見出し画像

③クモの巣退治の巻

料理長のケンタとは小学校からの幼馴染みだ。

彼は根っからの料理人でいつも料理のことばかり考えている。子供の頃からお母さんの料理を手伝うのが好きなお利口さんだったらしい。キン肉マン消しゴムのガチャガチャにお小遣いを全部つぎ込んで叱られていた僕とは大違いだ。


今日の日替わりランチは、

「牛ほほ肉のラグー リガトーニ添え」

牛ほほ肉はフライパンで強めに焼き色を付けたあと赤ワインとトマトでじっくり煮込んでいく。パスタは太めのショートパスタ、今回はリガトーニと組み合わせてみる。仕上げには削りたてのパルミジャーノと粗く刻んだイタリアンパセリだ。


ランチタイムが落ち着いたころ僕はケンタに話しかけた。

「さっきお客様に『軒先にクモの巣かかってるよ』って言われたんだ」

「それは気づかなかった」

「謝罪してすぐに掃除したんだけど・・・」


クモの糸は細いため見つけづらい時もあるが定期的な清掃が必要だ。

暑い時期はクモの巣のできるスピードが速く、朝掃除したのに夕方にはまた出来てることもある。

クモが巣を張るってことはエサになる虫がいるってことだから衛生的にもよくない。最近お客さんも店舗の衛生管理にはとても神経質になっていらっしゃる。

「よし、今度みんなで大掃除しよう!」


その日の夜、帰宅した僕は・・・

「今日はお客さんにクモの巣を指摘されたんだ、それでね・・・」

妻のヒロコにその日あったことの話をしながら一緒に晩酌をするのが僕の日課だ。


今日の晩酌はファルネーゼ サンジョベーゼ。ルビーレッドの美しい色味で果実香がしっかりしている。そしてジャムやオリーブの香りを含んだような濃厚な甘みがある。酸味が低めのミディアムボディなので油断すると1本空けてしまいそうな勢いだ。


「オープン前に掃除したはずなんだけどなあ・・・」

「角度によっては見えにくいから見落としたのかもしれないわね。そんな時はこんな風にしたらいいんじゃないかな?・・・ところでそのワイン、調子に乗って全部空けちゃダメよ」

「はい・・・」


✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼


📜クモの巣退治の虎の巻

どこのお店でもオープン前はバタバタします。仕込み、レジの準備、テーブルセット、検品作業・・・ゆっくり掃除している暇はありません。クモの巣も毎日チェックするのはなかなか難しいですよね。

そもそもクモは害虫を食べてくれる生き物で害虫対策の視点から見ると人間にとって大切な生き物です。クモが巣をはるのはエサとなる害虫がいるからです。エサとなる蚊・蛾・ゴキブリ・ハエなどが通りそうで、かつ人間に壊されにくような高い場所に巣をつくる傾向があります。

また気温や湿度が高くなってくる夏の時期はエサとなる虫が増えてくるため、クモはここぞとばかりに活発に巣をはります。クモも必死に生きようとしているんですね。

ただ飲食店のクモの巣は、お客様が見た時にやはり気持ちのいいものではありません。対策としては、

・害虫対策・・・まずはクモのエサとなる害虫が近寄らないようにしましょう。ごみ置き場、キッチン内に食材や生ごみが落ちていませんか?

・照明・・・明るいところに集まった虫を捕食するために照明や外灯に巣をはることがあります。全部消すことはできませんが数を減らしてみてはいかがでしょうか。

・匂い・・・虫はペパーミントやレモン、ヒノキ香りが苦手のようです。虫が寄り付かなければクモも来ないような気が・・・

・虫除けスプレー・・・なんだかんだで最終的にはこれ(笑)。よくホームセンターで売ってる忌避効果があるスプレーをしておくとしばらくは蜘蛛が近づいてこなくなるそうです。


ここ最近コロナの影響で「消毒が・・・」「衛生が・・・」とか言われてるけど、飲食店にとっては今に始まったことじゃなくて、ほとんどのお店がキッチリとやってることだと思います。

でも中には衛生や清掃、いわゆるクリンリネスに全然興味がなさそうなお店が一部あるのも事実。どんなに料理が美味しくても、店が汚いと食欲が半減しちゃうお客様は多い。

「案内された座席の窓にクモの巣がかかっていて、その後の料理が美味しく感じなかった」って言われないようにしないとね。 もちろん料理自体が美味しいのは大前提だけど、心地良い空間で召し上がっていただくことで「美味しさ」は高まっていく。

そもそも僕たちは料理を通してお客様の生命を預かっているのだから、クリンリネスに関することで指摘を受けるってことは恥ずかしい事なんだと思うようにしようよ、ね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?