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短い文章から導きだされる驚きの推論

九マイルは遠すぎる ハリイ・ケメルマン 早川書房
英文学教授のニッキィ・ウェルトを探偵役とした短編集である。
この本で、特徴的なのはアームチェア・ディテクティブものであるということである。アームチェア・ディテクティブとは事件の内容を聞いただけで解決に導く形の推理小説である。事件の現場に行かず、安楽椅子に座ったまま事件を解決する様からアームチェア・ディテクティブと言われるようになった。しかし、本書は他のアームチェア・ディテクティブとは一線を引くものである。

あらすじ
「たとえば十語ないし十二語からなる一つの文章を作ってみたまえ。そうしたら、きみがその文章を考えたときにはまったく思いかけなかった一連の論理的な推論を引き出してお目にかけよう」
ニッキィ・ウェルト教授に挑発された「わたし」はどこかで耳にした、言葉を口にする。そこから繰り広げられる推論により、暴かれる真実とは。

本書は、真相に驚くものではなく短い文章から真相へと導くための過程を楽しむものであると個人的に思う。短い文章から推論をしていくため、確証がない思考ゲームのような形であるからである。
ちなみに、表題作「九マイルは遠すぎる」だけでも買って読む価値はあるが他の短編も面白いのでおすすめする。

あわせて読みたい本
麦酒の家の冒険 西澤保彦 講談社文庫
迷い込んでしまった山荘に置かれていたのは、96本のビールと13本のジョッキだけであった。不可解極まりない遺留品の謎を推理していく。
こちらも、ビールという遺留品から推論し真相解明していくアームチェア・ディテクティブ。

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