家を出た。
お前の家に着いて3年後、錆びた鉄アレイを持っている。

頭に鳴る。
私の歩みとは不釣り合いな時計の秒針の音。
手を繋いで傘をさして家の周りを歩いた。
知らせたかったのだ。
僕は空中に穴をあけられない。
傘を捨てた。濡れた。

お母様、僕は間違っているだろうか。

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