映画の感想 『ザリガニの鳴くところ』

アマプラで『ザリガニの鳴くところ』を視聴。
原作を読んでないので、ほとんど予備知識はない。
ベストセラー小説の推理ものの映画というぐらいしか知識はなかった。
映像は綺麗で登場人物たちも良かった。
子供たちが死体を発見するシーンは「『スタンド・バイ・ミー』か?」・・と思った。
しかし『スタンド・バイ・ミー』は推理ものではないけれど、少年達の回想記で、『ザリガニ』も主人公の回想記なので、共通点ではある。
「水辺の死体」が回想するための引き金というのは、プルーストの砂糖菓子の味で回想するよりはショッキングではある。

物語は警察官が来て死体の身元を確認し、「死体の近くに住んでいる女性(主人公)が殺人犯の可能性が高い」となり、警察官たちはその女性を捕獲する。
人里離れた湿地の森に1人で住んでいるので、知的レベルが低い女性かと思われたけれど、取り調べによって実際はそうではなく生物学の知識がかなりある女性ということがわかる。
その女性が「どのように知識を身に着けた?」は、回想で語られるが、客観的に考えると説得力はない。
死体は町の有力者の息子でスポーツでも良い成績を残しているけれど、亭主関白的なワガママで暴力的な男だったらしい。

主人公の父親も亭主関白的で暴力的な男で、主人公の母や兄達も、父親の暴力的に愛想を尽かして、湿地の家から家出をしてしまったらしい。
しかし主人公は何故か家出をせずに、父親と2人で暮らし続けたらしい。
父親と似たような男と恋仲になるのは運命なのか?

しかし主人公には小さい頃に初恋の男がいて、その男は主人公に読み書きを教えてくれた。
そして主人公に湿地の生物の絵を描く才能があることを発見し、絵を描いて、出版社に持って行くことを勧めた。
これが主人公に成功に繋がる。

初恋の男は、殺された男とは性格は真逆で、しかも最後には主人公と結婚する。

映画はハッピーエンドで終わるのだけど、やはり「殺された男の物語上の役割は何だったのか?」という疑問が残る。

主人公は殺人容疑で裁判にかけられて、途中はずっーと裁判シーンと回想シーンの繰り返し。
最後は無罪を勝ち取るけれど、真犯人は不明のまま。

映画を見ている人からすれば、主人公にはアリバイがあるけれど、一番怪しい人物ということが段々はっきりしてくる。

この映画は暴力的な恋人を殺すことによって、思い出の父をも殺すという象徴的殺人になっている物語だと思う。
そして「優しい初恋の男と結婚する選択肢」を自分の意思で掴むサクセス・ストーリーになっている。

しかし優しい初恋の男は、映画の真ん中ぐらいで大学進学のために主人公に嘘を言って別れている。
当然、主人公には深刻な裏切りと感じた。
初恋の男性が大学卒業後に地元に帰ってくると、主人公は「主人公の父親と同じ暴力的な男」と付き合っている。
初恋の男性は、主人公のことを真剣に思って、主人公に今の恋人と別れるように言う。
しかし、この時点では初恋の男は主人公とよりを戻すつもりはない。

そして主人公と暴力的な男との間で危機的状況が起こり、危機的状況を解消するために、初恋の男は介入すると同時に、再び恋が再燃する。
主人公が危機的状況を解消するために、意図的に暴力的男性を殺したのだとすれば、恐ろしい物語だと言える。

この物語は裁判ものでもあるので、当然弁護士が出てくる。
事件を偶然バーで聴いた年老いた男性が主人公の弁護をかって出る。
この年老いた男性は有能な弁護能力を持っていて、主人公に圧倒的に不利と思われていた状況を打破して、主人公を無罪に持っていく。

しかし主人公が犯人なら、有罪を無罪にしてしまったことになる。
映画では、この年老いた元弁護士は「閉ざされた世界の人々の偏見」に立ち向かう勇気のある正義の人物として描かれている。

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