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【ショート】

14
掲載したショート作品をまとめています。
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散歩

散歩

 目覚まし時計の音で目を覚ました。今日は特に疲れていて、出かけるのをやめようかと思っていた。その時、愛犬のムギがぼくの顔を優しく舐めて起こして来た。ムギは尻尾を振りながら『おはよう!』と言わんばかりにぼくを見つめている。ぼくは顔をそむけ、もう少し寝ていたかった。

 しかし、ムギは興奮して、ぼくの顔の上に乗ってきた。仕方なく起き上がると、ムギはすでに朝の散歩に出かける準備万端で、玄関に走っていった

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赤いキツネと緑のタヌキ

赤いキツネと緑のタヌキ

 タヌキとキツネがお互いの変身術を競い合うことになった。
「ぼくの変身術の方が上手だよ」
 キツネが自慢した。
「ふん、実力の差を見せてあげるよ」
 タヌキはそれに対抗して言い返した。
 二匹は次第にヒートアップし、"美味しそうな食べ物"に変身する勝負をすることになった。

 キツネはさっそく、見た目も香りも完璧なきつねうどんに変身した。それを見たタヌキは、煙を巻いてたぬきそばに変身した。

「こ

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かけっこ3

かけっこ3

 
 兎と亀が再びレースをすることになった。今回はただのレースではない。乗り物でゴールを目指すレースという、ちょっと変わったルールで競うことになった。
 兎は、「速さこそ正義!」と信じて疑わないタイプ。彼女はロケット型のスケートボードを選んだ。

 一方の亀は、「確実性が大事!」という哲学を持っていて、一見すると遅そうな、非常に安定した乗り心地の、カタツムリ型自動車を選択した。

「よーい、どん!

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かけっこ2

かけっこ2

 兎と亀がお茶会をすることになった。

 亀は時間厳守の性格。兎はいつものように遅刻しがち。

 でも、この日は違った。兎が先に到着し、亀が遅れている。

 兎はチョッキのポケットから時計を取り出して言った。

「亀さん、どうしたんですか? スーパーヒーローにでもなったんですか?」

 亀は慌てて答えた。

「いや、その、実は途中で忍者タートルズに間違えられて、ニューヨークを救うミッションに巻き込

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かけっこ1

かけっこ1

 兎と亀がかけっこすることになった。
 山のてっぺんまで競争だ よー、いどん!

 スタートの合図とともに兎は猛然と走り出した。
 
 兎はペースを崩さず、ひたすらゴールを目指して走り続ける。
 コースには障害物がいくつか設けられていて、急な坂道や川を越える必要があったが、兎は素早くそれらをクリアした。

 途中で兎が振り返ると、亀の姿は小さな点のようにしか見えなかった。

「ぽつん」

 勝てる

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不思議の国の鼻首

不思議の国の鼻首

 サバンナの中に、とても首の長いキリン、キリオスがいた。彼は高い木の葉を食べるのが大好きだった。そして、とても鼻の長いゾウ、エレフォスもいた。彼は地面の果実を拾うのが得意だった。

 遊んでいるうちに、キリオスとエレフォスは不思議な森に迷い込んだ。
 その森は普通のサバンナとは全く違い、奇妙なことがたくさん起こる場所だった。
「キイオス、ここはどこだろう?」
 エレフォスは不安そうに言った。
「わ

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