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絵本探求講座 第4期、第5回講座を終えて

2024年2月4日(日)絵本探求講座 第4期(ミッキー絵本ゼミ)第5回講座の振り返りをします。(北海道・層雲峡にて)


チーム研究発表

今期のテーマは「翻訳・絵本の絵を読み解く」
各チームともそれぞれのテーマにそって、考察を深め、発表した。私は、チーム1はいほ~

チームSun燦3……………「モノクロ絵本について」
チーム1はいほ~………「谷川俊太郎の翻訳にみる詩人としての特徴」
チーム4やまぼうし……「本は新しい窓」翻訳家さくまゆみこ
チーム5デイジー………「翻訳家・福本友美子研究」
チーム6ティアラ………「石井桃子のことばの魅力 」『こすずめのぼうけん』 「語り」を絵本にした翻訳と絵を 探求して・・・
チーム2ラブバランス…「絵本における『線』」

チーム1はいほ~の発表を振り返って

私は、チームでは、FA(Facilitation Assistant)を担当した。FAの役割は、チーム内の対話を円滑に進めるためのファシリテーションを担当しつつ、学びの雰囲気を整えるお手伝いをする。

1.発表のテーマが決まるまで

お話の金鉱を掘り当てようと、チーム名を「はいほ~」にしてスタートした。「はいほ~」と掛け声を共有しながら、ゼミや勉強会を通じて連携を固め、発表に向けて準備を進めた。
ご存命の翻訳家を取り上げようと谷川俊太郎さんを選んだ。1931年生まれ、92歳。レオ・レオニ、ジョン・バーニンガム作品の翻訳が多いことがわかった。絵本界の大御所、ジョン・バーニンガム作品を取り上げることになったのだが…。まず、谷川さんの翻訳の中で、調べたいこと・疑問に思ったことなどを出し合って、リサーチを進めることにした。
★なぜ、英語圏で住んでない、英語を学んでない方がこれだけの大御所の作品を訳しているのか?なぜ、絵本の翻訳を頼まれているのか?→谷川さんの翻訳に関する情報を集めて共有
★作品にフォーカスし過ぎると作家のことになる。訳者は陰の人。訳者を見ていく時、作品からのアプローチはむずかしい。→訳に注目することを心掛ける。
★図録『『谷川俊太郎 絵本★百貨典』に谷川作品すべて掲載されている。翻訳絵本については『マザーグース全5集』(絵:堀内誠一 草思社 1975)だけの掲載。手掛けた翻訳絵本は再刊を含めると、170冊を超えており、国内の創作絵本より多い。翻訳家の佐久間さん、福本さんとは、全然違うスタンスで翻訳されていると感じる。谷川さんの翻訳は『マザーグース』から始まった。
★ジョン・バーニンガムの1984年ほるぷ出版シリーズ(『がちゃがちゃぽろろん』『くんくんこらっ』『こっこっこめええ』『どしんばたん 』『とんでつまずく』 『よろよろぽん』)タイトル見ると、谷川訳らしいのでは?内容が気になる。→原書は東京国際子ども図書館にもなかったので確認出来ず。
★光吉 夏弥訳との比較
・『ガンピーさんのふなあそび』(光吉訳 ほるぷ出版 1976年 原作1970年)
・『ガンピーさんのドライブ』(光吉訳 ほるぷ出版  1976年  原作1970年)
・『ガンピーさんのサイ』(谷川訳 BL出版  2019年  原作2019年)
同じガンピーさんだが、ストーリー展開が違うので、比較が難しい。全く同じ作品を比較するのではない。文体の違いはある。光吉さんは「です・ます調」。谷川訳は「だ・である調」。原作年に51年の差がある。
★『コートニー』(ほるぷ出版   2020年)→原書を取り寄せ、チームで考察する。
★ジョン・バーニンガム作品の翻訳だけでは、谷川訳は語れない。→できるだけ多くの作品を読む。
★『悲しい本』(さく:マイケル・ローゼン 絵:クェンティン・ブレイク あかね書房 2004年)に気持ちがいく。

2.テーマが決まる

「谷川俊太郎の翻訳に見る詩人としての特徴」
できるだけたくさんの翻訳作品をチームで読み、谷川さんの翻訳に関する情報を集めて共有した。インタビューや雑誌などから、谷川さんご自身の言葉をピックアップした。翻訳作品では、谷川さん独自の表現、リズムと韻律、オノマトペ、話し言葉などに注目して書き出した。詩の技法が使われていることにも注目した。

3.発表に向けて

具体的な役割が決まる。
FAサポートのあいりーんは、絵本の知識も豊富でいつも的確なアドバイスをしてくれ、全体をサポート。チームにとって心強い存在だった。パワポを担当。発表担当者とも打ち合わせて、簡潔にわかりやすくまとめてくれた。そんちゃんは、毎回のZOOMのお部屋を準備してくれた。そんちゃんの違った視点のお陰で、発表内容が深まった。まなちゃんは、谷川さんの92年の年表を丁寧にまとめてくれた。作業を進める際、とても役に立った。めぐさんは、バーニンガム作品を探求し、丁寧にまとめてくれた。しほちゃんの視点は新鮮だった。あいりーんと一緒に東京国際子ども図書館へ行って、原書と比較してくれた。ニキニキさんは、「谷川俊太郎の翻訳に見る詩人としての特徴」について、収集した関連資料の中から谷川さんの生の声をまとめてくれた。私は、谷川さんらしい訳を作品ごとにピックアップした。
それぞれが事情のある中、ミーティングは、毎回遅くまで続いた。リハーサルを予定していた日、大きな見直しがあったが、次の日、再度チームで話し合い、率直な意見が出て、修正した。チームの結束が、より固まったように思う。この日を含めてミーティングできるのが、残り2日。20分に納まるよう、リハーサルを重ねた。

