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介護のリスクマネジメント(介護事故対応と損害賠償請求訴訟)の本質

リスクマネジメントにもいくつかあるが、介護事故からの損害賠償のことについて書いてみる。

明らかに職員側や事業者側に過失があることが明白な事故と、そうではない事故がある。

例えば
入浴時の火傷や溺水は100%職員の過失と言っていい。
しかし、誤嚥や転倒は職員の過失とは言いきれない。

訴訟になる場合のほとんどは、事故そのものと言うよりは、事故後の救急対応や説明時の対応によるところが多いので、十分に注意が必要なのだが、今回はここの話は省くことにする。

訴訟になる/ならない、は別としても、治療費や慰謝料的なお金は必要になってくる。
また、訴訟になった場合は、お金の大小を争うことになる。

損害賠償請求=お金 だからだ。
※そうではなく、お金を名目に実は名誉を争うこともある。

訴訟になった場合のほとんどは、過失の有無や割合を争うことになる。

ここで大事なことは、余程のことがない限り、職員の過失が0ということはまずない、ということ。
一般的には0じゃないの?と思えるようなことでも、介護の場合はそうではない。
なんらかの事情で介護を必要としているわけなので、その介護中に起きた事故なので、全く責任がないという判断にはならない。
なので、100:0を争うのではなく、90:10 80:20、といった交通事故の過失割合のような争いになってくる。

細かい話は省くが、介護事故訴訟にとって大事なことは、自らの正統性の証明だ。
監視カメラがあるわけでもなく、目撃者がいるわけでもない状況の中で、どう正統性を証明するのか。
これは介護記録に他ならない。
複数の職員が関わっているわけだから、その過去の関わり方や対応、過去の利用者の行動などの記録から、今回の事故の過失を計って行くしかない。

だから、介護記録の重要性が唱われているのだが、なかなか浸透していないのも現実だ。(これも置いておく)

訴訟になる/ならない、は別として、事故を起こしてしまった以上、賠償責任は伴ってくる。
治療費や交通費、慰謝料・お見舞い金などなど。
しかし、これらの費用はほぼ保険で賄える。※保険に入っていればの話だが。

さて、賠償責任に伴う費用が発生するような事故が起きたとしよう。

ここで保険会社との戦いが始まる。
大袈裟な話ではない。
おいそれと保険がおりるわけではない。
裁判になって、請求額500万円。争って200万円で結審になれば、問題なく満額が保険で賄える。もちろんそれが不満で更に争うこともできるが。

訴訟にはならない。しかし入院治療、通院で後遺症が残るような事故。
それなりに大きなお金が必要になってくる。
職員や事業所にどれだけの過失があるのか。
事業所側からすると、100%利用者が悪いだろと思うような事故もある。
クレーマーと言うほどの家族ではない。しかし、当然のように権利意識はある。
謝罪も十分に行え、利用者の責任も認めてくれている。
職員側の至らなかった点も、なんとか絞り出して説明でき、理解もしてくれた。
訴訟になるような揉め事にもなっていない。
さあここからがお金の問題だ。

保険を使おうとすると、当然ではあるが、状況説明書やら事故報告書などの提出を求められる。
これがまた面倒臭い。しかしやるしかない。


ここで間違えてはいけないことは、事業者側、職員側に過失がないことをアピールしてしまうことだ。
アピールするつもりはなくとも、文章がそうなってしまう。

するとどうなるのか。

「この事故って事業者側に過失ないですよね?」

そう判断されると、保険金が出ないのである。

簡単に言えば…

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