企業と嘘(2)

企業が嘘をつくのは、個人が嘘をつくのと基本的に同じと思う。個人が嘘をつく理由は何かというと→以下の状況が起こったとする。
①   何かしらの問題が起こる、(例:花瓶を割った。)
②   それを人に言うと、何かしらの波風が立つ可能性がある。(例:怒られる。)
③   しかし、言わなければ、「絶対ばれない」と思われる。
このような時、人は、嘘をつきたくなる。
 
しかし、ここで嘘をつくのは、戦略的に間違っている。なぜかというと、短期的には、とりあえずの難は逃れられるけど、中長期的な悪影響が、じわじわと出てくるから。(逆に言うと、嘘をつく時は、目先の事しか目に入っていない。)
 
中長期的な悪影響は以下のようなものである。
①   ひとつ嘘をつくと、嘘を重ねなければならなくなる。そして嘘はいつか必ずバレる。
②   良心の呵責。(「いつかバレるかも」のビクビクを抱え続けることになる。)
 
なので、何か問題が発生し、これにより不快な状況(例.怒られる)可能性があっても、早めに正直に言ってしまうのが良い。(時が経つほど言いにくくなる。)「正直さ」故に、いったん怒られたとしても、正直さ自体が評価され、信頼につながる。また、その後の対応次第で「雨降って地固まる」みたいになる。実際、顧客クレーム対応では、最初の時点では顧客に激怒られるが、適切な対応をとれば、最終的には顧客の怒りは笑顔に変わり、信頼感がさらに増す。これは私は実際に何度も体験した。なので、中長期的観点からは、「正直さ」が正解だ。
 
この、最も顕著な例が、ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下J&J社)の「タイレノール事件」だ。これは、危機管理の成功例として有名だが、概要は以下の通り。
 
「1982年,シカゴでJ&J社のタイレノールを服用した7人が死亡。タイレノールへの毒物混入が疑われた。J&J社は事件発生直後の「商品に疑いがある」という時点で直ちに全製品の製造・販売の中止を決定した。そしてあらゆるメディアを通じて市場に出ている全商品の回収を呼びかけた。後の調査で毒物は、店頭で何者かによってタイレノールに混入されたことが明らかになった。毒物混入の原因がわからない時点での全品回収、というJ&J社の決断は、事件後はかえって企業イメージを高める結果となった。」
 
「正直さはビジネスにとって不利」と思われがちだ。しかし、「タイレノール事件」は、正直さが、実際には「大きな強み」である証左と思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?