「谷川俊太郎の翻訳に見る詩人としての特徴」
人気翻訳家への軌跡(年表)
谷川俊太郎の絵本翻訳にみる特徴
『スイミー』
『いぬ』
『悲しい本』
谷川俊太郎さんにインタビュー
『あいうえおのき』

4.層雲峡にて

まなちゃん、しほちゃん、私の3人がリアル参加だった。ZOOMで何度もあっているので、もうずっと前からの友だちのような気がしてならなかった。前日の夜、あいりーん、そんちゃん、めぐさん、ニキニキさんはZOOMからの参加で、最終リハーサルをした。
本番は、リハーサル通り発表ができた。「いぬ」の絵本をまなちゃんが、会場に向かって見せてくれた。ニキニキさん扮する谷川俊太郎さんは受けた。谷川さんの顔写真を大きく引き伸ばしプラカードみたいにして小道具を作り、顔の前にかざしてインタビューに答えてくれた。ニキニキさんも役者で、谷川さんに成り切っていた。
発表後、オノマトペの質問が出た時、あいりーんがフォローしてくれた。最後までFAをサポートしてもらった。チームが一丸となり、共通の目標に向かって努力したことを実感し、チームの力を感じた。達成感を味わい、貴重な経験を積むことができた。

5.ミッキー先生の講評

  • スイミー』…スピード感あふれる文体の代表(だ調

  • 『いぬ』…いぬとぼくとの関係性を頭に描いて、位置関係で訳している(対話的翻訳

  • 『悲しい本』…自己同一化。「It」を「そいつは」と訳した瞬間、悲しみと自分との関係性が近い関係になる。日本語は主語に関係性を含む。そこの関係性を読み取らないと適訳にならない。代名詞に当たる主語の訳し方と語尾の訳し方が、とてもむずかしい。

  • 『あいうえおのき』…インタビューの「自分らしさを表現しようと思ったことはない」について、個性というのは、自分で意識して出るものではない。谷川さんは意識せずに訳しているが、谷川さんのフィルターを通した時、戦争体験やその時の感情がついてくる。それがAIと違う翻訳になる。

  • インタビューでは出てこないが、英語と日本語、文献に当たっていくと本人も語ってないようなその人のフィルターの中のロジックが見えてくる。これが、翻訳分析の面白いところ。それがあぶり出されてきた作品分析だった。

6.第4期ゼミを終えて

今期のテーマの翻訳。原書との比較作業を翻訳アプリの助けを借りながら行い、多くの発見があった。時代背景や訳者の人生、ことばのセンスが、翻訳に反映されていることに気付いた。日本語だけ読んでいたらわからないままだった。また、絵本の絵を読み解く作業を通じて、より丁寧に絵本を見て、作家や画家の子どもの視点を大事にしていることに気づくことができた。
読み聞かせや絵本関連の資格を持っておらず、絵本に関する知識も浅い私にとって、第3期に続く2回目のFAを任せていただけたことに感謝している。ミッキー先生やチームの皆さん、そして運営の皆さんに支えられ、無事にゼミを終えることができた。谷川俊太郎さんの作品については、全てを理解したわけではないため、不完全な部分もあると思うが、チームメンバーと協力して、発表することができた。共に半年間、同じ目標に向かって進んできたことをとても嬉しく思う。この出会いを大切にしたい。
また、研究発表の他に、層雲峡ではお楽しみもあり、ご褒美をいただけた気分だった。
・2月2日(金)の特別講義「りすからひろがるわたしの世界」(講師:自然写真家 すぎやまかのこさん)
・2月3日(土)氷瀑祭り
・2月4日(日)スノーシュー

絵本探求講座 第1~4期を終えて

ゼミを通して、知らなかった絵本と沢山出会えた。課題本で各自が紹介した絵本に対するミッキー先生の講評は、図書館やネットでは得られない興味深い情報も含まれており、面白かった。テーマに沿った探求を通じて、絵本を見る視点やアプローチの幅が広がった。絵本は、子どもにも理解しやすい言葉で、短い文章でありながら、生きる喜びや悲しみを伝えてくれる。また、物語の中で気持ちが行き交い、優しい気持ちに包まれる。自然の営みや生き物に関する知識も絵本から学べ、心が豊かになる。絵本の魅力について多くのことを学ぶことができた。
また、研究発表を通じて、チームビルディングに関する学びも大きかった。
現在、児童養護施設(幼児から高校3年生までの子供たち)に絵本を贈るお手伝いをしている。ゼミで取り上げられた絵本がとても参考になった。この選書を通じて、質の高い絵本が子供たちの心に深い影響を与え、彼らが成長し、笑顔で暮らせるよう願っている。海外の子ども達にも同じ気持ちで行動に移していきたい。

ミッキー先生、チーム1の皆さん、運営の皆さんありがとうございました。










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