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雑記と私#51:第六感

私の家系は元を辿れば大阪市の南にあるお寺だ。
いつからそこにあるのか詳細はわからないが、
古くからずっとそこにあるのであればあるいは
織田信長と争った”石山本願寺”とも何かしら
関連があるのかもしれない。

1度だけ幼少の頃に叔父に連れられて訪れたのは
覚えているのだが、何分小さい時のことなので
かなり記憶はおぼろげだ。

そんな仏門に連なる家系に生まれた者として、
時期的に霊障的な出来事でもお話出来るかというと
これがまったくもってそんな事態に遭遇した事が
ない。霊感ゼロである。

しかし、霊感とは違う第六感的な出来事なら
体験したことはある。それは自分でも何が
起きたのかわからない、不思議な感覚だった。


まず前置きとして私の母の話をしよう。

母は子供の頃、予感や予知めいた事を突然
言い出す事があったらしい。
テレビの前で力道山の試合を見ていた幼い母は
「この人、殺される」と突如呟いたのだそうだ。
伯父たちはその時はみな首を傾げたそうだが、
その数日後、力道山は刺傷沙汰に遭い、やがて
その傷がもとで亡くなった。

似たような事が度々あったという事を母方の
親戚が集まった時に伯父たちから聞かされた。
当時小学生だった私は母に「今もそうなの?」と
尋ねた。
返ってきた言葉はこうだ。
「アンタを産んでからはなくなった。」


さてはて、私にはそんな兆候はまるでなかった。
そのまま成人し、そんな話もすっかり忘れて
しまったある日のこと。

仕事柄平日が休みだった私は、その日は役所に
用があり朝から手続きに追われていた。
丁度世間は今と同じ夏休みの時期だ。

用件を済ませ役所から自転車で帰る途中、
交差点を横断していた私は右手で信号待ちを
している軽トラックが妙に気になった。
先頭に居るわけでもない、何の変哲もないただの
軽トラック。何故こんなにも気になるのか。
不思議に思いながらも自転車を走らせていると、
学生らしき青年の自転車とすれ違った。

すれ違いざま、私は突然「危ない!」と大声で
叫んでいた。

え?何?
何が危ない?
何で急に叫んだ?

私は自分がした事がまったくわからなかった。
青年はイヤホンで音楽を聴いていたせいか、
あるいは自分が言われたとは思わなかったのか、
私の声には気づかずに走っていった。

私は自身の行動を理解出来ないまま次の
交差点まで進み、そこで信号待ちをしていた。

すると後方から「ガシャーン!」という衝突音が
聞こえてきた。
振り返ると先程の軽トラックと青年の自転車が
ぶつかり、青年と自転車が倒れていた。
しばらくして青年が立ち上がり、心配そうに
声を掛けていた軽トラックのドライバーに頭を
下げていた。おそらく青年側の不注意なのだろう。
特にケガもなかったようで、そのまま自転車を
起こし走り去っていった。

事の成り行きをただ呆然と眺めながら、私は
伯父たちから聞かされた母の話を思い出した。

何故か気を引かれた軽トラック。
唐突に口をついて出た「危ない」という声。
母の予知めいた言葉とはこういう事だったの
だろうか。


後にも先にもたった一度の不思議な体験。

信じるか信じないかはあなた次第・・・。




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