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補遺8: WIRED連載『新しい社会契約(あるいはそれに代わる何か)』第8回「クリエイターエコノミーと修理する権利」

雑誌『WIRED』Vol.43(2021年12月13日発売)掲載の『新しい社会契約(あるいはそれに代わる何か)』第8回「クリエイターエコノミーと修理する権利」の補遺です。

紙面の都合上、掲載できなかった脚注、参照文献等をここで扱わせていただきます。

注1)

「クリエイターエコノミー」という端緒は、2019年の米VCアンドリーセン・ホロウィッツのリ・ジンによる「パッションエコノミーと仕事の未来」という記事だと言われている。ただ、ただ、クリエイターエコノミーと呼ばれる新しい経済圏やそれを構成するプラットフォーム、テクノロジーが伝統的に「クリエイター」と呼ばれてきたクリエイターやアーティストを同様にエンパワーすると素直に考えるのは早計であるし、「クリエイター」という用語は誤解を生みやすいため、現時点では「パッションエコノミー」と書いたほうが誤解が少ないのではないかと思われる。

注2)

ティム・バーナーズ・リーらが主導するContract for the Webのサポーター企業・組織はGoogle、Amazon、Microsoft、Facebookなどのビックテック企業からEFFのような中間団体まで様々であり、そのリストはこの1年でも倍加している。


注3)

Appleによる「Self Service Repair」についてのアナウンスは以下。


注4)

「修理する権利(right to repair)」については、iFixitがウェブページを用意している。

一方で、「修理する権利」について、ユーザーがメーカー側が修理に対してよりオープンなアーキテクチャを設計することは、ユーザーの安全性やセキュリティリスクにつながるおそれはある。
また、製造物責任法や保険、そして著作権法に関する論点も整理する必要がある。米国では、2015年にDMCA(デジタルミレミアム著作権法)に関して修理のためのロック解除を免責する規則化がなされている。


注5)

アルビン・トフラーによる「プロシューマー(生産的消費者)」とミシェル・ド・セルトーによる「密猟する消費者」という2つの概念が1980年という同じ年に上梓された事実については、2021年11月20日に開催されたイベント「デジタル・エクソダス-----システムからの脱出か、ガバナンスの再構築か」全3回シリーズ 第2回 Creator Economy クリエイター・エコノミー:経済的個人主義がつくる経済圏」において、武邑光裕が指摘。

また、消費者やユーザーの創造性については、エリック・フォン・ヒッペルによるユーザー・イノベーション理論からIDEOのデビッド・ケリーらによるデザイン思考、ドク・サールズによるインテンション・エコノミー論まで様々に指摘できるだろう。


注6)

「集合的創造性(collective creativity)」概念や創造性研究については、松田素二編著『集合的創造性 ーコンヴィヴィアルな人間学のために』(世界思想社、2021)を参照。

創造性研究の契機は第2次世界大戦中の軍事的要請からだというが、その後、創造性は経済発展やイノベーションのための手段や資源とみなされるようになってきたという。
集合的創造性については、肥沃な表現の場としてのインターネットを評価する概念として、ジョナサン・ジットレインが提唱した「生成力(generativity)」との関係性も気になる。


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