読書日記 ガロアの章に間違いを発見!・・・ 『数学の真理をつかんだ25人の天才たち』イアン・スチュアート (翻訳:水谷淳)

最近、決闘で若くして亡くなった天才数学者ガロアの伝記を読んでいる。
ガロアの死因に関してはいろんな説があり、ガロアの自作自演説まであるので驚きだ。

ガロア理論はNHKの「笑わない数学」でも紹介されたので、数学に詳しくない人でも興味を持った人も多いと思う。
ガロア理論がいったい何の役に立っているのかと思う人がいるけれど、現代数学の代数の基礎理論になっているらしい。
「群論」という数学の分野の開祖はガロアより前のラグランジェ辺りからだそうだけど、ガロアにより開花したらしい。

群論は阿弥陀クジやルービック・キューブなどを例に説明されることが多いので、身近なところにガロア理論が潜んでいると考えることができる。
エッシャーの絵も群論を使って描いたらしい。

ガロアはガウスと同時代で(ガウスの方がかなり年上)、ガロアもガウスも日本語だとカタカナ3文字でガから始まるので似ている。
ガウスは早熟の天才エピソードがかなりあるけれど、もしガロアがガウスのように長生きしたらどうなったのか興味ある。
ガロアの遺構が評価されたのはガロアが死んで数十年後だけど、集合論の開祖で有名なデデキントの労力が大きいらしい。
ちなみにデデキントはガウスの晩年の弟子。

ガウスはガロアが論文を書いた時にヨーロッパ数学界の頂点にいた人物で、若きガロアもガウスの大きな影響を受けていた。
ガウスと同じ時期にコーシーという凄い数学者がいたのだけれど、ガロアの論文を無くしたということで、後世のガロア好きの間で評判がとても悪い。
ちなみにコーシーはアーベルの論文も無くしている。

アーベルはガロアよりも先に5次以上の一般方程式の代数的な解の公式がないことを証明している。
アーベルは26歳で病気で亡くなっているのですが、その年にガロアはアーベルの業績を知った。
ガロアはアーベルよりも9歳年下ですが、アーベルが死んだ3年後に亡くなっています。

ガロア  1811年〜1832年
アーベル 1802年〜1829年

アーベルが歴史上、最初に5次以上の一般方程式の代数的な解の公式がないことを証明したのですが、
このことはアーベルよりも前にルフィニという人が予想していた。
ルフィニは5次以上の一般方程式の代数的な解の公式がないことについて大著と論文を書いているそうなのですが、
証明がうまく行っていないことを生前に指摘されて、苦戦したまま1822年に亡くなりました。
ルフィニが亡くなる前にコーシーがルフィニに励ましの手紙を書いているのですが、
コーシーにはアーベルとガロアの論文を無くす未来が待っているので、皮肉な気がします(意図的に無くした?)。

ところで『数学の真理をつかんだ25人の天才たち』イアン・スチュアート (翻訳:水谷淳 ダイヤモンド社)を読んでいたら、コーシーがルフィニに手紙を書いたくだりが出てくるのですが、
作者であるイアン・スチュアートがコーシーとルフィニの亡くなった歳をゴチャゴチャにしている、おかしな記述がありました。



1822年に亡くなったのはルフィニであり、
コーシーはその後も生き続けてアーベルとガロアの論文を無くすわけです。

ルフィニ   1765年〜1822年
アーベル   1802年〜1829年
ガロア    1811年〜1832年
コーシー   1789年〜1857年

コーシーはガロアが亡くなってから約25年後に亡くなった。

アーベルが5次以上の一般方程式の代数的な解の公式がないことの証明を発表したのは1823年で、ルフィニが亡くなった次の年。

参考
ガロアの伝記は翻訳も含めいくつもあり、日本語で読むことができます。
ガロア理論に関する解説書は専門書では数え切れずあります、そして初心者から中級者向けの本もたくさん出ています。

しかしアーベルの伝記はガロアと比べるとあまりに少ない。
初心者には難しい本ですが、
『アーベル(前編)不可能性の証明』 高瀬正仁(現代数学社)

ルフィニに関しては
『新装版 数Ⅲ方式 ガロア理論』 矢ヶ部巌 (現代数学社)
この本も高校数学の理解を前提にしていますが、かなり数学好きじゃないと難しい。

あともう一冊紹介。
ガロアやアーベルやルフィニについての伝記的な話は全く書いていない本なのですが、パズルが現代数学理論と深い関係があるということをわかりやすく書いてある本
『チューリングと超パズル』 田中一之 (東京大学出版会)
数学初心者から上級者まで楽しめる本だと思います。

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