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眠れる獅子、今目覚める。

あー、おれ、何やってるんだ。

永い眠りから覚めた。

のどがカラカラだ。

しばらく使ってなかった。

食べ物や飲み物の行き来はあった。

だけど、ずっとここを通してまともな空気を送り出してなかった。

呼吸するための最低限の微量な空気の通り道のみ、かろうじてあった。

「言葉」は流通していなかった。

ぐっと飲みこんでいた。

ずっとずっと。

その言葉は、

「会いたい」。

言っちゃいけないと思ってた。

俺なんかが言える立場かよ!!!

お前ひでーことしてるじゃねーか。

そんなこと、言えた義理かよ。

思っちゃいけない。

考えるな、そんなこと。

そんな言葉、ひっこめろや。

何考えてんだよ!!

言っていいのか?!

だめだろう、それは。

ヒトとしてどうなのか?!

だめだろ、やっぱり。

NGワードだよ。

封印しないといけない言葉だよ。

思ってもいけないだろ。

彼女にお前なにしたかわかってるのか???

バカじぇねーのか?!

どの面下げて言ってんだ??!!

そんなこと100も承知だよ。

押し込めても押し込めても、この言葉が上がってきやがる。

何度も何度も上がってきやがる。

ああ!!もう抑えきれない。

ためているから焼け付くように、のどがパンパンだ。

何度も何度もこの言葉を飲み込んだ。

言ってはいけない、言ってはいけない。

呪文のように自分に言い聞かせた。

飲み込む飲み込む。

ああ、だめだ!

飲み込みすぎて、食べ物や飲み物まで飲み込みにくくなってきた。

なにかひっかかるかんじだ。

言っちまうか。

思い切って言っちまうか。

この言葉は彼女に届くのか?

愛しの彼女。

今は離れている俺の愛する彼女の元へ届くのか?

届いてくれ、お願いだ。

この言葉を誰か彼女に届けてほしい。

「俺は君に会いたい。一瞬たりとも君のことを忘れたことなどない。いつもいつも君のことを思っている。君のことを心から愛しいっておもう。離れてわかった自分の本当の気持ち。好きだ好きだ、大好きだ!大好きなんだよ。愛しい人。愛おしくてたまらないのさ。こんな俺だけど、よろしくたのむ」。

なんだよ!俺、よろしくって。何言っちゃってんだよ、俺。

よろしくたのむって、なんだよ・・・。

バカじゃねーのか、おれ。

かっこわるすぎだぜ。

でも、

届けたいんだ、この言葉を。

大好きな君に届けたいんだ。

届いてくれ、届く届く届く。

思ってるだけじゃなく、言葉にしてみる。

「好きだ好きだ、大好きだ!」

「愛してる愛してる愛してる・・・」

「君に会いたい」。

届いたか?

届いたのか?

返事をくれ。

バカか俺。

返事をくれだなんて、何考えてるんだ。

いや、返事がほしい。

きかせてくれ、君の気持ち。

Yes.

そう聞こえた気がした。

確かにそう聞こえた。
え?Noじゃなくて、Yes?

いいってこと?

いいの?

俺でいいの?

なんだよ、俺、このかっこ悪いセリフ。

カッコつけろよ。だせーな俺。

俺でいいんだ、俺でいいんだ、俺でいいんだ!
ちっちゃくガッツボーズして、いいかもしれない。

まだちょっと自信ないけど、自信はやる気と愛でカバーだ。

愛なら海より深く、空より広い。

なんなら無限大だ。

こんな俺だけど、よろしく。

愛しい君。


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