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私と同じ学部に、同じ高校から進学した人がひとりだけいた。
1浪してからの入学で、高校生の時は面識はなかったが、私の先輩の友人で、住んでいる場所も近く、すぐに親しくなった。
いろいろと話をしていると、何と、実家は先生の家の隣だということが判明した。
このことは、春に会いに行ったときに先生に伝え、もちろん先生も承知していた。
7月。
この友人から、一緒に母校の野球の応援に行かないか、と誘われた。
友人の弟が野球部に所属していて、ベスト4をかけた試合だった。
私は昔から高校野球が好きで、在学中に野球部が勝ち上がって、甲子園まであと一歩だった時にも、球場まで応援に行っ。
この前年、私が高3の時、中学時代の友人が甲子園に出場したときも、現地まで応援に行った。
この時、夏休みだが担任との面談前日で、先生には行ってくると伝えて兵庫に行き、おみやげを渡した記憶がある。
純粋に野球の応援に行きたくて、試合を見に行くことにしたが、地元に戻るとなると、どうしても先生の事を考えてしまう。
また手帳によると、私はかけるか迷った挙げ句、前日に電話したが出なくて、当日の朝、先生から電話があったけど、気づいたのが電車の中で、友人が隣にいたからかけ直せなかったらしい。
最寄り駅に着くと、友人のお母さんが車で球場まで連れていってくれた。
私が先生と親しい、という話になり、隣人としての先生の話を教えてくれた。「マイホームパパ」と言っていた。
結局電話を折り返せないまま、試合が始まった。
先生が来ていないかと、正直試合そっちのけでその姿を探した。
すると、先生を発見した。
先生にはとある癖があり、それで先生だと遠目からでもわかった。
先生は、ひとつ席をずれてくれて、私は隣に座った。
これまでの試合のことや、私の住む場所であった災害の話などをした。
球場のベンチに並んで座る。
今までで一番近い距離で話をした。
この先の先生と過ごした時間を含めても、一番近い距離だった。
先生は、タバコを吸いに行く、と席を離れたため、私も自分の席へ戻った。
本当は、ずっと先生の隣にいたかったけど、友人もいるし、他の生徒や関係者もたくさんいたし、それ以上は近づかなかった。
先生は県外に行く仕事がある、と言っていて、試合の途中で姿が見えなくなった。
自分の席へ戻ると、友人から
「親子みたいやったよ」
と言われた。
それは、仲睦まじく見えた、といういい意味だろうが、恋焦がれる相手と並んで座っていたように見えない、ということ。
私と同い年の娘さんがいる、先生の家庭の事もわかっている人に言われると、何だか悲しかった。
試合は接戦と、不可解な判定の上、母校は負けてしまった。
試合後、友人のお母さんがランチをおごってくれた。
私はすっかり忘れてしまっていたが、手帳によると、友人が席を外した間に、お母さんから「先生とはどんな関係?」と聞かれていたようだ。
それは、ほんの僅かでも、「教師と生徒」、「お父さんと娘みたい」じゃなく見えたのか。
おそらくそんなことはなく、担任でも顧問でもなかった卒業生が、わざわざ会いに行くほど親しくしていることへの野次馬心、ご近所さんの興味本意、というところだろう。
卒業まで、この友人とはずっと仲良くしていたが、この日以外に先生の話をした記憶がない。
あの時だって。
すぐに会う機会があったはずなのに、それについて話した記憶がない。
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