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#9_僕が勝手に考えるセールスの極意

売れる営業マンの極意なんてググれば腐る程出てきそうだが、僕がこれまで色んな営業の方と話したり実際に自分でもやったりしていいなと思った考え方について書いてみる。

結論から言うと、「コア提案」と「フリンジ提案」を使い分けできる人のことだと思う。

◆ 「コア提案」VS「フリンジ提案」

コア提案とは営業マンとして自分が課されたKPI(売上目標)をあげるための提案活動。

フリンジ提案とはコアに間接的に利いてくる提案活動、今風に言うとお客様の満足度(NPS=9以上)をOKRに設定する。

古巣リクルート時代の小話

これは古巣リクルートの1年目の時の話、まだ僕が鹿児島で桜島の火山灰を毎日浴びながら営業していた時、先輩から伝授してもらったフレームワークである。

当時はホットペッパーグルメ(以下HPG)という媒体の営業担当で、既存のお客様を担当しながら新規のお客様と取引を拡大するため、毎日飛び込み営業*に励んでいた。

*飛び込み営業:アポなしで「こんにちはー!リクルートの渡邉です!・・・xyz」とお店のオーナーとコンタクトをとってアポを取ったり、いきなり商談したりする営業手法。

ある時、渡邉少年は思った。

「HPGの機能は"集客"だから新しいお客さんをお店に連れてくることはできるが、そのお客さんをお店の"リピート客"にするのはやはりお店の力ではないだろうか」

一般的に飲食店のマーケットは3年で7-8割入れ替わる、と言われるほど厳しいマーケットだ。どのお店もお客さんを集客を求めている、HPGを頼ってくれる。

しかし営業を始めて数ヶ月が経って、HPGが万能ではないことにも気づいた。契約していたお客様のお店が突然潰れたり、契約更新してもらえなかったりするのだ。

理由を考えた。人に相談した。

その時に先輩から伝授いただいたのが「コア提案とフリンジ提案理論」だった。

この場合のコア提案は、HPGの広告を買っていただく提案だ。
フリンジ提案とはなんだろう、端的に言うとHPGを売らない提案だ。

もう少し深掘りしてみる。

前述の通り、HPGは集客を叶えるソリューションだが、お店のお客様をリピートさせるのは不得意だ。

黒川温泉とかDisney Landみたいに1度きてもらえれば97-98%でまた来てもらえる土台が整っていれば別だが、お店によって状況は様々である。

それではなぜお店のお客様はそのお店をリピートしないのだろうか。

答えは単純で、"お店の狙い"と"お客様の期待"にネガティブなギャップがあるからだろう。

一つ極端な例を出してみる。例えばお店のオーナーと打ち合わせ中、女性の集客をしたいという理由で(当時流行っていた)女子会プランを作って打ち出したいと言われたとする。

しかしそこは客層が男性サラリーマン90%、店内は全面明るい照明で特に分煙などもない、個室なども用意がないオープンな雰囲気で、定番の居酒屋メニューが常連さんに愛されていた。

ここでオーナーの機嫌を伺い、新規のコースやクーポンを作り、合わせて露出を高めるアップセル提案をするのも営業としては一つの選択肢だろう。

仮にそこでアップセル提案が通ったとしても、数ヶ月後そのお店が女性の集客に成功していなければ意味がない。本当に短期的な忖度中長期的なオーナーの信頼は得られないのだ。

では、ここでの正解はなんだろうか。

まずプロとして正直に話すこと。
そして選択肢を適切に提供し、真摯に向き合うのがいいと思う。

オーナーの思いもしっかり聞く。腹を割って話した結果、どうしてもがらっと客層を変えたい場合、料理だけではなく内装や外装もいじる必要がある可能性もある。

それも含めて提案した後、腹を決めてやる、となった場合はしっかり伴走する。

座敷のテーブル席を区切るカーテンやすだれっぽいのを実際にIKEAに一緒に買いに行ったり、お洒落家具屋さんでお皿や観葉植物、間接照明みたいなのを揃えにいく。材料が揃ったら実際のレイアウトを考えたり、工事の手伝いをしたりする。

料理開発も同様だ。一緒に仮説を立てて、テスターを募集し、フィードバックを元にメニュー改善していく。

もはや営業の仕事ではない気もするが(笑)本気さが伝わるのではないかと思う。そして実際にローンチして、新規のお客様の高いリピート率が実現すれば、

「渡邉さん、このプランをもっと拡げたいから次、大きいプランで頼むよ」

と相手から勝手に言われるようになる。更には周辺の付き合いのある、飲食店をどんどん紹介してもらえるようになる。ここまでくれば飛び込み営業とはおさらばだ。

◆ "数字第一主義"という弊害

「一番売ってるやつが正しい」

そんな言葉が今にも聞こえてきそうな会社組織に勤めている方も多くいるだろう。そんな環境で、一緒にIKEAいったり新作コース料理の試食なんてやってたら上司からの怒鳴り声が響いてきそうだ。

PMFが終わり、ユーザーをつければ高いRRを継続できる商材の場合はその可能性もある。

一方で、元mixiの朝倉さんが仰ってるようなPL脳みたいな考え方もある。

PL脳とは、「目先の売上や利益といった、PL上の指標を最大化することを目的視するような短絡的な思考態度のこと」です。(中略)実際、こうしたPL脳は、昔ながらの大企業に多く見られますが、同時に若いスタートアップもハマりがちな思考態度だと思います。

自分が商材拡販の戦略を練る立場だとすると、冷静に俯瞰して中長期的な恩恵を取りに行く決断を取れるのかが大事だと思う。が、こんなこと誰でも心のうちでは分かっていつつも、目の前の株主や上司の顔色を伺ってしまうのも分かる。

そう考えると一貫してユーザー1stを謳うAmazonはまじですごい。

◆ "Good Churn"という言い訳

契約更新をもらえなかった営業に理由を尋ねると、「お客様の満足度が最高に達したから」ということがあるが、個人的にはそれは言い訳だと思う。

必ずしもそうでないとは思うが、彼氏彼女が別れ際に「あなたのことが好きすぎるから別れる」と言ってるのとなんら変わらない。

相手を傷つけないためのエチケットであって、それを鵜呑みにするのは危険。本当にNPSが9以上(推奨者)なのであれば、紹介の1つや2つをとってこそ、だと思う。

まとめ

以上は極端な例だったが、

目先の数字に固執せず、信頼と着実な成功体験の積み上げが中長期的な営業活動を楽にする

ということだ。嘘みたいな話だが、実際に冒頭の先輩はほぼ紹介営業だけで圧倒的な数字を叩き出していた。(今でもその方を死ぬほど尊敬している)

ちなみに肝心の自分自身は当時その片鱗は見えた気がするが、その先輩には遠く及ばなかった。ただ、この話は営業に限ったことではない、人生における人付き合い全般で同じようなことが言える気がしたので今回noteしてみた。

キャリアコーチングの時にもまぁまぁ好評なエピソードだったのでよければ参考まで。

※追記※
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