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散歩

 目覚まし時計の音で目を覚ました。今日は特に疲れていて、出かけるのをやめようかと思っていた。その時、愛犬のムギがぼくの顔を優しく舐めて起こして来た。ムギは尻尾を振りながら『おはよう!』と言わんばかりにぼくを見つめている。ぼくは顔をそむけ、もう少し寝ていたかった。

 しかし、ムギは興奮して、ぼくの顔の上に乗ってきた。仕方なく起き上がると、ムギはすでに朝の散歩に出かける準備万端で、玄関に走っていった。

「ちょっと待って、リードをつけるよ」

 ぼくも準備を済ませて、家を出ると、ムギは一目散に走り出した。ぼくはリードを握りしめ、ムギに引っ張られる形で必死に追いかける。「ムギ、ちょっと待って!」と言ってもムギの耳には届かない。

 道を曲がるたびにリードがピーンと張り、ぼくはまるで凧のように引きずられた。通り過ぎる人たちは、驚いた顔でぼくたちを見ていたが、ぼくの必死な姿に、笑いをこらえているのがわかった。

 公園に到着すると、ぼくの足はすでに限界で、草原に倒れこんだ。それでもムギは走ることを止めず、時々ぼくの方を見ては『早く来てよ!』と言わんばかりに吠える。その姿に、ぼくは苦笑いするしかなかった。


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