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雑記と私#57:ぽっちゃり少年と警備員さん

小学校、特に低学年の頃の私はクラスで
一番身体が大きかった。縦にも横にも。

4月生まれの私は当たり前だが他の子よりも
成長するのが早い。このぐらいの時期の子供は
生まれが数ヶ月違うだけで成長の度合いも
差が出るものだ。それはまず身長の差として
露骨なくらい発現する。

で、体重はというと、これは小学校に
入ってから一時期に急激に増えた。
これには明確な理由がある。

コーラの飲みすぎである。


幼少の頃からコーラが好きだったかというと
実はそうでもない。
なのに何故そんな事になったのか。

その理由は”コレ”だ。

コカコーラの(ラッセル)ヨーヨー。
1980年代のヨーヨーブームの火付け役となった。

ペットボトルなどまだ存在しない’70年代後半。
当時のコカコーラはビンが主流だった。

コカコーラのビンにはひとつ「仕掛け」が
施されていた。
それが”王冠”である。
王冠のウラに薄い軟質のキャップのようなものが
ついていて、これを剥がすとイラストや
”当たり(○○円キャッシュバック)”などが
出てくるのだ。

こちらはコレクターも多いであろう
”スターウォーズ”の描かれた王冠。

そしてこの王冠のウラのくじを使った
キャンペーンで配布されたのがコカコーラや
ファンタ、スプライトのロゴがあしらわれた
ヨーヨーだったのだ。

ビギナー・スーパー・プロフェッショナル
(だったと思う。この辺りうろ覚え)。
3種類のヨーヨーを揃えたくて、毎日のように
駄菓子屋で当たりを狙いコーラをカブ飲みする。
そりゃ太るわけだ。


こうして手に入れたヨーヨーだが、これが
なかなか上手く扱えない。
まだ幼い子供にはヨーヨーと一緒にもらった
指南書もちんぷんかんぷんだ。

しかしそこに、神様のような人が現れた。

警備員さんである。

私が通っていた小学校は生徒数増加(私の世代は
”第2次ベビーブーム世代”)や老朽化に伴う
増改築のため工事車両の出入りがあり、児童の
安全確保や交通整理のために警備員さんが
常駐していた。

いつも交差点の角でパイプ椅子に座り、
登下校時の生徒をにこやかに見守ったり
トラック等を誘導したりする、無精ヒゲの
お世辞にもカッコいいとは言えないお兄さん。

そのお兄さん、学校の外周に設置された
消火器ボックスにいつもコカコーラのロゴが
入ったヨーヨーを忍ばせていたのだ。
それを空いた時間で遊んでいた。
これがまぁ、やたらめったら上手い。

家が学校のすぐ傍だった私は、仲のいい近所の
友達と一緒にヒマさえあればその警備員さんを
囲んでいた。
ヨーヨーの技を見せてもらったり、教えて
もらったりするためだ。

両手でダブルループまでこなす器用なお兄さんは
”その時だけは”めちゃくちゃカッコよかった。

どうすれば上手くヨーヨーを操れるのか。
お兄さんはヒモの結び方から手首の返し方、
3種類あるヨーヨーの違いまでとても親切に
教えてくれた。
ちょっとした憧れのヒーローだった。

お兄さんの指導の甲斐もあり、ぽっちゃり君は
連続ループやブランコがこなせるくらいには
ヨーヨーが上達した。

今にして思えばきっと”迷惑”だったろう。
何せ相手は”仕事中”だったのだから。
それでも仕事はきちんとこなしながら、
近所のガキんちょの相手も嫌な顔ひとつ
見せずに対応してくれたお兄さん。
きっと子供が好きな人だったんだろうなぁ。


工事期間が終わり、お兄さんのお仕事も
終了することに。

お兄さんは去り際に
「よかったらお手紙くれる?」
と住所を書いたメモを渡してくれた。

よろこんでお礼の手紙を書いてポストに
投函したのだが、お返事はもらえなかった
気がする。
あの手紙、ちゃんと届いたのだろうか。
届いてたのに返事くれなかったのなら
ヒドいぞ、お兄さん(笑)。


ちなみに、ぽっちゃり君は成長と共に
身長が伸びるほうが早かったため、
少しずつ横幅が目立たなくなった
(痩せたとは言ってない)。

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